047 アマガエルとなんとやら……
リーナ一人称視点の話です。
時系列は035付近となります。
「討伐依頼、討伐依頼っと……」
朝練を終えたうちは、冒険者ギルドの掲示板を端から順番に確認していた。
新しいバンカーを手に入れてから、今日が最初の依頼になる。
どうせなら、モスキート討伐がいい。
「ないやん!」
「何がですか?」
「討伐依頼や! 昨日は何枚か貼ってあったやろ?」
クリフも掲示板へ目を向けたが、残っているのは採取や雑用の依頼ばかりだった。
「朝練をしている間に、ほかの冒険者が受けたんでしょうね」
「出遅れた……」
「残念」
「2人とも他人事みたいに言わんといて!」
「リーナたち、まだ依頼が決まっていないなら、ひとつお願いしてもいいかしら?」
振り返ると、受付カウンターの中からクラリスさんが手招きしていた。
「うちらに?」
「ええ。カールさんから捜索依頼が出ているの」
クラリスさんは、手元にあった依頼書を差し出した。
◆依頼名 ケロ太捜索依頼
◆難易度 1
◆達成報酬 50ラグバ
◆エリア ムルージュ村近郊
◆依頼主コメント
オラの相棒を見つけてくれだべ!
◆依頼詳細
赤いふんどしを身につけたアマガエル、ケロ太を捜索せよ。
「カールさんの相棒?」
「ケロ太というアマガエルみたいですね」
「赤ふんどし」
「詳しい話は、畑にいるカールさんから聞いてちょうだい」
「急いだ方がよさそうやな」
「ええ。昨日から戻っていないそうよ」
「わかった。この依頼、うちらが受けるで」
「バンカーのお披露目はまた今度ですね」
「ああ。今はカールさんを助けるのが先や!」
「決まり」
こうしてうちらは、カールさんの畑へ向かうことになった。
カールさんの畑は、前に来た時とは見違えるほど綺麗になっていた。
ジャッフルに食い荒らされたガジャイモは片付けられて、地面を埋め尽くしていた穴もほとんど塞がっている。
畑の真ん中では、麦わら帽子を被ったカールさんが鍬を手にしたまま、力なく立ち尽くしていた。
「カールさーん!」
うちが声を掛けると、カールさんはゆっくりとこちらを振り返った。
「おおっ! 依頼を受けてくれただべか!」
「うん。ケロ太がいなくなったんやろ?」
「そうだべ。朝になったら、どこにもいなかっただ。ケロ太ぁぁぁ……オラを置いてどこ行っただべぇぇぇ……」
カールさんは鍬を取り落として、その場へ膝をついて泣き始めた。
前に見た時はジャッフルをミンチにすると叫んでいたし、感情の振れ幅が激しすぎる。
「ケロ太って、どんなカエルなん?」
「体長は1メートルくらいあるだ。オラの言うこともわかる頭のいい奴で、畑仕事も手伝ってくれるだよ。ガジャイモが大好物だべ」
「ケロ太は、いつもどこで過ごしているんですか?」
クリフが尋ねると、カールさんは鼻をすすりながら畑の端を指差した。
「昼間は畑を歩き回ってるだ。夜は、あそこの小屋で寝てるべ」
「いなくなる前に、変わった様子はありませんでしたか?」
「昨日の夕方までは、いつもどおり畑にいただよ」
「いつもどおり」
ブラが頷く。
「そしたら、まずは畑を捜してみよか。何か残っとるかもしれへんし」
「頼むだ! オラの大切な相棒を見つけてくれだべ!」
うちらは手分けして畑を調べ始めた。
小屋の中には、ケロ太が使っているらしい藁の寝床がある。
だけど、争ったような跡はなかった。
畑の中にも、誰かが入り込んだような足跡は見当たらない。
「こっち」
しばらくして、ブラが畑の隅からうちらを呼んだ。
駆け寄ってみると、そこには人の入れそうな大きな穴が空いていた。
周りには三本指の足跡と齧りかけのガジャイモが残されている。
「これ、どう見てもケロ太が入った跡やんな?」
「おそらく。足跡も穴へ向かっています」
クリフは穴の前へしゃがんで、中を覗き込んだ。
「かなり奥まで続いていますね。ジャッフルが掘った巣穴かもしれません」
「それなら、ここを進めばケロ太がおるってことやな!」
「待ってください。中がどうなっているのかもわからないんですよ。ちゃんと確認してから――」
「善は急げや!」
うちは穴へ足を掛けて、そのまま中へ滑り降りた。
「ちょっ、リーナ!?」
「行った」
クリフの慌てた声とブラの冷静な声が、頭の上から聞こえてくる。
「2人とも早くおいでー!」
「だから、先に準備をですね……もうっ!」
少し遅れて、2人も穴の中へ降りてきた。
穴の奥は、思っていたよりも広かった。
壁や天井にはジャッフルが掘った爪痕が無数に残っていて、通路はいくつにも枝分かれしている。
クリフが持ってきた魔導ランプの光だけでは、少し先までしか見えない。
「へぇー。畑の下、こんなことになっとったんやな」
「感心している場合じゃありません。下手に進んだら迷いますよ」
「大丈夫、大丈夫。道は覚えとるから」
「さっきの分かれ道、右と左のどちらから来ました?」
「……右?」
「左です」
「うちも左やと思っとったよ?」
「今、右って言いましたよね!?」
ブラは何も言わず、壁へ短い線を刻んだ。
「目印」
「さすがブラ! これなら迷わへんな!」
「リーナが覚えていれば必要なかったんですけどね」
「細かい男はモテへんで」
「今は関係ないでしょう!」
そんなやり取りをしながら奥へ進んでいると、頭の上から何かが落ちてきた。
ぺちょっ。
「んっ?」
柔らかくて冷たい何かが、うちの髪の上でもぞもぞ動いている。
「な、なぁ……うちの頭に何か乗ってへん?」
クリフが魔導ランプを近づけて、うちの頭を覗き込む。
「ああ、ミミズですね」
「ミミズ!? 取って! 早く取ってぇぇぇっ!」
「動かないでください。暴れると鎧の内側へ入り込むかもしれません」
「そんな冷静に怖いこと言わんといて! ほんならクリフが取ってや!」
「それは無理です。僕は虫を観察するのが好きなのであって、触るのは別問題です!」
「なんのための虫オタクやねん!」
「役立たず」
「役立たずではありません! ミミズは土の中に空気や水の通り道を作って、土壌を豊かにしてくれる益虫で――」
「うちの頭に乗せたまま説明始めんなぁぁぁっ!」
うちの叫び声が洞窟中へ響き渡ると、天井からパラパラと土が落ちてきた。
続けて、ぺちょっ、ぺちょっ、と嫌な音がする。
「……リーナ。上」
恐る恐る見上げると、天井の隙間から何匹ものミミズが顔を出していた。
ポトポトポトポトッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
「うわぁぁぁっ! 僕の肩にも!」
「冷たい」
ミミズが頭や肩へ次々と落ちてくる。
うちらは狭い通路でぶつかり合いながら、全速力で逃げ出した。
どれだけ走ったのかわからない。
気づけばミミズは落ちてこなくなっていたが、壁に付けた目印も見当たらなくなっていた。
「ほら、迷ったじゃないですか!」
「まだ迷ったと決まったわけちゃうやろ」
「遭難」
「ブラまで縁起でもないこと言わんといて!」
息を整えていると、暗闇の奥から乾いた音が聞こえてきた。
カサカサ……。
魔導ランプを向けた先を、無数の脚を生やしたゲジゲジがものすごい速さで横切る。
「うわっ! なんであんなに脚が必要やねん!」
「体節ごとに一対ずつ生えているんです。長い脚で素早く獲物へ追いついて、害虫を捕食してくれる益虫で――」
「益虫でも気持ち悪いもんは気持ち悪いわ!」
「たくさんいる」
ブラが通路の奥を指差した。
床にも壁にも天井にも、ゲジゲジの群れがびっしりと張りついている。
「クリフ。お友達」
「違います! 観察は遠くからするものです!」
「さっきまで、あんなに嬉しそうに説明しとったやん!」
その時、ゲジゲジの群れが一斉にこちらを向いた。
カサカサカサカサカサカサッ!
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
真っ先に逃げ出したのは、ついさっきまで熱弁を振るっていたクリフだった。
「クリフ! うちを置いていくなぁ!」
「無理です! あれは無理ですぅぅぅっ!」
「一番うるさい」
ブラまで全速力で走っている。
ゲジゲジの足音を背中に聞きながら通路を曲がった瞬間、目の前の地面が盛り上がった。
土を弾き飛ばし、茶色いジャッフルが飛び出してくる。
「もう、次から次へとぉぉぉっ!」
うちは腰に下げた拳サック型バンカーを両手へ装着した。
名前は『ストマジ』。
剥き出しの機関部と頑丈な骨格を持っていて、指先側は獣の爪のように尖っている。
「どいてぇぇぇっ!」
慌ててアクセルを握り込む。
ストマジの出力が上がり始める。
けれど、うちは待ちきれずに拳を突き出してしまった。
ボスンッ!
爪はジャッフルへ当たったものの、慌てて突き出したせいか、ほとんど威力が乗っていない。
「あれっ?」
目の前のジャッフルは、何事もなかったように首を傾げている。
「何しとるんですか!」
「ちょっと早かっただけや!」
「出力が上がり切る前に殴ったら、威力が出ないでしょう!」
別の穴から、さらに二匹のジャッフルが飛び出した。
クリフが背中から『テーゼット』を引き抜く。
細長い機関部が槍身に沿って伸びた、風属性の長槍型バンカーだ。
「今度は僕が!」
クリフが槍を構え、勢いよく振り向く。
ガキンッ!
穂先が洞窟の壁へ突き刺さった。
「あれっ!?」
「何しとんねん!」
「狭すぎるんですよ、ここ!」
ジャッフルが身動きの取れないクリフへ飛びかかる。
その横からブラが進み出た。
手にしているのは、月属性のメイス型バンカー『ズーマー』。
太い骨格に囲まれた籠状の打撃部を両手で静かに振り上げる。
「邪魔」
ゴンッ!!
一撃で殴り飛ばされたジャッフルは、後ろにいたもう一匹を巻き込んで転がっていった。
「ブラだけ普通に使えとる……」
「落ち着けば簡単」
「遠回しにうちが落ち着きないって言うとる?」
「そのとおりです!」
「クリフは壁から槍抜いてから言いや!」
背後から、またカサカサという音が近づいてくる。
ゲジゲジの群れは、まだ追いかけてきていた。
「もう嫌やぁぁぁっ!」
うちは立ち上がると、今度はストマジの高まる出力に合わせて、目の前の壁へ拳を叩き込んだ。
ドゴォォン!!
壁が崩れ、その向こうに別の通路が現れた。
「道、できた!」
「洞窟が崩れたらどうするんですか!?」
「細かいことはあとや! 早く!」
クリフの槍を壁から引き抜いて、3人で新しい通路へ飛び込んだ。
しばらく走ったところで、背後の音がようやく聞こえなくなった。
「た、助かったぁ……」
壁へ手をついて、荒くなった息を整える。
もうミミズもゲジゲジも見たくない。
「でも、ここはどこでしょう?」
「知らん」
「堂々と言わないでください!」
ブラが足元へ魔導ランプを向けた。
地面には、何かが這ったような幅の広い跡が続いている。
「何、これ?」
「ジャッフルではありませんね。もっと別の……」
クリフの言葉が途中で止まった。
通路の奥から、ザラザラと鱗が地面を擦る音が聞こえてくる。
暗闇の中に、二つの目が浮かび上がった。
続いて現れたのは、通路を埋め尽くすほど太い蛇の頭。
その後ろには、どこまで続いているのかわからない長い胴体が伸びている。
「……あれ、勝てると思う?」
「無理です」
「逃げる」
「意見一致やな」
蛇が大きく口を開いた。
「キシャァァァァッ!」
「走れぇぇぇぇぇっ!!」
うちらは一斉に来た道を引き返した。
ザザザザザッ!!
巨体が壁と地面を削りながら迫り、洞窟全体が激しく揺れる。
「リーナ! どっちですか!?」
「右!」
「さっきも右で迷ったでしょう!」
「ほんなら左!」
「考えてから答えてください!」
「前」
ブラが真っ直ぐの通路を指差す。
「最初からそれでええやん!」
「2人がうるさい」
蛇の頭がすぐ後ろまで迫ってくる。
クリフが足をもつれさせ、前のめりに転びかけた。
「クリフ!」
「だ、大丈夫です!」
ブラがクリフの襟を掴んで引っ張った直後、横から振られた尻尾がブラを弾き飛ばす。
「ブラぁぁぁっ!」
壁へ叩きつけられたブラは、何事もなかったように起き上がった。
「痛い」
「そら痛いやろ!」
「来ます!」
いつの間にか、一匹のジャッフルまでうちらの横を必死に走っていた。
蛇から逃げているらしい。
「なんであんたまで一緒に逃げとんねん!」
「敵の敵は味方」
「絶対ちゃう!」
進んだ先に、上へ向かって伸びる急な坂が見えた。
先には、かすかな光が差し込んでいる。
「出口です!」
「あそこまで走るで!」
うちらは最後の力を振り絞り、坂を駆け上がった。
◆◆◆
「よし。今日も順調、順調」
俺は畑の穴から飛び出してきたジャッフルをカブ改で叩き伏せた。
少し離れた場所では、蚊遣り豚が口から輪っか状の煙を吐き出している。
カールさんの畑でやったモグラ退治大作戦が噂になって、別の農家からも同じ依頼が舞い込んできた。
作戦自体は単純だ。
蚊遣り豚の煙を巣穴へ流し込んで、地上へ逃げてきたジャッフルを倒す。
今回も効果は抜群。
うん。我ながら素晴らしい作戦だ。
「これで最後かな?」
周囲を見回していると、足元から妙な振動が伝わってきた。
ゴゴゴゴゴゴッ……。
「んっ?」
振動はどんどん強くなって、地面に亀裂が走る。
「ちょっ、何!? もしかして、ボシ・ジャッフル!?」
ドゴォォォン!!
土を盛大に吹き飛ばし、畑の真ん中からリーナたちが飛び出してきた。
「うわぁぁぁぁっ!」
「助けてくださぁぁぁいっ!」
「着地失敗」
3人は地面へ転がって、その横にはなぜかジャッフルまで倒れている。
「えっ? 何してるの、みんな?」
「カトル! 逃げて!」
「逃げるって、何から?」
答えを聞くより先に、さっきできた穴が内側から弾け飛んだ。
地中から飛び出してきたのは、20メートル近い蛇だった。
俺はすぐに観察眼を発動する。
◇名前 ガラ・アファル
◇識別 モスキート
◇脅威度 カテゴリー2
◇属性 月属性
「カテゴリー2!? って、驚いてる場合じゃないな!」
「キシャァァァァッ!」
ガラ・アファルが大口を開け、地面を削りながら勢いよく迫ってくる。
俺は3人と一緒に畑の中を走り出した。
「なんで毎回追いかけられてるんだよ!」
「うちらかて、追いかけられたくて追いかけられてるんちゃうわ!」
「地下で遭遇したんです!」
「お友達」
「違う!」
「なんか余裕ありそうだね!?」
後ろを振り返ると、ガラ・アファルの口がすぐそこまで迫っている。
このまま逃げ続けるのは無理そうだ。
「3人とも、先に行って!」
俺は走りながらカブ改へ小シェルを装填した。
スターターを引くと、エンジンが低い唸り声を上げる。
振り返ってアクセルを握り込んだ。
エンジンの出力が跳ね上がる。
ガラ・アファルが口を限界まで開き、俺を丸呑みにしようと突っ込んでくる。
「そんなに食いたきゃ、これでも食らえ!」
俺は踏み込みと同時に、暴れ狂うカブ改を振り下ろした。
マフラーから吹き出る真っ赤な炎が軌跡を描く。
ドゴォォォォン!!
ガラ・アファルに炸裂した一撃が、その頭を吹き飛ばす。
頭を失った巨体はピタリと動きを止め、しばらくしてから光の粒へと変わっていった。
「ふぅー……案外弱くて助かった」
カブ改から立ち上る煙を眺めていると、腕に熱を感じた。
嫌な予感がして水蜥蜴のインナーへ目を向ける。
前腕部の袖が見事に焦げていた。
「……また買い直しかぁ」
俺は焦げた袖を摘まみながら、深いため息を吐いた。
◆◆◆
ガラ・アファルが消えると、畑に静けさが戻った。
うちはその場へ座り込んで、土だらけになった服を見下ろした。
頭にはミミズ。
そのあとゲジゲジの群れ。
ジャッフルと戦ったと思ったら、今度はあんな蛇に追いかけ回された。
もう一歩も動きたくない。
「みんな、怪我はない?」
焦げた袖を気にしながら、カトルがこちらへ近づいてくる。
「なんとか……」
「僕も大丈夫です」
「大丈夫」
「ブラは絶対大丈夫ちゃうやろ!」
その時だった。
どこからか、グースカ、グースカと呑気ないびきが聞こえてきた。
「……何の音?」
音のする方へ目を向けると、そこでは赤いふんどしを身につけたアマガエルが寝転がっていた。
その周りには、齧りかけのガジャイモや引き抜かれた葉が散乱している。
アマガエルは腹を出して仰向けになり、鼻先では半透明の鼻ちょうちんが膨らんだり縮んだりしていた。
ガジャイモをどれだけ食べたのか、その腹は今にも破裂しそうなほどパンパンに膨らんでいる。
「……ケロ太?」
「依頼書の特徴と一致しますね」
「寝てる」
「うちらが命懸けで走り回っとった間、ここでガジャイモ食べて寝とったん……?」
ケロ太の鼻ちょうちんが、ぷくぅーっと膨らむ。
パチンッ。
割れた。
だけど、ケロ太は少し鼻を鳴らしただけで、また新しい鼻ちょうちんを作り始めた。
「起きんかぁぁぁっ!」
「グゲコッ!?」
うちの叫び声に驚いて、ケロ太が飛び起きる。
そのまま立ち上がろうとしたけど、膨らみすぎた腹が邪魔で、ころんと横へ転がった。
「自分で歩くのは無理そうですね」
「運ぶ」
「どうやって?」
ブラが近くに落ちていた木の棒を拾い上げた。
結局、うちらはケロ太の身体を縄で縛って、木の棒へ吊るして運ぶことになった。
前をうちとクリフ、後ろをブラが支える。
ケロ太は棒の下で腹を揺らしながら、また眠っていた。
「なんで救助された本人が一番楽そうやねん……」
「無事に見つかったんですから、いいじゃないですか」
「重い」
「ほとんどガジャイモの重さやろ、これ!」
カトルと別れたあと、来た道をカールさんの畑へ戻る。
ようやく畑が見えた頃には、腕も脚も限界だった。
カールさんは麦わら帽子を被って、鍬で畑を耕している。
「カールさーん! 見つけたでー!」
「ケロ太ぁぁぁぁぁっ!」
カールさんは、こちらへ駆け寄ってきた。
木の棒から下ろされたケロ太へ抱きついて、滝のような涙を流す。
「無事だっただべか! 心配しただよぉぉぉっ!」
「グゲコッ」
ケロ太も嬉しそうに鳴きながら、カールさんの頬へ頭を擦りつけた。
これで依頼も無事達成。
苦労したけど、この姿を見たら頑張った甲斐もあったかな。
「それで、ケロ太はどこにいただべ?」
「地下の穴を抜けた先にある、別の人の畑や」
「そうだべか。そんなところまで行ってただか」
「そこでガジャイモを食い荒らして、腹いっぱいになって寝とった」
「……」
カールさんの笑顔が固まった。
「人様の畑のガジャイモを食い荒らした……だべか?」
「う、うん」
カールさんは、ゆっくりと立ち上がった。
手に持った鍬をズルズルと引きずりながら、ケロ太へ近づいていく。
さっきまで涙を流していた目が、やばいくらいに据わっている。
「グ、グゲコ……?」
殺気を感じたのか、ケロ太は後ずさる。
「なぁーにしとるんだべかぁぁぁっ!! ケツから空気入れて空まで飛ばしてやるべーー!!」
「グゲゲーー!?」
ケロ太が飛び上がって、腹を揺らしながら逃げ出した。
そのあとを、鍬を振り上げたカールさんが追いかけ回す。
「待つだべ、ケロ太ぁぁぁっ!」
「グゲコッ! グゲコッ!」
うちらは止める気力もなく、畑の端へ並んで座り込んだ。
「なぁ、今回の報酬って50ラグバやったよな?」
「はい」
「うち、極小シェル2発使ったんやけど……」
クリフが少し考えてから答える。
「1発30ラグバなので、合計60ラグバですね」
「もう赤字やん! ジャッフルのドロップは!?」
「洞窟に置いてきました」
「ガラ・アファルは!?」
「カトルさんが倒したので、カトルさんのものですね」
今日一日の苦労が、頭の中を駆け巡る。
「つまり、10ラグバの赤字です……」
ブラは、カールさんから必死に逃げるケロ太をしばらく眺めた。
「骨折り損のくたびれ儲け」
うちらは揃って深いため息を吐いた。
次回は10月2日20時20分投稿です。
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