つきささって
「 ああ、あの大きな船がな、真ん中から分かれたようになっていた。 おれたちの船にのせられるだけ人間をすくいあげて、島へうつした。女たちに世話をさせ、男たちはもういちど船で出て、残っている人間と、あげられそうな荷をさがしてあつめた。 ・・・どういうことで沈んだのかはすぐにわかった。誰かが『結界』をはがし、そこへはいってきた船の、帆をはるための大柱に、上から、『力』をかけたんだ」
眉をよせたキエネはなにかに耐えるように目をとじた。
「『誰か』って・・・見当はついてるのか?」
「う~、術式が気になってしょうがないけど、帆柱をつかって船をしずめるって、そうとう無理よ。ムリ」
「そうですね。先に船底に穴があいたとかじゃないですか?」
眉をよせた《勇者一行》の三人とも、荷を運ぶ大型船を上から押して沈めるなど話しにならないと考えたが、「なんかわかっちゃった」とリミザの明るい声がひびく。
「 ―― はじめっから『力』をくわえる柱を一本決めておいて、それを、『釘』みたいなイメージで上からいっきにたたけば、いけそうな気がする」
正座したリミザが楽しそうににぎってみせた拳を、仲間三人の強い視線が下におろさせる。
だが、キエネがそれに膝をうってみせた。
「それだ。 おまえたちの《勇者》はおれたちの『力』のかけぐあいをあらわすのがうまいな。『釘』をたたくか。それで、押された柱が船底をつきやぶったんだろう。一本が海の底につきささっていた」
「「「 つきささってた!? 」」」
「おれも、やってできないことはないが、そんなことはしない。というか、おれたち《ウミ》がそんなことするわけもない。ほかの島の『ワニ』にもきいたが、だれもどこも、おかしいことはしていなかった。だとしたら、―― 」
「やったのは《ヂガミ》のほうってわけか」
「こんなこと聞く前にナオに術式ききたかったー!!」
「ですが、どうしてナオがそんなことをするんです?」
「やったのは、ナオじゃない」
キエネが即答し、「・・・手伝ったかもしれないが・・・」と小声でつけたす。
「じゃあ、もうひとりのイニグってやつか?」
ガットが鼻にしわをよせる。
「まずいじゃないですか。そのひと次の王様ですよね?」
ラフィーがくちをあける。
「 ちょっとまって 」
ラーラがのばした片手を立てた。
「 ・・・術式とかはちがっても、術の『こなし方』は基本おんなじだとしたら・・・そんなエグいことするのって、あたしたち《魔法使い》だとしたら、うちのおじいさまたちの世代だわ」
ためすようにキエネを見つめる。
「はあ?年寄りだっていいたいのか?・・・いや、そりゃ・・・」
ガットが信じられないようにラフィーに目をおくる。
「そうですね・・・。ガットが使う《魔法術》は体術とあわせたものが多いのでわかりにくいと思いますが、ラーラの見解はあたっているとおもいます。 老司教であればあるほど、《魔力》がつよく破壊力がある《魔法術》をつかえます」
ラフィーがなにか嫌なことをおもいだしたように額に手をあてる。
「 そういうことよ。 《魔法術》って、術式をみんな自分用に微調整しながらつかっていくんだから、さいごのほうになれば完全に自分用の《魔法術》ができあがるわけ。 さっきリミザが言ったみたいに、《一点だけポイントをきめて一気に》なんて、おてのものよ。 ―― テモモなんでしょ?船をしずめたのは」
むきあったキエネはラーラがむけてくる指先を見ていられないかのように下をむき、息を吐くようにゆっくりとうなずいた。




