真ん中
9.
「くそ。おい、どうして《退治依頼》なんてしやがったんだ」
「そーよ。だまってればよかったのに」
「《王様連盟》への虚偽申告は、問題になりますよ」
どうやら完全にこの国の秘密をにぎってしまった三人は、よけいなことを『あてた』リミザを隅に正座させ動くなと命じ、キエネにつめよった。
「 わかってる。・・・おれだって、反対したさ。だけど、ナオたちがゆずらなかった・・・」
背をまるめた大きな男はしかたないというように両手をひろげた。
「『国ぐるみ』で船を沈めたことをかくそうってのか?」
ガットはいま入っている《膜》の強度もわからないまま、拳を砂地にうちこんだ。やわらかい感触しかもどってこなくて、よけいにいらつく。
「船にのっていた人間はみな助けた」
「そんなの、とうぜんでしょ」ラーラが冷たい目をかえす。
「沈んだ船にのっていた彼らも、『海の魔獣』にやられたと思っている」
「それを利用しようってことですか」ラフィーがあきれたように目をとじる。
「あの~」
と小声で手をあげたリミザが、仲間からいっせいにきびしい視線をうけるが、いつものごとくそんなものにはひるまない。「いや、提案なんだけど、ここでキエネをせめたってしかたないだろ?《王様連盟》に依頼をだしたのは《ヂガミ》っていう王族のほうなんだろうし、キエネはそれに反対してたほうなんだしさ。だからとにかく、どうして船を沈めちゃったのか、理由をちゃんときいたほうがいいんじゃないかなあ」
「・・・やっぱり《前のリミザ》はまともだな」
ガットがあらためて《勇者》をながめる。
「そうだよね、うんうん、リミザはこうでなくちゃ」
ラーラは頬に手をあて深くうなずく。
「たしかに。そこから聞いてみないと、状況もつかめませんからね」
ラフィーも法衣の襟をなおしてうなずいた。
おちついた三人もキエネからはなれてすわりなおした。リミザも正座のままにじりよる。
キエネは、むかいあった《勇者一行》の顔をあらためてみて、「すまん」と謝ってから話しをはじめた。
「 ―― 船が沈んだのは、おれたち《ウミ》が農作業をしてるときだった。むかしは何人かの《ウミ》が常に交代で海をみわたせる岬で見張りもしていたが、もう何十年も『術』に頼りっきりでな。さっきもいったが、島のまわりにかけてある『術』で、なにかがあればおれたちはすぐに気づく。だからその日も、いつもと同じようにみんな畑にいた」
すると突然、空がゆれるような音がひびくのと同時に、その『力』が伝わった。
「 ―― すぐに、みんなを集めていくつか船をだし、異変があった海を見に行った。島のそちら側は大きな船がよく通るところでな。おれたちは『術』で島も見えなくしているし、なにより『結界』でよけいなものをはいれないようしてある。 ―― それなのに・・・」
その結界の中にはいった船が、《真ん中》からゆっくりと沈んでゆくところだった。
「『真ん中』?」想像がつかないリミザが首をかしげる。




