表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者死んだままパーティー(契約中) ― 海の魔獣退治 ―  作者: ぽすしち
おかしいはなし ― 34 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/66

あのときつくった






 34.



  「リミザ!! てめえ、」

  「はいっちゃだめだ!!」


   思ってもいないほどの強い声で近寄るのをとめられる。


 「ガット、 ―― 下をみて」


 命じられて、もうすこしで入りそうだった柵のなくなった円の中が、地面ではなく水面だというのに気づく。


「 その《黒い海》の中に落ちたら、おれでも助けられないよ」


 そういって腕をくむリミザの背には、また黒い翼がでてひろげられている。

 自分がかいた《魔法陣》の中は地面のままなようで、とりかこむ黒い水をみている。黒い水面は波うつこともなく静かなままだった。



 これが『海』なのか?



 海だというその水は、地中から出る油のように黒い。



 だが、そんなことより、テモモだ。それに、キエネはどうした?

「リミザ、てめえテモモをなんで《アイリド》に喰わせやがった。魂だけ喰わせりゃよかっただろ?」


 角と翼をもつリミザが、《前のリミザ》のまぬけな顔をして、ガットをみてきた。


「あ~、あれは、ほら、面倒だからさ」


「はあ?面倒だからって、」


「あの《アイリド》なら喰ってくれるって。きのうから準備しといたんだから」


「きのうって・・・、 そういやおまえ、《これから『練習』する》って言ってたのって・・・」


「そうなんだよ。なかなか難しかったけど、これも才能かな。ここまで準備できちゃったからさ」

 立てた指を額につけ、顔をかたむけてガットにウインクしてきた。

 ナイフを持ってたらその眉間めがけてとばしていたところだ。

「あ、いまガット、おれに殺意もったよね? あのさあ、いっとくけど、 みんなに怒られないよういっしょうけんめい考えた結果だよ?」


「これがか?」


「そうだよ。だから、 ―― あ、ちょっと待った」

 リミザが額にあった指をガットのほうへだす。



 《黒い海》が、すこしゆれた。




   ・・・でてくる・・・


 ガットが腰の剣に手をかけると、リミザが立てた指を横にふった。



 

 ゆれた黒い海が盛り上がる。 だが、本物の海のように水を分けて中から何かが現れるのではなく、盛り上がった黒い水じたいが、何かの《かたち》になりながら、ゆっくりと立ち上がってゆく。


 水は、一滴も飛び散ることがなく《かたち》をなしてかたまってゆき、かたまったそれが『頭』だとわかったときに、みたことがある黄色い模様が目にはいった。



「 ・・・しま・・・ へび・・・」


 ガットのつぶやきに、リミザが「あったり~」と指をならした。



「あのとき『つくった』やつが、こんなかたちで役に立つとはおれもびっくりだったよ~」


 リミザの声がひびき、目の横に黄色い眼玉模様のある、巨大な黒いヘビがあらわれた。



「 ―― 『つくった』?」

 ガットは自分の声が裏返るのをきいた。


 あのとき船をおそってきた《巨大な島ヘビ》は、テモモでもキエネでもどこかの魔族でもなく、目の前のこの、魔物になりかけのクソ勇者が、『つくった』?



「いや、ちょっとここの国、変わった磁場があるから試したいことがあってさあ。それにほら、キエネをちょっと脅かしたら、なにか変わるかな~、とか思って」

 さっきの《アイリド》よりも大きい頭を上にもちあげたヘビが、お辞儀をするようにリミザへ頭をさげる。


「 っく、っそ、」こめかみで脈打つ血管が切れそうだった。



「ガット、落ち着いてよ。こいつがびびっちゃうよ。あのさあ、こいつが出たから、シードラゴンとかも来たんだし、結果よかっただろ?あ、まって、もういいかな。ほら、だして」

 リミザが頭をさげるヘビの、あごの部分をたたいた。


 島ヘビはうながされるように、リミザを喰おうとするように大きなくちをあけた。

 そのまま喰ってくれとガットがおもったとき、蛇のくちから、人が転がりおちた。


「ああっ!テモモ!!」


 蛇から出て、リミザのそばにうずくまるのはテモモだった。

 巨大な島ヘビは仕事をおえたようで、しずかに黒い海へと沈みもどっていった。沈みきると、《海》はまた《地面》にもどる。


「だいじょぶだった?あの《アイリド》なら残さず喰ってくれただろうけど、よけいなとこまで喰われてない?」

 のんきな声でリミザがテモモに手をかしながら声をかける。

「おお、・・・ここまでがあんたの《術》か? ―― この世はまだまだ、おれらの知らぬことばかりだ」

 テモモはかすれたわらいごえをもらした。

「まあ、国をひらいたばっかりだから、しかたないよ。おれだってこの国にはびっくりさせられたしね」

「そうか。それで、・・・キエネはどうなった?」


 テモモがきくのに、ようやくガットも思い出す。

 

 眉をしかめたリミザが、こちらをみて情けない顔をする。

「・・・キエネは・・・ おれが魔術をかけたから・・・」


 言葉をにごすリミザと目をあわせていたガットは、さっきの黒い海にキエネがのみこまれる姿を想像し、のどの奥がつまった。


「・・・練習したけど、自信ないよ・・・。 うまくいってたらラフィーのところにいってるけど、ちがうところに移動させちゃったかも」どっかの木のてっぺんだったらごめんね、と恥ずかしそうに角をなでるリミザのようすは、出会ったばりのころを思い起こさせた。




 胸をなでおろしたガットは思った。




 このリミザとパーティーを組んでいる限り、この先、おれの心臓に平穏は訪れず、きっと寿命は縮まってゆく一方だろう。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ