しっかりとむかいあえ
24.
「 リミザ! ―― カテカもいっしょか」
キエネが薄暗い中に現れた二人をみとめておおきく息をつき、「カテカ、おまえ、」といいかけるのを、リミザが片手をたててとめる。
「説教はあとでいいんじゃないの? とりあえず、はやくテモモに会いにいこうよ」
「カテカもいっしょにか?」
キエネがききかえすのに、もちろん、とリミザがうなずいた。
「だって、もしカテカが魔法術でなにかしようとしても、テモモとあんたがいれば、とめられるんだろ?なにしろ、船をしずめられるくらいだもんなあ」
「まあ、そうだが・・・」
「じゃあ早くいこうよ。あ、ラフィーはナオとイニグといっしょに、外で待ってるから」
「そうか、ここには来ないのか」
どこかほっとしたようにキエネがうなずき、また、あるきだしながらきいた。
「カテカよ、・・・どうして・・・、いや、『どうしようと』しているんだ?」
キエネの問いに、カテカはわらうような息をもらし、「おれにもわからん」とかえす。二人の会話はそこでおわってしまう。
誰もなにもしゃべらないまま奥へすすんでゆくと、ふいに、なにかぶつぶつとひくくつぶやく声がとどきだした。
進むにつれそのつぶやきがおおきくなり、なにかの節がついた祈りの言葉のようだとガットは気づいた。
「テモモよ、ひさしぶりだな」
キエネの声がひびき、祈りのつぶやきがやんだ。
歩いてきたところよりも数段明るいその空間で、この洞窟は行き止まりのようだった。
火のついた皿に丸くかこわれるように、年取った男があぐらをかきすわっている。
長くのびた白髪を頭の上にまきつけ、質素な着物でしっかりと背をのばしあぐらをかく男はキエネを睨むようにみかえすと、後ろに立つ者たちをにらみつけ、着物の中から取り出したなにかを投げつけようとして、キエネにそれをはじかれた。
「落ち着け、テモモ。この《外の国の者》たちは《王様連盟》がつかわした《勇者一行》だ。 おまえが沈めた船を、理由がわかったうえで、《海獣》の仕業だと報告してくれる。それのおかげでアチルゴの体面はたもつし、このさき外の国と交流するのにもいいきっかけになる。ナオやイニグのためにも、そうするのがいちばんいい」
「 だまれ!! っ、っこのっ、」
喉がつまったように、テモモのこめかみに血管がうかび、顔がどす黒いほどに赤くなる。
「なあテモモ、最後まできいてくれ。おまえが、おれたち《ウミ》にこの国の政にくちをはさまれたくないというのはわかっているが、おまえはもう歳をとりすぎている。この先のことを素直に、ここにいるカテカに頼めば、このさきも安心できる。そうだろう?」
キエネはガットたちをふりかえってからまたテモモをみた。
「この《勇者一行》は、おまえやカテカのことを心配してくれてここまで来たんだ。 さあ、カテカももっとこっちに来い。ここで《勇者一行》にたちあってもらって、おまえがこの国のことをカテカに任せると決めれば、《勇者一行》が考えてたことは、いろいろ勘違いだったとしてくれるはずだ。そうだろう?」
キエネはまたふりかえって《勇者一行》にきく。
カテカがひどくゆっくりとしたあしどりで、キエネのそばまで出てきた。
「カテカ、さあ、テモモの顔をしっかりとみろ。たしかにおまえはテモモをこんなところに閉じ込めたかもしれないが、謝ればテモモだって許してくれる。さあ、しっかりとむかいあうんだ」
うつむいたカテカの腕をキエネがひっぱると、カテカがよろけるようにテモモの前に膝をついた。
「さあ、ふたりとも、しっかり顔をあわせてお互いをゆるしあうんだ。そうすれば《勇者一行》もあんしんできる。さあ、カテカ、顔をあげてテモモの顔をみろ」
「 っく、」
さらに両手もついてうつむいたままのカテカは、こぼれそうな息と言葉をのみこむようにくちをとざす。
むかいにいるテモモは怒りをおさえたような赤い顔のまま前をみている。
「カテカ、強情をはらずに、さっさと顔をあげるんだ。」
カテカのそばに立ったキエネがいらだったようにカテカの髪をつかみ、顔をあげさせた。
「 はい。そこまでー。これで終了ー 」
テモモとカテカの間にからだをわりこませたリミザがのんきな声で宣言し、ガットがぬいた剣先が、キエネの肩にのせられていた。




