だれかの目玉?
33.
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大昔、《魔族》が人間と戦うときに、魔獣や魔族と契約してしまった精霊などを魔界からよびだすため、『召喚』をかけることがあった。それは、《魔族》のなかでも上位のものしかつかえない《魔術》だときいたことがある。
《クソリミザ》はやはり、完全に上位の魔族らしい。
リミザの足元にゆっくりと地面の中から出た《アイリド》の薄そうな皮膚の灰色の色味は濃く、罠でみた《アイリド》の数倍の大きさと厚みがあった。罠につかわれたあれが『子ども』だとしたら、これが『親』の大きさなのかもしれない。
暗い灰色の皮膚におおわれ大きくふくらんだそれはあきらかに半球体で、それをまんなかで分けるように美しく立っている、タテガミのような《アイリド》のマツ毛は長く色とりどりで、まるで美しい鳥の羽のようだった。
でかいな・・・。
それがガットの感想だった。
《アイリド》のマツ毛が震えだし、目をひらくように、そこから灰色の皮膚が二手に分かれてひらいてゆき、中からゼリーをまとったような、美しく輝く宝石があらわれた。それがはなつ光が、洞窟の中を一気に明るくする。
『アイリド』をのぞきこんだものは《魂》をうばわれるというのに、リミザはその《アイリド》におおいかぶさるように身をのりだしこえをかけた。
「 これからおまえが喰う魂は、すこしたべなれない味かもしれないが、 ―― がまんして最後まで喰えよ 」
やさしい声だが、それがあきらかな『命令』だと感じたガットは、ドラゴン退治の罠で出てきた《アイリド》に、リミザが手をつっこんだ場面を思い出す。
地面の上に出た《アイリド》は、皮膚をすっかり開き切り、輝く宝石を、美しいマツ毛が一周囲んだようになり、ここで終わりだとおもったのに、まだ《アイリド》はゆっくりと地面から浮かび続け、ガットはとまどった。
リミザと目があい、むこうは『まあ、みてて』というようにわらいかけてくる。
キエネからテモモにむけて出ていた白い粉のようなものはもうみえない。ふたりとも、まだ赤黒く燃える火の檻の柵にはりつけられ、気をうしなったようにぐったりとしている。
浮かび続け、今度こそ完全に地面から出きった《アイリド》は、ガットが予想した通り球体だった。上半分は輝く宝石で、球体の半分の位置を示すように一周したマツ毛から下は灰色の皮膚のままだった。その姿をみたガットは、なんだか、また自分が罠にかかったような気分になった。
・・・・め・・・だま・・か・・・?
ガットが抱えられるぎりぎりの大きさだろうその球体の、灰色の皮膚の部分には、まだ地面からつながっている木の根のようなものがからみついてきている。黒く細いそれは入り組んでつながり、ときどき脈打つような動きをして、これが生物だということがわかる。
そういえば、罠の《アイリド》にリミザが手をつっこんだときも、その中からミミズの束のようなものをつかみだしていた。
そうか。宝の『見張り番』だという《アイリド》は、『宝石の魔物』なのではなく、けっきょく、『だれかの目玉』ってことか?
そうガットが考えたとき、浮かんでいた《アイリド》がいきなり身を起こすようにして、『眼玉』の宝石部分を、ガットのほうへむけてきた。
「ダメダメ、おまえが喰っていいのはそっちじゃなくてこっちだって」




