まだ知らない外の国の術
「 ―― な、・・・んだ・・・?」
「・・・沈んだわけじゃないですね・・・」
「あわわわわわわわしゅ、しゅ、」
「ラーラおちついて。口から泡がとんでるよ」
背中をなでてきたリミザをおしのけ、小屋から落ちそうないきおいでむこうをさしたラーラが、しゅっ、しゅっ、となんどか泡をとばしてから、「シュウレンジュツ!!」とくちをとがらせ、むこうにむけた手を上下にばたつかせた。
「《収れん術》だってば!!空間魔法術の、いまやできる魔法使いもかぎられる、すっごいむずかしくって必要な魔力もハンパないやつ!!島を、一度点にして、どっかの空間にうつしたんだよ!だから磁場のねじれが、・・・ねじれ・・・・・・ ―― ここで、『ねじれ』つくったのって、リミザだよねえ?」
なにかに気付いたように、落ちないでよ、とラーラの後ろ首をつかんでいたリミザをふりかえる。
「え? ああ、だって、《アイリド》を捕まえるのに練習したから」
「てめえの練習は《魔法陣》の練習だろが」
ガットのつっこみに、「まほうじん!?」とラフィーが反応するが、「ちょっとリミザ!!」とさけんだラーラにかきけされる。
「あんた、 ―― 練習したあと、ちゃんと『ねじれ』、なおしたんでしょうね?」
「 ・・・・・・・・・・・・うん う 」
「リいいいいいいミイイイイイイザああああああアア」
「なおさなかったんですか!?」
「まてよ。そんなになおしておかないとマズいのか?」
さいごのガットの質問に、リミザのむなぐらをつかみあげたラーラがすごいいきおいでふりむき、ラフィーが小刻みにうなずく。
「もちろんです。ねじれたままではほかにも影響がでますし、でも、『魔法陣』?」
ちがうちがう、とリミザが首をふり、「それは別。だけど、ほら、場所がつながりやすいように《近道》をつくっておいたんだって」と、得意げにあごをあげる。
「『近道』だあああ??『ねじれ』にさらにおかしな変化つけてのか、ゴラア!!」
ラーラがリミザをもちあげるのをおさえたガットが、島が消えた方向をなんどもゆびさす。
「それより!テモモたちだ!・・・まさか、あの島ごと・・・」
『ニジュウサンの島』以外には、《ワニ》たちも暮らしているはずだ。
「ああ、それは大丈夫。『ねじれ』の近道は、おれの魔力がかかってないと通れないようになってるから、アチルゴの人たちは通れないよ。でもきっと島の《ワニ》たちは、島が消える前に避難してるんじゃないかな。みんな、手をたたいて移動する魔術がつかえるんだからさ」
リミザの言葉に仲間たちも息をつき、ラーラもリミザを離した。しかし、ガットはここで、リミザがやってくれた、もうひとつの出来事をおもいだした。
「おれたちを襲ったあのでっかい『島ヘビ』も、おまえの『魔力がかかって』るから、そのねじれを通って出たり戻ったりしてるってわけか」
「あの島ヘビ!!どうりでみたことがある術式だと思ったわい!!」
「リミザがやったんですか!?」
この数時間あと、櫓の小屋からぶらさげられたリミザを見つけて引きあげてくれたのは、戻ってきたカテカたちだった。
そこから二日、テモモとキエネのからだの回復に魔法術と外の国の薬草をもつラフィーとラーラが手を貸し、『船を沈めたのは、シーワームを追ってここまできたシードラゴンだった』とつくった報告書に、二つにきられて沈んだままだったシードラゴンから、あわててはぎとった鱗をつけて《王様連盟》におくった書類には、アチルゴ国王のテモモが、《勇者一行》をたたえた『感謝状』も添付されていた。
―――――
「 ―― 島がいくつかなくなったのは、ちょっと想定外だったけど、おれが『ニジュウサンの島』で《アイリド》をよんだり、《島ヘビ》をつかったりしなかったら、あの《ストーカーな悪霊》だって《退治》できなかったんだから、しかたないだろ?」
顎をあげて仲間をみまわすリミザは睨み返されただけだったが、船を漕ぐキエネは何度もうなずいた。
「そのとおりだ。ほんとうにおまえたちには感謝している。 いやあ、ほんとうに外の国にはおれたちがしらない術がたくさんあるのだなあ」
この感想に、不満があるトカゲが船のへりにとびのり、「感心してほめたたえるならおれの活躍にだろ!」と、とびはねた。
トボン
「あ、落ちた」
「リミザは拾うな。おまえも落ちるぞ」
「リミザとちがってまだ泳げないんでしたっけ?」
「『ヒモ付け』のヒモって、どのくらいの距離まで有効か、この際ためしてみたら?」
冷たい《勇者一行》とはちがい、すぐに海にとびこんだキエネによってトカゲは助けられた。
「てめえら!おかしいだろが!アチルゴが救われたのは、このおれの活躍があったからこそだぞ!もっと感謝しろ!ほめろ!おがめ!このおれをたたえろ!!」
このあとハバーツ王国の港にもどったときに、《白いトカゲ》はスコルをよびだし、今回の《船を撃沈・海の魔獣退治》の真相について語ろうとしたが、「だって、おかしなはなしだろ」という語りだしで急にくちがうごかなくなり、文字として残されることはなくなった。
次でおわります




