『ヂガミとウミの話し合い』
13.
「はじめましてエ。ぼくが、ナオの従妹のイニグですう」
《勇者一行》にあいさつしたのは、色が白く堂々としたからだつきの若者だった。だが、声はききとりにくく、息がぬけてゆくようなしゃべり方をする。
「えっとお、いまアチルゴの国王の代わりをしてるのがぼくですぅ。えっと、船が・・・、あ、もう《ワニ》からきいてるんですよね?そうなんですよぉ。じいちゃんが困った事してくれて、それをどうにかごまかさないといけないことになっちゃってぇ・・・」
大きなからだを編み椅子の上でもぞもぞと動かしながら、ちらちらとナオのほうをみながら話す。ナオより年が下だろう。へたしたらまだ十代かもしれない。
ガットはこの色白の若者が、自分の意志を持っているのか少々不安になりながら、むかいあっていた。左隣の椅子にすわるラフィーが、困ったような目をむけてくる。右側に座るラーラは値踏みするように眉をひそめ、そのむこうにいるリミザが、「たいへんだねえ」とのんきに返すのをひとにらみしてやる。
「そうなのよ、リミザ、つまりあたしたち、まずいことになってるの。もう《王様連盟》には入っちゃってたし、これから国をひらいて、いろいろ交流しようってところで、ちょっとねエ。 ―― で、みんなではなしあった結果、沈んだ船の船長も《魔獣》のせいだとおもってるみたいだから、それに乗っかろうってことになったわけ」
ナオが、いかにも『困ってます』的な顔をして、《勇者一行》にうなずいた。
「その『みんなで』ってとこに、キエネたち《ウミ》もはいってんの?」
リミザがきくと、ナオはさらに『困ってます』の顔をした。
「それが~、『ワニ』には決まってから伝えたけど、なんかキエネは怒っちゃって」
「つまり、話し合いにキエネたちは入ってなかったってことだな」
ガットが聞き返すと、ナオは『困ってます』顔のまま、ただ肩をすくめた。
『イチの島』のなかで一番大きいという家にキエネにつれてこられ、そこで待っていた床に座るたくさんの《ウミ》たちの間をぬけ、部屋の奥で待っていた三人の若い《ヂガミ》とむかいあうかたちで、《勇者一行》は椅子にすわっている。
アチルゴ国を代表したイニグとナオは椅子にすわっているが、カテカはその後ろに立っていた。
《勇者一行》のうしろにキエネを先頭にして座った《ウミ》たちは、若い男と女だけで、『イチの島』をぬいた残りの23の島で《ウミ》たちをまとめる、各島の『ワニ』だと紹介された。キエネまではいかずともみな身体つきが大きく、魔力も大きいのがわかる。
だが、どの《ワニ》もくちをひきむすび、こわばった表情をうつむけたままで、《ヂガミ》と《勇者一行》のやりとりに、だれもくちをだしそうもない。
ながいながい閉鎖の中でできあがった、アチルゴ国特有の《ヂガミ》と《ウミ》との関係を目の当たりにしたようで、ガットはみじかい髭をつまみながら、もどかしいような、じれったいような気分になる。
「 なあ、ガットが怒ってもしかたないだろ?この国はずっとこういうふうにやってきたんだからさ。それより、この先のこと、ここで話し合っておいたほうがいいんじゃないの?」
身を寄せて小声でつたえてきた《まともなリミザ》といると、こいつが『死んでいる』ということを忘れそうになる。
ラフィーとラーラもこちらをみてうなずくので、しかたなくくちをひらく。
「 ・・・船が沈んだほんとうの理由も、キエネからきいた。この《退治依頼》は出されるべきじゃなかったし、断りたいとこだが、どうやらもう、おれたちは勝手に島の外にはでられねえようだし、この国の事情もだいたい聞いたし・・・、すすんでってわけじゃねえが、協力はする」
「ありがと!そういってくれるとおもってた」
ナオが椅子でとびはねるように腰をうかせた。
「ああ、ナオの言った通りになってよかったよぉ」
イニグが力をぬいてナオにわらいかけるが、無視される。
「ただし、条件がある」
ガットがつづけた言葉に、イニグは眉をさげてカテカをふりかえった。




