うつる?
11.
「・・・うつる・・・のか?」
ガットはあせってキエネからラーラに視線をうつした。
「ナオに会ったときには、そんな《感じ》うけなかったけど」
《魔法族》は、人間のからだの変調に敏感だ。よくない感染力のある病気を持った者はひとめで見抜ける。
「その病って、まだ 現れているってことですか?それでまだ対策がないと?」
ラフィーはあきれるを越して、いらだったようだ。
「え?え?じゃあ、おれたちうつったかも?」
リミザが両手で頭、顔、腹、となぜか順におさえる。
キエネはいたずらが成功したようにわらい、ゆびさした手をふった。
「 いや。うつらない。いまはもう、あんたたち外の人間にもうつらねえのはわかった。テモモが『祈祷』して、はっきりしたんだ」
キエネのこたえに《勇者一行》は「「「「キトオ?」」」」と声をそろえて首をひねった。
「『祈祷』っていうのは、島の神である本物の《ヂガミ》の力をかりて行う儀式だ」
「それは、わたしたちが神に祈るのとおなじ儀式ですね」
ラフィーが納得いったようにうなずく。
「つまりそれって、病の原因はわからないから、島を護っていてくれる神さまに、ついでに人間もまもってほしいって、お願いしただけってこと?」
リミザがあごをあげて目を細め、意地の悪いききかたをする。
「そうだ。それで《ヂガミ》の病はおさまった」
「ほんと~?」
疑いのまなざしをリミザはむける。
「おれたち《ウミ》は、ずっと《祈祷》したほうがいいと《ヂガミ》たちに言っていたんだ。《ウミ》の年寄りたちが、あの病は言い伝えできいたことがある《禁術》かもしれないと言っていたいたからな」
「《禁術》って、ナオが『ハンゴン』とかいってた《黒魔術》のことでしょ?生き返らせる魔法術じゃないの?」
ラーラの問いにキエネは首をふってみせた。
「《禁術》はいろいろあったらしい。むかしばなしだから、本当かどうかはあやしいが、おれたちの先祖はその《禁術》が発端の戦いから逃れて、ここまで来たっていうんだ。いまのおれたちは《禁術》なんて知らないし、もちろんつかえるものなんていない」
「でも、ナオがリミザのこと・・・」ラーラがリミザをゆびさす。
「 ナオがあんなふうに『ハンゴン』なんて言葉をわざわざだしたのは、単に、アチルゴの《術》の自慢をあんたらにしたかったからだろう。ナオとイグニは外の国でいろいろな《魔法術》をみてきて、ここでの《術》とのあまりの違いに呆然としてもどってきたからな。自分たちの《術》は、この島と海でしか役にたたないってのに、ようやく気付いたんだろうが、外からきたあんたらがこっちの《術》に驚くのに、気をよくしたんだ」
「 なんというか・・・」
ガットはみじかい髭をつまみ、くちごもる。
「つまり、《ヂガミ》がかかってた病気って、病気じゃなくて、《黒魔術》だったわけ?」
ラーラがすこし理解できないようにラフィーをみる。
「それはつまり、・・・こちらでいう『呪い』という使い方ですよね?でも、その《禁術》をつかえる人は島にいないはずだ、と?おかしくないですか?」
ラフィーも困ったようにラーラをみかえした。
「そうだ。そのおかしいことが起こったんで、それは、おれたち《ウミ》のせいだとテモモたち《ヂガミ》は思ってるらしい」
キエネがわらうように息をこぼす。




