協力するよ
「なるほど。 で?退治に来た《勇者一行》に、いるわけもない船を撃沈した《海の魔獣》をさがさせようって考えたのか?」
「まあ、たしかに、その《勇者一行》が退治対象をみつけられなかったのを《王様連盟》に『報告』すれば、船の沈没はうやむやで終わるでしょう。 ―― が、そのパーティーには、マイナスポイントがつけられますね」
「 ああ、だからそれをきいて、おれはイニグに《依頼》はやめろといったんだ。だがあいつはテモモに似ていておれたちのはなしをきかない。ナオはテモモの意見をきくのがこの国のためだと思ってる。テモモはこのごろずっと具合が悪くておれも会えないほどなんだ・・・ ―― そういうわけで、おまえたちにはすまないが、ここはあきらめてナオに協力してやってくれ」キエネは頭をさげる。
「うん。わかったよ」
いきなりリミザがのんきに承諾した。
「なんだよ~、みんな、そんな顔したって、しかたないって思っただろ? おれたちはこの島から勝手に出られないってナオが言ってたし、頼れるのがおれたちしかいない、ってわけだし、本当のことがばれたら、《王様連盟》からなにか罰をくらうだろ?せっかくやっと開国したっていうのに、かわいそうだよ。これがきっかけでまた外の国との交流をやめることになっても、ガットはいいわけ?」
「いや。・・・まあ、・・・たしかにそうだが・・・」
ガットは根がまじめで情にもろい。
「祈りをささげる《神》もちがうし、歴史がおれたちとはちがうってことはわかってるんだから、あいてのことをすすんでわかろうとしないとダメってことだろ。なんだっけ?理解できないあいてにいらだつより憐れみのこころをもってナントカって、教会の説教とかにもでてくるよね、ラフィー?」
「それは・・・、たしかに、寛容さをもつようにという教えはありますが・・・」
ラフィーは司祭の職にあることを思い出させられると、眉間のしわを緩めなければならない。
「あ、ラーラはただ自分の興味優先で『協力』するよね」
「なんか言い方がムカつくけど、まあ、いいわ。 そうね。たしかに島から出られないし、『協力』するしかないとおもう」
ラーラはリミザの頬肉をつまみひきあげた。
キエネがあぐらをかく膝をたたきながら嬉しそうになんどもうなずく。
「よかった、おまえたちならそういってくれそうな気がしたんだ。『いりぐちの島』から『砂の部屋』を無事に通ったのがわかって、おれはほっとしたさ」
「そういやあ、あそこで島にいれていいかどうか決めるみたいなこといってたな」
ガットはあの部屋にいたときの落ち着かない感覚をおもいだしながらつぶやいた。
キエネがもういちど膝をたたく。
「ああ、あの『砂の部屋』はな、いれたらいけないモンが来た時の用心のために《ヂガミ》の《術》でつくられてる。やってきた《勇者一行》がもっと頼りなかったら、あそこで帰したかもしれんが、ナオもカテカもおまえたちが頼りになると見抜いたんだな」
「そうか。その『いれたらいけないモン』ってのが、けっきょく《ヂガミ》たちに呪いの病気をもってきた外の人間ってことなのかあ。じゃあ、まだその呪いの病気をもったやつがここにくると思って用心してるわけ?ずいぶん用心深いんだなあ」
リミザが感心というよりどこかばかにしたように顎をあげた。
「テモモがそうしたいのだから、仕方がないさ。おれもすこし用心しすぎだとは、おもうがな。 ―― なにしろあの『砂の部屋』で、この島に入る《外からの人間》を判断しようと決めたのは、砂の中にあるあの部屋なら、部屋ごと『いれたらいけないモン』をつぶせるからだ」
「「「「 『部屋ごと』? 」」」」
「ああ、こう、ぎゅっとな」
パン、とうちあわせた手を、『ぎゅっと』ひねったキエネを、身を寄せ合った《勇者一行》は情けない顔で見つめるしかなかった。




