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19話 手技に時間はかかるもの

<登場人物>


*浄南病院研修医1年目*

・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.

・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.

・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.

・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.

・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.


*浄南病院研修医2年目*

・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.

・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.

・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.

・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.

・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.


*浄南病院上級医*

・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.

・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.

・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.


*その他*

・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる

・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている

今日から,麻酔科だ_____


朝起きると,LIMEが入ってた.


『ご飯食べに行く日,いつにする?』


山下君からだった.


___そういや,救急,外科と色々ありすぎて,会えてなかったや.


前に行こうって言って,もう1〜2ヶ月経ってるじゃん.


『今週の日曜日どう?』


返事して,急いで病院に向かった.




________


「今日からローテさせていただきます,纐纈桜と言います!よろしくお願いします!」


麻酔科医4人全員の前で一人で挨拶をする.


9時からのオペのために麻酔薬の準備とかで忙しくて,こっちなんて1人しか見てくれない.


「じゃあ,今日は僕の麻酔のところで入ってもらうね」

「はい!」


その先生の後ろをついていきながら,麻酔についての本を片手に,オペ室に向かった.



今日のオペは,整形外科の脊椎の手術だった.


「体位変換を途中でするから,その時に挿管チューブが抜けないようにしたりとか,かなり大変なんだよ」


前に整形外科ローテしてた時は,手術には入ってたけど,麻酔なんて見てもなかった.というか,そこまで気にすることができなかった,が正しいと思うけど.


「じゃあ今日は,挿管をしてみることと,Aラインを入れる練習をしよう」


…Aライン?


「Aラインってなんですか?」

「外科とか回ってた時に,モニターに赤い線で脈みたいなものが出てるのがあったでしょ?あれは実は手首のあたりの動脈に針を刺して,そこで血圧を測ってたんだよ.そのために取るA(動脈)のルートみたいなものだね」


へー,なんかモニター見てたら血圧が毎秒ごとに変化していくなーって思ってたけど,あれってそういう仕組みだったんだ.


「これと挿管は基本的に医師しかできないから,研修医のうちにできるようにしないとだね」


なるほど,点滴のルートは看護師さんもいるし取れなくてもいいけど(本当はできた方がいいけど),この辺は絶対にできないと困るってわけね.


挿管は何度やってもできた心地がしないし,このタイミングで頑張らないとだな.Aラインは初めてだし,本当に手技のために麻酔科回るって言っても過言じゃないかも.



_____そうして,実際に挿管もAラインもやってみた.


「何で口をもう少し開けないの?このままだと歯が欠けるよ」


「もっと奥までブレードを滑りこませないと」


…言われても,できない!!!


口を開けるにも指の力が足りないから難しいし,ブレード入れようとすると歯に当たるじゃん.


「ほら,貸してみ」


先生に代わると,一瞬で挿管チューブが入った.


…むずい,むずすぎる.


「じゃあ次.Aラインは,手でちゃんと拍動している部分に沿わせるようにして針を刺すように.心配ならエコーも使っていいよ」


初めてのAライン.拍動は確かに感じる.


…エコーも使った方がいいかもだけど,正直エコーの使い方もよくわかってない.だからただ手が片方エコーを持ってるせいで使えなくなるだけにしかならないことは目に見えてる.


_____えいっ


…逆血(血管に入ると出てくる逆流した血液)は,こなかった.


「深さがあってないね.エコー持ってきて」


エコーで針先と動脈の説明がされる.


なるほど,説明はわかるけど,深さの感覚,ガチでわからんな.


「今度からエコー使ってみなよ」


そう言いながらエコーを使わずにAラインを無事に取れた先生.


……精進します……



____それから,手術が始まった.


その間の麻酔科医の仕事は,モニターを見ながら薬を調整すること.


とりあえず,悪い言い方をすると暇.手術が終わるまでは基本的に本を読んだりするのがセオリーになっている.


ただし,初週の研修医には,簡単なレクチャーとかをしてくれる.


「纐纈さん,麻酔にはどんな薬があるのか,大きく3つなんだけど,何かわかる?」

「はい,鎮静,筋弛緩,鎮痛ですね」

「ちゃんと覚えてるね」


国試でやったことは流石に覚えてる.


「まずは鎮静.うちではプロポフォールを使ってることが多いかな.吸入薬も色々あるよ.デスフルランとかセボフルランとかもある.」


私の持ち歩いていた麻酔の本を開きながら,これ,と指差しながら説明してくれる.


「次は筋弛緩.特にお腹の手術だと,腹筋とかに力が入ると,手術に影響が出るから,すごく大事.でも,入れすぎないように調整が必要だね」


筋弛緩薬って,覚醒してる時に使うと"金縛り"みたいな状態になるってことだから,怖いって聞いたことがある.


「最後に鎮痛.オピオイド系を使ってる.基本的にはフェンタニルを使うんだけど,レミフェンタニルを持続で入れることが多いよ」


フェンタニルって,めちゃ強い"モルヒネ"みたいな感じの薬だよね,そんなのを使ってるのか…


「麻薬だし,何本余ってるかとかもかなり厳しく言われるから,扱いには注意ね」


色んな薬が出過ぎて,もうわけわかんないよ.


「この辺りの薬を,体重に合わせて調整する,それを,この4週間でできるようにするのが目標だね」


…え,今の話を覚えた上で量の調整!?


覚えるのは得意でも,不安すぎる…


「不安なら,呼んでくればいいから」


そうして先生は私を残してその場を離れた.



え…



私を一人にしないで〜〜〜!!!




____この時までは,麻酔科のローテを追加して履修しようかな,なんて考えてた.

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