調べに海へ
14.
昨日は一日、キエネによってアチルゴの島々を次々と移動させられ、『ニジュウの島』までを案内された《勇者一行》は、本日すこし疲れ気味だった。
アチルゴの島々は、島同士を吊り橋でつないだり、すぐ隣の島まで泳いでもわたれる距離にあるというものがほとんどだったが、『イチの島』から『ゴの島』と、『ニジュウの島』からあとの島は、小舟で行き来しないとならないほど離れていて、船が沈んでいるのも、もちろんそちらだ。
『小舟』といっても《ウミ》たちがハバーツ王国まで商売しにゆくその『小舟』は、《勇者一行》がのってもじゅうぶん余裕のある大きさで、安定感もある。船を漕ぐのを手伝おうと申し出たガットはわらって断わられ、ゆっくりとすぎる景色とのどかな揺れに癒されているところだった。
「 やっぱ、『イチの島』から、『えらい』わけ?」
ラフィーにもらった酔い止めの薬のおかげで、いまのところ小舟の上でも元気なリミザがひとりで櫂をあやつるキエネにきく。
「『えらい』?・・・まあ、そういうことになるか・・・。 ようは『力』の強いものから順に『イチの島』からもらってゆくからな」
ひとり立ったままでずっと漕いでいるキエネは、櫂をうごかす手をとめて考えるように眉をよせた。
きょうは沈んだ船を見に行くにはちょうどいい、と朝飯のときにキエネが言った通り、風もなく海はおだやかだった。空も晴れ、水はどこまでも澄んでいて『イチの島』の砂浜からでたばかりのときは海の底までみえるほどだったが、さすがにここまでくると深さがあって、いまはもう見えない。
海鳥が、いちばん近い『サンの島』の崖にたくさんの巣をつくり、そこから順番のように海へむかってとびこんで、巣にもちかえる魚をねらっている。
船が目指しているのは、テモモが船を沈めた、『シの島』と『ゴの島』の間だった。
なにしろ書類を出すことになるだろうから、ちゃんと調べることが大事だというのがガットの主張で、ラフィーとラーラも同意した。
リミザだけがまだ、観光気分であくびをし、船が沈んだという海に片手をひたしながら質問を続ける。
「 ってことは、やっぱテモモがいちばん強いから王様なんだ」
「いや、家系だろ。大昔に決まった家の格がそのままなんじゃねえのか?もう実際には『力』くらべなんてやってねえだろ」
わりこんだガットは、だろ?というようにキエネに片眉をあげてみせた。
「・・・まあ、テモモの家系が強いのは本当だ。 が、たしかに・・・実際の『力』くらべは、もうしない・・・。神事として、かたちだけやることになってるが・・・、それは、テモモの一族が勝つことになってる」
「それって、すでに『儀式』ですよね。決まった型をとりおこなっているだけだ」
ラフィーが冷めた声でキエネをみあげた。
「あ~、その『力くらべ』生で見たかったわ~」
ラーラはそれを想像するようにうっとりと目をとじた。
「えー、でもそれってさあっ、」なにかをいいかけたリミザのくちをガットがふさいだ。
キエネも櫂をひきあげ、立ったまま進行方向の左手の、ひらけた海をみている。
船に一列にのった一行も、リミザをのぞいてみんな、同じ方向の海をみた。
「 ・・・ラーラ、いけそうか?」
ごく小さな声をガットがだす。
ラーラが海をみたままうなずいたとき、もったりと、その海面がもりあがった。
「とべっ!!リミザっ!」
ガットがさけんだとき、もりあがり立ち上がった海水がおそいかかり、船はバランスをくずして真縦になった。




