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勇者死んだままパーティー(契約中) ― 海の魔獣退治 ―  作者: ぽすしち
おかしいはなし ― 32 ―

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ひねってとどくよ


 


 32.



   「 『アイリド』をつかうって、どういうことだ? 」


  ガットは《白銀のドラゴン退治》のときはまった『罠』をおもいだし、眉間のしわをふかめた。




 カテカが加わることになった日の夜の話し合いで、ラーラの肘を腹にくらい、「ひとりでなに合点しとるんじゃ。みんなにわかるように説明しろや」とすごまれたリミザは、「だからあ、『アイリド』つかおうよ~」となさけない声でうったえていた。



「 ―― あのさあ、『アイリド』は魂を喰うわけだろ?それなら、その《ストーカーな悪霊》も喰えるんじゃないの?《悪霊》って、ようは、《さまよい続けてる魂》ってことだろ?」

 ラーラにへこまされた腹をなでながら、リミザがみんなをみまわした。


「そういわれると・・・まあ・・・、そうですね・・・」

 ラフィーが唇をなでるように、ゆっくりとうなずいた。


「だろ?だから、そいつを『アイリド』に喰ってもらえばいいわけだ」

 リミザはこのいいおもいつきをみんなに褒められたいという顔で仲間をみる。


「なによ、じゃあ『アイリド』を捕まえに、またあの《忘却の山》から行くの?」

 面倒なことこのうえない、という顔をラーラがテーブルに着いた手にのせる。



「 いや、みんなが行くことないよ。 おれひとりで、とってくるから 」

 リミザののんきなこたえに、仲間が顔をあわせて首をふる。


「てめえ、黒いハネで飛んでいこうと思ってんだろ?」

「だめだめだめ。《忘却の山》にいくまでに、いくつの国の上とぶと思ってんの?」

「魔族がきたと思った国がすべて、軍隊と魔法使いを待機させてあなたを狙い、あなたが撃たれても、撃たれなくても、大問題になります」


 仲間たちの怒った顔をみてほそい首をまげたリミザは、「とばないよ」と不思議そうにこたえた。

 そのこたえに、仲間も不思議そうな視線をかえす。


「 ―― だって、空なんて飛ばなくても、『地面』の中からひっぱりだせばいいんだからさ。このアチルゴ国の島って、ちょっと独特の《磁場》にあるみたいだから、すぐに『とどく』よ」

 リミザが、《前のリミザ》のような気楽さでわらってみせた。


 この笑顔になんだか安心してしまった仲間たちは、お互いの顔をみて、まあいいか、という気持ちになってしまったのだ。


「・・・まあ、リミザがいつのまにそんな《魔法術》つかえるようになったのかは、知らねえけど、大丈夫ってことなのか?」

 ガットはラーラをみた。


「う~ん・・・、まあ、たしかにここの《磁場》なら、ちょっとひねった《魔法術》で、ほかの大陸とつなげることはできるとおもうわ。リミザがこのごろつかう、《魔術》なら、それもできるとおもうけど・・・、それ、《黒魔術》だよねえ?」

 ラーラはラフィーをみた。


「そうですね・・・。でも《黒魔術》だとしても、一か所磁場をひねるぐらいなら・・・。いいですか、やったあと、ぜったいに元にもどしてくださいよ、リミザ」

 ラフィーはひさしぶりにリミザに命令した。


「うん、わかった」

 リミザらしい素直さで返事をしたのに仲間たちは《前のリミザ》を見た気がして、安心してこの計画を任せることにした。


 そのリミザの計画とは、『 テモモがいる島に、キエネとカテカをおれたちがつれて行こうよ。キエネはずっとそれを待ってるんだし、カテカもテモモがどうなってるか心配だから不自然じゃないだろ?そしたらキエネが、つぎに《渡る》ためにカテカとテモモの顔をあわせようとするだろうから、そこでおれたちがそれをとめて、じつはこのアチルゴ国の実情を知ってるぞ、って教えてやって、キエネとテモモの中にいる悪霊のストーカーを『アイリド』に喰わせて退治すればいいだろ 』という、いたって簡単なものだった。



 その簡単な計画での大事なかなめとなる、《アイリド》を捕まえるという作業を『これからちょっと練習してみる』とはりきった声でいいおいたミザは、そのままひとりで出て行った。残った仲間はイシシにリミザの《黒魔術》の説明をし、すこし《磁場》が狂う場所がでるかもしれないが、あとで元に戻す、と約束した。



  そう。


 ガットもふくめ、《勇者一行》の仲間たちは、リミザが地面の一か所に《黒魔術》をかけ、《磁場》をひねって、リミザが言った通り、『地面の中』から《アイリド》をひっぱりだすのを想像していた。

 それはつまり、《アイリド》が生息するところの地面をつなげるといういうことだ。



 だが、よく考えてみたら、『いにしえの魔物』は、いま、どこに《生息》している?




 《白銀のドラゴン退治》のときに《勇者一行》がかかった罠で、たしかに《アイリド》は出てきたが、それは正確にいうと、《罠として仕掛けてあった卵にアイリドが入っていた》から、あの場へ出てきたのだ。

 つまり、罠のあった場所が《アイリド》の生息地というわけではない。

 


 それなら、あのアイリドは、本来ならどこにいる?


 ガットは髭をつまんでひっぱらなくともその答えが出せた。




  そう。


   いるとしたら、  ―― 魔族の故郷である、《魔界》だ・・・。
















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