方法
剣をしまいあわててかけよって顔をのぞくと目を閉じている。あせったが、その目がすぐにひらき、こちらをとらえた。
「おい、大丈夫か?」
かかえあげたからだが異様に軽い。砂埃で白くなった顔の、吐血したくちまわりだけ黒くみえている。
「カテカは・・・?」
「平気だ。ここにはいねえ」
そうか、と安堵したように老人は目をとじる。
「おい、しっかりしろ」
このまま目をとじたら終わりのような気がして、ガットはテモモをゆすった。
すると、むこうでリミザに踏まれているキエネがむせだし、血を吐き出した。
「おお、いいねえ。つながってるつながってる」喜ぶ声をあげ、いやな笑顔のリミザがキエネを足で転がした。
「く、・・そリミザが、はやくしろ」
ガットは怒りをこらえながらうながす。
「わかったって。じゃあテモモのほうでやろうかなあ・・・」
「テモモで!?」
「いやあ、実際こうやって二人にあってみたらさあ、あきらかにテモモのほうが強いよね。ガットだってわかってるだろ?」
「そうかもしれねえが・・・、テモモはもう、体だってもつかどうか、」
「あ。そっか。ガットはテモモを無事にカテカに会わせてやりたいって考えてるんだ?でもそれって最初から無理だよなあ。 おれの計画きいたときにガットだってそう考えたはずだろ?それでもガットは賛成したよなあ」
「賛成したわけじゃねえ。ただ、・・・ほかに方法が思いつかなかっただけだ」
「そう。『思いつけない』から、おれの案をとったんだ。なのに、おれだけ悪役にしようとしてるのかな?おれがいま、《クソリミザ》のほうだから」
リミザは角をさわってみせる。
「わかってるじゃねえか。クソリミザ」
「うわ、ショックだなあ。ちょっと死んで生き返っただけなのに、なんかおれ、みんなにだんだん嫌われていってない?」
ガットの返事を待たずにリミザは足もとにころがるキエネをおもいきり片足でふみつけると、あごをうわむけ、ひたいに指をつけて、いつもののんきな声とはちがう声をだしはじめた。
「 きけ。 いまからショウカンをかける。 ―― キエネの中にいるおまえ、はやくテモモにわたってひとつになりたいだろう?そうすればすこしはマシなことができそうだもんなあ。 それならいまから、わたらせてやる」
とたんにガットはかかえたテモモから身をひいてしまう。
まるで、テモモが急に《魔族》になったような気配を感じ、反射的にからだがうごいてしまったのだが、それは半分当たっていた。テモモのからだはリミザの《黒魔術》で、宙に浮いていた。
「さあ、こっちに来い」
リミザが額につけていた指をテモモへむけている。
テモモのからだが吸い寄せられるようにリミザの足元へおろされ、リミザは立てた指をくるりとまわす。
とつぜん、普通の炎よりずっと赤く暗い色をした炎が、リミザを中心として大きな円をえがいてはしった。
あっと思ったときにはガットはそこからはじきとばされていて、はしった炎は円から縦へと上にのびだし、円の柵であるように何本も立つと、広い《炎の檻》ができあがった。
リミザが立てた指がまたまわり、よこたわっていたキエネとテモモのからだがうかぶと、リミザを真ん中に左右へとわかれ、柵のように立つ炎に背をおしつけて立たされた。
ふたりのくちから「ぎゃあっ」と同じ汚い声で悲鳴があがる。




