15話 先輩達の進路
<登場人物>
*浄南病院研修医1年目*
・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.
・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.
・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.
・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.
・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.
*浄南病院研修医2年目*
・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.
・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.
・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.
・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.
*浄南病院上級医*
・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.
・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.
*その他*
・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる
それは,私が当直をしていた時のことだった.
「纐纈ちゃん.今度佐藤ちゃんと一緒に飲もうって話があったけど,一緒に飲みにいかない?」
一緒に当直していた受付事務の女性,川端さんが,突如そんな提案をしてきた.
川端さんは何度も当直で一緒になってたから,夜の患者さんのいない時間に二人でよく話して,そのうち仲良くなった.
私は言うまでもなく,人と飲みに行くのが大好き.人との関わり自体が大好きだから,そんなの行くしかない.
ちなみに『佐藤ちゃん』は,研修医2年目最後の人,佐藤柚紀先生のこと.
佐藤先生は話したことはあるけど,かなり大人しい印象が強くて,飲み会とか企画はしなさそうなイメージ.
「是非!!」
佐藤先生ともしっかり話したいし,すっごく楽しみ!!!!
________
「はぁ…金曜日こそ飲み会で楽しみなんだけどなぁ…」
今日は火曜日.ということは今日も野木先生と一緒に救急をやる羽目になってる.
…おっと,『羽目』なんて失礼ね.失敬.でも,未だに仕事の件は改善されない.
今度,研修医総括の先生にチクるか.
「救急最終週の当直免除はアツいじゃん」
暇でたまたま救急に来てた大輪田(知らぬ間に『君』は取れた)の言うことは本当にそうで,
遂に!!!今週が!!!過酷だった4週間の!!!最終週!!!
ここまでどれだけ心が削られていったことか.研修医って立場上,私が悪く無いことまで怒られたり,私の原因ではないことに関するインシデントレポート(医療ミスをしてしまった時に報告するもの)を書かされたりと,ほんっっっっとうに辛かった.
まだ8週間待ってるのなんて想像したく無いわ.
更に当直も今週は免除!!!!こんなに幸せなことない!!!
それに!!最終日の金曜日は川端さんと佐藤先生の飲み会も待ってる!
「次が外科なんだよねー,私」
「おお…頑張れ」
外科は休みが取りにくいとはよく聞く.ただでさえ手術に入るの苦手なのに,毎日入るのってのも無理じゃないか…?
ああ,山下君とのランチの話,いつになるだろうか…
「うーむ,ガンバw」
「茶化すんじゃないよ,大輪田」
大輪田の語尾には『笑』じゃなくて『w』がついてそうな感じのインキャっぽい笑いをぶつけてくる.まあ面白いからいいけどウザい.
「浄南2救急隊です〜」
救急車入り口から,救急隊の人の声が聞こえる.
「まーた連絡なしに救急車が来るんだから…」
「俺は1抜けーっと」
ちっ,逃げたな.
「また,助けてよ!!」
「まあ,気が向いたらな」
何だかんだ助けてくれる大輪田よ,私は気に入ってるよ.
________
そして…
待ちに待った日!!!飲み会!!!
10分前に着いたけど,誰もいない.
これ,医師あるあるなんだけど,ほとんどの人が遅刻する.早く着く人は珍しい.
多分忙しくて間に合わないことが多いから,約束の時間ってものを軽く見てるんだと思う.
スマホを見ると,LIMEのメッセージが一気に10通くらい来てた.
『ごめん!電車乗り遅れた!』
『すまん,5分遅刻する』
…まあ,こんなもんだよね.
『先に入ってますね!』
それだけ返信して,予約してくれた佐藤先生の名前で店の中に入った.
…そして20分後,やっと全員が揃った.
「纐纈ちゃんごめんね〜,道に迷っちゃった」
川端さんはバッチリメイクして,いつもの雰囲気とかなり違う.
「ごめんね纐纈さんと川端さん!」
佐藤先生が息を整えながら入ってくる.
病院だとメガネなのに,今はコンタクトになってる.雰囲気が違う…
…あれ,私って,病院にいる時と違うところなんて服くらいだけど,こんなにも化粧も変えるの!?
「お二人ともお疲れ様です!」
…そこから,仕事の話,プライベートな話とかもたくさん話した.
私,今まで知らなかったけど,佐藤先生ってとんでもなくお喋りで,酒大好き人間すぎる.
「え〜,桜ちゃん,これも飲めないの〜〜?足りないんじゃないの〜〜??」
…酔っ払うの早そうなのに,人にガンガン酒を勧めるし,その上ですごい勢いで飲むじゃん.
いつの間にか私のこと『桜ちゃん』呼びしてるし,その流れで私も『ゆき先生』呼びになった.
川端さんは事務職もかなり大変みたいで,深夜か休日のシフトしか入らないから,体力的にも厳しいなって話とか.
ゆき先生も仕事の不満とか,旦那さんの話とか.
…まず,結婚してたことすら初耳だったけど.
「そういえば先生って,どの科にするんですか?」
ふと,気になったから聞いてみた.
安曇先生は呼吸器内科で外に行っちゃうし,他は…詳しくないけど.でも,角田先生は直美___つまりは,ちゃんとした診療科を選ばずに直接美容外科に進む__とは,風の噂で聞いている.
「うちは腎臓内科!安曇君は呼吸器内科で出るし,角田君は美容でしょ?で,菜子ちゃんは形成外科って言ってたかな?あとは,山田君は外科だって」
ほえ〜…,流石,同期の進路は流石に知ってるか…
長瀬先生,角田先生はうちの病院には残らないのは,診療科的に間違いないし,あとは山田先生とゆき先生だけど…
「ちなみに残るんですか?専攻医として」
私の言葉に,ゆき先生は少し申し訳なさそうな顔をした.
「うちは残らないよ.尾沢病院って所で研修するの.山田君は関東の実家の方に行くみたいだし,うちらの代は誰も残らないね」
____そ,
そんな〜〜〜!?!?
来年,もう2年目の先生達は誰もいないの!?
「纐纈ちゃん,実は私も昼勤務の職に転職しようかなって.正直,年齢的にも辛くなってきてさ,12月くらいから転職活動するつもり.まだ確定じゃないけどね」
川端さんも!?!?
嘘…
来年,誰もいなくなっちゃう!?!?




