『聖書に誓って』
チャンスをのがしたくないスコルの熱意が伝わったのか、まだ名前もきいていないあいては、すこしのあいだまゆをよせてスコルをみていたが、うなずいて、「船が出るまでならいいですよ」と、了承してくれた。
そこでさっそく司祭に許可をもらい、街中の食堂へ来て、奥の席でスコルが研究していることと、魔物になる条件に『発生』は関係するのかというはなしをしているときに、ラフィーからの『大発見』の発言だった。
「 ラフィーさん、もう一度いいますけど、それ、すっごい情報なんですよ。イウーキはどの大陸でもでてくる『魔物』ですけど、そんな蔦植物から出てるなんて、誰も知らない。その迷宮の場所も、ぜひ、われわれの《教会博学士会》に情報提供してください」
「あ~・・・それはちょっと・・・こまり、ますね」
むかいにすわる《賢者》は、法衣の肩掛け(ケープ)の片方をはずし、さらに法衣の胸当て兼物入になっている部分に手をいれ、つかいこまれた聖書をとりだした。
「 ―― スコルくん、きみが研究熱心な司祭補助だということは、ドミート司祭からもきいてわかっていますが、なにぶんにも、初対面ですし、すこし、用心したいという意味で、『聖書に誓って』もらっていいですか?」
「 あ・・・・はい。 まあ、そうですよね、わかります」
『聖書に誓って』発言をすると、その発言が嘘であったばあい、司祭としての資格が剥奪される。きっとラフィーは《勇者一行》として語ってはいけないこともあり、それを考えてスコルに誓わせたいのだろう。
スコルはラフィーの《聖書》に手をのせ、「ここで聞いたことはだれにも話しません」と誓った。
「 『ここで見聞きしたことは』 」
にっこりと微笑んだラフィーが、祈りの言葉をまちがえた生徒にするように、言いなおしをうながした。
「 ―― はい。ここで見聞きしたことは、どこにも、だれにも、もらしません」
なかなか用心深い《賢者》だな、とおもいながら、スコルはもう一度誓いなおす。
まんぞくしたようにうなずいたラフィーが、テーブルから聖書をとりあげ、法衣の中にしまおうとすると、そこから白いなにかが勢いよくとびでて、「 ぐっはあああああ 」と音をだした。
「 ・・・まだ、出てきていいと言ってないですよね」
眉をしかめた《賢者》が冷たい声でいいながら、その白いものも押しこむように聖書をしまう。
「なんだよ、そいつもう誓ったんだろ?なら、いいじゃねえか」
聖書につぶされるのをさけるように、白いものは一度胸当ての中にもどってから、あらためてだした顔をテーブルにのせた。
「 ―― と ・・・・・トカゲ?いや、ドラゴンのこども?いやいや、ちいさいし、角はない。いや、 いやいやいやいやいや・・・・・・そんなことより、・・・・いま、・・・・しゃべりました?」
「しゃべったらなんだ? おい、ラフィー、まさかこいつがおれの正体をしってるとでもおもったのか?」
「ドミート司祭が、彼が動植物にくわしいって言っていたので、すこしはなにかわかるかと思ったんです」
テーブルに首をだした白いトカゲとラフィーが、『会話』をしている。




