ニジュウサンの島
22.
今朝ガットたちがのって海へでた船がせまい砂浜に無残にちらばっているのを眼下にして森に突っ込みそうになったが、さすがにブレーキがかかって、上へと浮き上がってから、森の中にゆっくり着地した。ラーラの魔法術と手荒さに慣れていないキエネは胸をおさえながら大きく息をついている。
「リミザたちここにいるでしょ」
さいごにゆっくりとおりてきたラーラがむこうに建つ家をさす。
「ラーラ、おまえなあ、」
ガットが説教口調になったとき、あたりが揺れるような魔力が家の中からわきあがった。
「なんだ?」
ガットとラーラが家にむけて走り出す。うしろからきたキエネが「まさか、カテカがリミザたちになにかしたか?」と追い抜いてゆく。
「リミザ!ラフィー!」
キエネといしょに家についたガットが名をよぶが、人の気配もない。
「なんだよ、どういうことだ?さっき感じた魔力って、こっちの魔法術とあんたらの魔法術りょうほうだよなあ?リミザたちとカテカたちがやりあったってことか?」
「そうかもしれんが・・・」
あせったガットの問いかけにキエネは言葉をさがす。
「え!?それってまずいんじゃない?あの『砂の部屋』につれていかれたかもしれないってことでしょ?ほら、あれ、こう、ってことでしょ?」
ラーラが両手をパンとたたきあわせた。
「そうだが、いや、カテカはそんな・・・」
「ちょっと!なにのんきに突っ立ってるのよ?はやくカテカの『砂の部屋』にあたしたちをとばしてよ」
「いや、あの術に、カテカの許可なしにおれたちが『はいる』ことはできん。だいたい『砂の部屋』に連れて行ったのかどうかも・・・」
キエネもうなるような声で腕をくんだ。
「そうだよな。落ち着けよラーラ。 もしかしたらリミザの説得に折れて、カテカたちといっしょにテモモのところに行ってるのかもしれねえだろ」
「あ、そっか。そうだよね。そのためにこの『ニジュウサンの島』にいるんだし」
うなずきあうガットとラーラを、キエネは不思議そうにみながらきいた。
「 ―― おまえたち、どうしてテモモがこの『ニジュウサンの島』にいるのがわかったんだ?」
「そりゃあ、キエネだっていったじゃない。『テモモぐらいの魔力がある人間』なら、あたしだって居場所くらいかんじとれるわ」
ラーラが眉をあげるようにキエネをみかえす。
「・・・そうか。やはり外の者の《魔法術》は、たいしたものだな・・・」
「とにかくおれたちもはやくテモモのところに行こうぜ。ラーラだってこの島のどこにいるのかまでは、わからねえだろ?キエネ、案内してくれ」
ガットはラーラにとりだしてもらった戦士の剣を、腰にもどした。
キエネはそれを不安そうに眺めた。
「いそごうぜ。カテカが変なことを考えないうちに」
「『変なこと』?」
「《クソリミザ》がいっしょだからな。テモモがいなくなったほうがこの国のためになるとかいって、カテカをあおってるかもしれねえ。そういうのをとめるために剣をさげていく」
重い剣を腰にとどめておくベルトをたたき、ガットはキエネの背をたたいた。




