このあとどうするか
21.
「ちょっとまてよ!どういうことなんだよ!」
「落ち着いて、イニグ」
イニグが泣きそうな声でわめき、ナオが袖をひく。
「だって!だって、こいつら、外の国の人間だ!おまえたちになにがわかるんだよ!」
落ち着くどころじゃないイニグは、むかいあったラフィーの肩を押し、リミザに指をつきつけた。
「まあまあ、そりゃ突然カテカの術でテモモのいる島によばれちゃったんだから、驚くのも無理ないけどさあ。ここらで一回、国王のテモモとも会っておかないと。そっちだって決まり悪いだろ?ほら、おれたちもいちおう、《王様連盟》から派遣されてるわけだしさあ、しかも、この国の事情をくみとって、船が沈んだ真相もだまっててあげることにしただろ?」
「だからって、なんで!なんでおれたちまでよんだんだよ!」
「えー?だって、どうせならそろってがいいだろ?テモモだって、孫たちがいっしょにいたほうが安心だろうしさあ」
リミザがなげた船が着いた島にあった《ヂガミ》の家は、いままでみた家と同じ造りであったが、広さはまったくちがい、椅子もおいていなかった。
そこに《ヂガミ》二人と《勇者一行》の二人は立ったままむかいあっている。
「どっ、っどっ、」
「イニグ、落ち着いて」
ナオがリミザに寄りすぎたイニグの腕をひくと、じぶんが前に出て首をかしげリミザにほほえみかける。
「なんか~、《勇者一行》って、ただ依頼されたものを退治してくだけじゃないのー?」
「 まあ、だいたいはそうなんだけどさあ、おれたちってなんだかその国の秘密っていうか、問題っていうか、そういうとこにかかわっちゃうことが多くてさあ」
リミザは同意を得ようとラフィーに目をむけたが、つめたい目をかえされる。
「ただ単に巻き込まれてるだけです。 ですが、 ―― まあ、ガットがああいう性格というのもありますし、わたしたちがここで何もせずに帰ってしまってから、この国が諸外国とうまくやっていけなくなるのを知るのは後味が悪いですからね」
ラフィーがイニグに押された肩をはらうようなしぐさをしながら、ナオとイニグに言う。
カテカはむかいあう二組をながめるように、はなれたところであぐらをかいていた。
リミザによってぶんなげられた船はみごとに『ニジュウサンの島』のせまい砂浜へ落ち、すんぜんで術によって自分とラフィーをとばしていなかったら、船といっしょに砕け散っていたかもしれないとカテカは冷や汗が出た。
リミザは《勇者》というだけあって、ちょっと普通ではないところがあるようだ。
こんなふうにほんとうにテモモのところに来ることになるとは思ってもいなかった。
どうする?
ナオとイニグもよぶようにいわれ、従ったが、よかったのか?
勝手によばれたイニグとナオは、この島にリミザたちがいることに驚き、カテカをみた。
カテカはなにもいわずにおいた。
すると、イニグが泣きそうな顔でどなりだしたのだ。
まあ、当然だろう。なにしろイニグはこわがりでいつもすぐにわめきだす。
「 ―― こいつらは、おれがテモモを殺しておいて、この国の実権をにぎってるんじゃないかって疑ってるんだ」
カテカはしかたなく、ここにこうして集まっている理由を教えてやった。
「うえっ!?どっ、どうして、 」
イニグがまだなにか続けようとしたが、ナオに腕をひかれてあわててくちをとじた。
「きいてもいいですか」とラフィーがカテカにめをむける。
「ナオとイニグは、あなたにさからえずにいうことをきいている状態ですか?」
「だから、どうしてそう思うんだよ?」
イニグがラフィーをにらむ。
「あ、それはおれが説明すんね。 ガットとラフィーはさ、カテカがあの『砂の部屋』ごと人をつぶせるっていうのをキエネからきいてるわけ。そんで、《ヂガミ》のなかでいちばん魔力があるのが、カテカなんじゃないかって思ってて、実は船を沈めたのもカテカで、テモモはもうこの世にいないんじゃないかって考えたんだよ。ナオとイニグはカテカに脅されて従ってるか、または、この国の今後の発展を願って協力してるか、っていう意見なんだけど、どうかなあ? あ、ラーラはまたちょっと違った意見で、自分でうまくコントロールできてないけど、いちばん魔力があるのはイニグだから、ナオとカテカがいっしょになってイニグを利用してるんじゃないかってさ。すごい悪い顔して、きっと三人でとっくにテモモを始末してるはずだって言ってたけど、これもどうかなあ、っておれは思ってるけどね~」
「ばか!テモモは生きてるって!なんでそうなるんだよ?」
イニグは足をふみならしさけんだ。
「それならはなしは早いです。わたしたちをテモモに会わせてくれれば、この誤解は解けますから」
ラフィーはずっとカテカだけをみている。
「おまえら、・・・ほんとにどうしてそこまでかかわろうとするんだ? たとえおれがテモモを殺してこの国の実権をにぎろうとしても、外の国のおまえたちにはなんの関係もないだろう?おまえたちはただこっちの希望通り《退治依頼》だけ受けてりゃよかったんだ。マイナスポイントだろうとなんだろうと、『退治する海獣はいなかった』って報告だけして、さっさと帰ればすんだはずだ」
カテカはラフィーの視線に耐えられずに目をとじた。
「そーなんだよお。おれもそう思ったんだけど、船が沈んだ事実がわかっちゃったこともあるし、なによりこのアチルゴ国が《王様連盟》に加入して、いちばんはじめに依頼をうけた《勇者一行》として、いい仕事として仕上げたいっていうか、心残りがないようにっていうか、 ―― このつぎ、この国にこられるかどうかわからないしね」
リミザののんきな笑顔が、さいごだけ顎を上向けたあざけるようなものになる。
指を一本たてて額につけてから、空をさす。
「 どうする? 早くしないとあとの三人がここに来るよ。 ―― このあとどうするか、きまった?」
目をあけたカテカが立ち上がり、ナオがイニグの腕をつかんだ。
「 ああ。 ―― 決まった 」
カテカが両手をすりあわせ、ラフィーとリミザの顔をみて、両手をひらいた。




