↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/31

20話 幼稚すぎる嫌がらせ

<登場人物>


*浄南病院研修医1年目*

・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.

・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.

・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.

・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.

・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.


*浄南病院研修医2年目*

・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.

・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.

・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.

・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.

・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.


*浄南病院上級医*

・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.

・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.

・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.


*その他*

・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる

・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている

「最近どう?」


私の目の前には山下君がいた.


今日は,前々から話が出てたランチの日.結構いい感じの部屋をよく予約できたね,なんて言ってると,照れていた.


「私はねー,麻酔科っていうところいるんだけどね,手技を覚えるのに必死でさ〜」

「大変そうだな.前のパワハラの人は?」

「ああ…」


外科の時のあれこれがちらつく.


…まあ,細かく説明するのも面倒くさいし,まあいいか.


「先月は本当に嫌がらせされてたから,ストレスで疲れてさ,なかなか時間が取れなくて.ごめんね〜」

「まだあったの?懲りない上司だな」


間違いない.あまりにもしつこいと思う.


「まあでも今後あんまり関わらないはずだしね!」

「…それならいいけどね」


不穏なこと言うじゃん.


…そんなこと言っても,私だって心配.


完全に関わらないってことは無理だし.今後もまだ救急ローテもあるし,当直でも一緒にやることもありうるわけだし.


でも,まだされてないことで心配する必要はないよね.


「それより山下君の仕事は〜?」

「僕の方はね,〜」


その後は,本当に些細な話をしていた.


全く職場に関係ない人に話せて,ちょっとだけスッキリした.




________



それは,私がAラインをある程度取れるようになってきた頃だった.


私は自分の手技を磨くのに必死で,その手術室で誰が入るのかなんて,覚えてなかった.


手術室内のカルテが置いてある机に,後で読むために持ってきた本を一度置いて,麻酔の準備をする.


そのうちに鎮静薬を入れて,酸素マスクを患者さんの顔に当てて,準備を始める.


「纐纈さん,じゃあ挿管して,その後Aライン入れてみようか」

「はい!」


今日一緒に入っている麻酔科の女医さんの見ている中で,いそいそと挿管の準備をする.


「こういう時は,頭をお腹に押し込むと,首が曲がって入れやすいと思う」

「なるほど…」


この患者さんは若い人で,体格も良かった.


挿管はうまくできず,3回目で無事ちゃんと入ったことを確認した.


「挿管はまだまだだね.次はAラインね」

「はい!」


まず,患者さんの手首を指で触る.


…感じる,拍動.


エコーを使うこともできるようになったけど,今回は若い人だし,血管も蛇行してないからいけそう.


20ゲージの針を,45度くらいの角度をつけて一気に差し込む.



____すると,逆血が見られた.


「大分上手になってきたね」

「ありがとうございます!」


うまく取れたAラインの固定をオペ看さんがしている間に,他の薬の準備をする.


「準備も大分覚えたね」

「そう言われると嬉しいです〜」


ほのぼのとした空間だった.



____だからこそ,私は気付かなかった.




…それは,麻酔が落ち着いて,持ってきた本を読もうとした時だった.


「…あれ?」


私,カルテの近くに置いてたよね?


なくなってる…



こんなこと,今まで起こったことなんてなかった.


移動されてることはあれど,わからないところに移動されてたことはない.


…私の気のせい?他の部屋に忘れてきた?



「どうしたの?」

「いや,持ってきたはずの本が無くなってて…」


そうとしか言えなかった.


ちょっと他の部屋にでも探しに行こうかな.



___そしたら,麻酔科の先生から,「あったよ!」の言葉.



見つかった場所に唖然とした.



「これは流石に…」



カルテの上にある棚の,1番奥に,私の本は投げ捨てられていた.


「え…」


私の身長では奥までは見えない.


どうりで,見つからないわけだ.



こんなこと初めてだけど,邪魔でポイって投げたのかな…?


物の扱いに少し不快になったけど,私も置いた場所が悪かったし.



…そういえば,ここの手術室の執刀医と助手は?



____そこには,野木先生が,いた.



…いやいやいや,落ち着け.流石にそれは被害妄想がすぎる.


でも,こんなことやる人なんて,他にいる?今までなかったのに?



徐々に動悸が激しくなる.


____流石に1回だけじゃ,確証なんてない.


そう,落ち着けていた.





________でも,その日はすぐにやってきた.


隠された,次の日だった.


その日も,準備の前に本をカルテの端に置いていた.


この間の反省も兼ねて,邪魔にならないところに置けば,わからなくなることなんてないはずだし!!




____その,はずだった.



「また,私の本が,ない…」



また,置いた場所から消えていた.




___まさかね.


前回,本が消えた部屋とは別の所で,棚はない.


隠せる場所としては…隠すとしたらどこに置く?



…そして,その予感は当たってしまった.



カルテ用パソコンのモニター裏の配線がごちゃごちゃしている場所に,隠されていた.



…こんなところにわざわざ本を置くのは,流石にわざととしか考えられない.


今日も野木先生が入ってる部屋.



…もう,無理.



動悸で,ドクドクと身体中を血が駆け巡っていくのがわかる.



「先生,気分が悪いので出て行っていいですか」

「あ,ああ…」


麻酔科の先生は,私の顔を見て何とも言えなくなったのかな.


手術室を出る時には,もう涙がポロポロと頬を伝って,マスクがぐっしょり濡れていた.


「なん,で……っ,こんなことされないと…」


本を大事に抱きしめながら,手術室の更衣室に向かう.


途中でオペ看さんに「どうしたの?」と聞かれたけど,何も言えずにその場を去った.



それ以降,手術室に近づくだけで動悸がするようになった.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。