組分けで、現地集合
30.
「 やった! カテカが仲間にくわわった! 」
高らかな音楽が鳴り響きそうなリミザの宣言に、仲間たちは無反応だった。
本日、シードラゴンから無事に帰還しただけでもぐったりなのに、それをまたナオたちに報告して、その場でカテカを誘い入れたのはガットだ。みんなその場にいたのだから知っている。
「なんだよみんな、うれしいだろ?」
テーブルにつき、白いトカゲをとりかこんでいる仲間は、立ち上がったリミザを一瞬だけ見て、またイシシとのはなしを続けることにした。
「で?今日おれらを襲った『島ヘビ』と『シードラゴン』は、キエネのしわざじゃねえっていうのは確かなんだな?」
リミザのむかいでガットが横にすわる老人にきくのを、テーブルの上の白いトカゲがめんどくさそうに復唱する。
「ああ、ほんとうじゃ。そんなふうに『島ヘビ』の大きさをかえる術などわしらにはないし、キエネに渡ったヤツが術をつかったなら、すぐにわかる。 それと、シードラゴンを呼び寄せる術など、必要ないからこの国の術にはない」
「だよねえ~。あの『島ヘビ』につかわれたのって魔族の魔法術寄りだもん」なんかみたことあるんだよねえ・・・とリミザの横に座るラーラはテーブルに突っ伏した。
「まあ、じゃあ魔族のいたずらって考えた方が筋は通るな。シードラゴンは偶然か。でもそのおかげで、またナオたちに会う口実ができたからな」
シードラゴンに喰われたことを思い出したのか、ガットは目をとじて自分を納得させようとしている。
二日目の夜から《勇者一行》のところへ来ているイシシのおかげで、白いトカゲが島でききまわってきた話のほか、《ヂガミ》のほうのはなしもわかってきた。
《ヂガミ》たちは、キエネによって『イチの島』の奥にみんなあつめられ、ずっと見張られているという。《ヂガミ》であと残っているのは年寄りと子ども、女たちばかりが残っており、若い男で残っているのは、カテカとイニグだけだという。
《悪霊のストーカー》がここで躍起になるのも無理はねえなあ、とトカゲはわらった。
「《ヂガミ》たちがあつめられた家はキエネが術をかけた中にあって、すこしでも術をつかえばキエネに伝わる。ナオたちはテモモが閉じ込められたばかりのころは、術で話をすることができたらしいが、いまはそれもできぬだろう。わしたち《ウミ》はその家に近寄ることもできぬわ」
「キエネがいま《ヂガミ》たちになにもしないのは、わたしたち《外の者》がいるからですか?」
ラフィーが横に座るイシシをみながらトカゲをつつく。トカゲがまたその問いを復唱すると、年寄りはうなずいた。
「あんたらがいる間にほんとのところに気づかれて、外からもっと人がくれば、それこそ面倒なことになるからなあ。だが、きょうのことにはヤツも驚いたようで、それぞれの島の『ワニ』たちにも、なにかおかしなことはなかったか、ききまわったようだ」
「カテカも驚いてたもんなあ。ナオたちは『島ヘビ』を巨大化させたのがテモモじゃないのがわかって、ほっとしたようだけど」
リミザが首をかたむける。
「イシシによれば、ヂガミが話すことはすべてキエネにつつぬけだというんですから、カテカのほうからわたしたちに『戦えるのか』ときいてくれて助かりましたね。ガットがキエネの前ですんなりと誘うことができましたから。これで明日からカテカもいっしょに海に出られます。キエネとガットたちとは別の船にのって、筆談をしてみましょう」
ラフィーが安心したように仲間とうなずきあうのをみたイシシがトカゲをつつく。
「なんだよジジイ、ああ、あれか、 ―― つまり、明日からカテカがいっしょに海にでることについて、なにか問題があるんだな?」
トカゲがきくと、年寄りはおおきくうなずいた。
「 キエネが自分で仕掛けたのではないことで、今日のようなことが起こったとしたなら、焦りだすじゃろう。あんたらが《王様連盟》に報告するならなおさらだわ。これ以上《外の者》が来る前にことを片付けようとする。まずは、明日あんたらとでる海に、用心深く結界を張りなおすだろう。それにな、わしたちのあの船には十人は乗れるから、キエネが一艘でよいというだろう。カテカはほかの《ヂガミ》をキエネにおさえられてるようなもんじゃから、なにも言えぬだろうよ」
イシシは髭を残念そうにかいた。
「じゃあ、あれだ。やっぱり、海に潜る組と船に残る組でわけるしかないよね」
まだ立ったままだったリミザがおもいついたように指をたてるのに、仲間たちは冷たい目をおくる。
「そんでどーすんだよ?」
しかたなくガットがきく。
「今日、ガットがカテカを誘ったときに思ったんだけど、おれたち、カテカのこと疑ってるみたいな態度になってない?」
「はあ?おれたちが?」
「それあるかも。なんかカテカって、ナオたちとはちょっと一線ひいた感じ漂わせてるし、今日ガットがカテカを誘った態度も、『話しをしたい』ってより、『見張ってるからな』みたいな『圧』かんじたわ」
「はあ?おれかよ?」
ラーラの指摘にガットが自分をさす。
「 だからさ、明日の調査で、おれとラフィーとカテカで船に残ることにして、そんでそのままテモモのところに行けばいいんじゃないの?」
のんきにリミザが提案する。
「それは無理でしょう。イシシのはなしを聞いたでしょう?テモモはヂガミであるカテカと目を合わせたら、キエネの中にいる悪霊に《渡られて》しまうんですよ。テモモはその時点で死んで、のっとられたカテカは残りの《ヂガミ》、とくにイニグをめざすでしょうね」
それが当然だというようにラフィーが返す。
「あ、そっか。 ―― テモモとキエネをいっしょに葬るんだっけ?」
リミザが立てた指を額につけ、あごをうわむけた。「わすれてたよ。そうだよ、いっしょに退治しないとね。 それなら、やっぱり海にもぐるキエネと船にのこるカテカで分けないと。カテカはおれとラフィーで。キエネはラーラとガットで。 そんで、テモモがつかまってる『ニジュウサン』の島に集合ってことで」
二本そろえた指を額につけ、ウインクしてみせたリミザの腹に、ラーラの振り込んだ肘がくいこんだ。




