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勇者死んだままパーティー(契約中) ― 海の魔獣退治 ―  作者: ぽすしち
おかしいはなし ― 33 ―

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62/66

おれは《勇者》

!!ご注意を!! 流血、残虐な場面あり。


 リミザがわらって炎の檻にはりつけられた、テモモをひっぱった。

 テモモは柵から急にはがされ、よろめいてころびそうになる。顔のまん前には、輝きを放つ大きな《アイリド》がいる。



「テモモ、最後の力をふりしぼって、その《アイリド》とにらめっこしてくれよ」



「 《 きさまなにをウ 》  そうか。この美しい眼玉が喰うてくれるか 」


 前と後で違う声をだしたテモモが、しっかりと眼をあけた。



「うん。ほんとはおれとガットでその《ストーカーな悪霊》をひっぱりだしてやろうと思ってたんだけど、このほうが早そうだからさ。さっきから見てる限り、どうもその《悪霊》、憑りついた相手を利用する魔術をつかいそうなんだよなあ。変形させるとか、巨大化させるとかさ。 おれだけだったらそんなことになってもためらわずに一発で終わらせるけど、ガットはたぶん、あとで怒るからなあ・・・」


 わらいながらこちらをみるリミザに、「よけろ!」とガットはさけんだ。



 まだ柵につけられたままで意識を失っているとおもっていたキエネの顔があがり、ぶじゅっ、というような音がしたと同時に、キエネの目玉を押し出して飛び出た黒いものが、リミザへむかった。

 それは、『いにしえの魔物』シリーズの罠で会った、《ニセオアシス》という木のような魔物をガットに思い出させて背筋が冷えたが、すぐにリミザがのんきな声をあげた。


「なんだよ~、これって、髪の毛?うっわ、キモいって、なんで髪の毛?まあ、《黒魔術》をかけるときに媒体としてつかうことはあるけどさあ、攻撃につかうって、どうなんだよ?」

 細い首をその髪の毛でしめあげられながら、角をもつリミザがわらう。


「 《 きさま 何者だ? 》 」

 眼玉があったところから髪をだしているキエネがだす声は、怒りというより怖れをふくんでいた。その間にも、血にまみれた黒い髪がどんどんでてきていて、ガットはまだ柵につけられたままのキエネのからだが心配になる。



「おれ? ―― おれは、《勇者》だよ 」

 わらってこたえたリミザは、首にまきついている髪をつかんで、いきおいよくひっぱった。



   ぎゃあああっつ



 汚い声で悲鳴があがり、目玉のなくなったキエネのまぶたを引き裂くかとおもわれるほどの髪の束が引きずり出される。


「リミザ!!やめろ!」


 ガットの怒ったようなさけびごえに、納得いかないような顔をしたリミザが、「じゃあ、どうすんだよ?」と聞いてきた。


「おまえの計画通り、はやくその《アイリド》にくわせればいいだろ?」


「だからあ、それでテモモとにらめっこした《アイリド》に、ストーカーを押し出してもらおうと思ったんだけど、まだキエネのほうに残ってたのが、こういう無駄な魔術で抵抗してきてるとこなの。見てわかるだろ?これ、おれが手をはなしたらまたキエネの中にもどっちゃうよ。ガットはそのほうがいいわけ?」


「そうじゃねえが、もっと、こう、」


「片目ぐらいどうなっても平気だろ。のっとられたとはいえ、こんなことになって、キエネだっておれたちに協力したいとおもうよ?」


 たしかに片目から気色悪い髪を出したキエネは、こうしてガットとリミザがはなしているあいだ、攻撃もなにもしようとしない。それは、キエネがじぶんをのっとっているモノを、おさえこんでいるからだろう。



「くっそ・・・こういうときだけまともなこといいやがって」


「え?よくきこえないけど、お礼ならあとできくから」


 にこやかな顔のまま、つかんだままだった黒い髪の束を一気に引いた。



   ぎゃあああああアアアアアアア



 キエネが叫ぶのと同調してテモモもさけぶ。リミザは引き抜いた髪を巻き取るように手をまわしてつかみなおすと、叫び声をあげるテモモのくちへこぶしといっしょに押し込んだ。


「ばっか、なにしてやがんだ!」

 もがくような声をあげるテモモの口の中へつぎつぎに髪をおしこんでゆくリミザのそれは、ガットには『拷問』にしかみえない。


 だが、つぎの瞬間には、ゴボフっ と変な音をだしたテモモが、その髪をいっきに吸い込んだ。



「 《 これで、おまえとたたかえるぞ 》 」

 テモモの細いからだがふるえだし、《魔力》があがってゆくのをガットも感じた。



「ああ、やっとひとつになった?じゃあさ、 ―― めんどうだから、おれがやるね」

 《勇者一行》の旅で、ラーラに任せた料理を自分がひきうけるときの気楽なようすでリミザが言った。


 ガットには、止める間もなかった。


 《クソリミザ》は、テモモの首をつかむと、《アイリド》の宝石部分へと頭を突っ込ませ、背中を蹴って完全に《アイリド》の中に老人を入れてしまった。



「 ・・・・く・・くわす・・・って・・・」魂のはなしじゃなかったのか?



 テモモを喰った《アイリド》が、皮膚をゆっくりと閉じ、出てきたときからは考えられない速さで地面の中へもどっていった。


 ガットの頭に血が上り、クソリミザをどなりつけてやろうとしたそのとき、リミザたちを囲い込んでいた炎の檻が消えてなくなった。



 








目をとめてくださるかた、ありがとうございまーす。あと二章でおわりまーす。

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