直接ききに
20.
「リミザ!どうした!?」
「カテカ!どこだ!」
「ふね!ふねどこ!?」
海の中にまで大きな魔力が伝わり、もぐっていた三人はあわてて浮き上がり、あたりをみまわした。
「くっそ。あいつ、船ごと移動させやがったな」
ガットが片手で顔をぬぐい、空をみあげた。
「なんだ?船ごと先に帰ったってことか?」
キエネがすこし安心したように息をつく。
「ちがうわ。きっとカテカをせかして、テモモに会いに行くことにしたのよ」
ラーラの予想に、「テモモに!?」とキエネがおどろく。
「なんでいきなりテモモに会いにいく?テモモは具合がわるいとナオが言っていただろう?」
「そこなんだがな、キエネ、それって本当か?」
ガットの疑いをふくんだ問いに、キエネはひらきかけたくちをとじた。
「ねえ、さきに海からあがらない?」ラーラが、真っ先に自分の魔法でうかびあがり、近くの浜へあがった。ガットとキエネは泳いで浜へつく。
「 ・・・疑っているんだな?」
ラーラが魔法術でとりもどしてくれた服を着ながら、キエネがつぶやいた。
「当然でしょ」
ラーラは髪をほどくと杖をとりだし、自分の魔法で浮かび上がった。
「 いくら体調が悪くても、《王様連盟》から派遣されてきた《勇者一行》に顔をみせるぐらいはできるでしょ。 それに、ほかの《ヂガミ》たちにもこのごろ誰も会ってないなんてあやしすぎるわ。ナオとイニグしか『王様』であるテモモの状況を確認できないなんて、外の国だったらまっさきに生死を疑われる状況よ」
杖を肩にかけて空中であぐらをかき、両手をひろげてみせる。
「まさか!おまえたち、テモモが死んでるとでも思ってるのか? それはないだろう。テモモほどの力があるものが亡くなれば、おれたちはわかる」
そう言っているキエネが突然、後ろ首をつかまれたような姿勢で浜から浮きあがったのは、ラーラの魔法術でひきあげられたからだろう。
「だけど、あんただってテモモに会ってないんだろ?死んでなくても、たとえば、自分の意志ではどこにも出られねえ状態だったらどうなんだ?そういうのもわかるのか?」
おなじように浜から浮きあがったガットは、慣れている分、ラーラの魔法で『つかまれる場所』を後ろ首から片腕へと、じぶんで調整した。
「そ、そんなわけはない。ナオもイニグもテモモの孫だぞ?」
「じゃあ、カテカは?遠縁なんだよな?」
「そ、そうだが、」
「『力』がすごく強かったから、テモモに引き取られたんだろ?それなのに、扱いは《ヂガミ》じゃないだろ?」
「それは・・・、だが、『いりぐちの島』の番をまかされている」
「ああ。都合のわるい人間を始末する兵士としてな」
「・・・・・・」
キエネが返す言葉をさがしていると、「リミザたち、ついたみたい」とラーラが立ち上がってむこうまで続く島のつらなりをさした。
「やっぱり、テモモは『イチの島』にはいないのね。あっちにあるのは二十番台の島々ってこと?」
さきほどリミザ船をなげた方向をさす。
「・・・ほんとうに、テモモに会いにいくのか?」
キエネが眉をさげ、ガットとラーラを見比べる。
「なあ、キエネ、おれたちはこの国の内情に首をつっこむつもりはねえんだが、あんたらがこの先《外の国》とわたりあっていくつもりなら、まずは国の中をととのえねえと、どうにもならないぜ。問題をかかえてるなら、はやいとこ片付けた方がいい。《退治依頼》をうけたおれたちなら、すぐにこの国をでていくし、あとくされもねえだろ?どうだ?いまのうちにこの国のほんとうのところをおれたちに教えてくれ。この国をいま実質的におさえてるのは、テモモじゃなく、カテカなんだろ?」
ガットのいたわるようなききかたにキエネはなんどもくちをあけしめして、うなだれるようにしていった。
「・・・それは・・・。おれには、なにも言えん・・・」
「 じゃあ、とりあえずテモモに会って直接聞いてみようよ 」
いきなり、ラーラが立てた指をまわし、ここでつかえる魔法術を解析して新しくつくった『人をなんの保護もなく持ちあげてただブン投げる』という魔法で、もちあげていたガットとキエネを、めざす島の方向へブンなげた。
あらがう暇もなく、むこうの島をめざして高速移動中のガットは、このごろラーラの荒っぽい性格に、リミザののんきすぎるところが混ざってきていてさらに危険度がましているのを身体で感じ、こんどの《反省会》でぜったい議題にあげようと、かたくこころに誓っていた。




