ハンゴン?
解放された手をふって手首をなでるリミザが立ったまま、むかいにいるアチルゴ国の二人をみた。
「 ―― つまり、この国が最近まで《王様連盟》にもはいらないで、《外の国》との交流をもたなかったのって、この国の《魔法術》を外にだしたくないから?」
こどものように細い首をかしげてみせる。これは《クソ勇者》になるまえのリミザがよくするしぐさだった。
「 まあ、それもあるかな。 ねえ、それより、リミザって、なんだかときどき性格変わるよねえ。もしかして『ハンゴン』で生きかえったりした?」
ナオがリミザをゆびさした。
「なんだ?『ハンゴン』って」
ガットが仲間と顔をみあわせてききかえす。
「島の年寄りたちに、はなしだけ伝わってる《魔法術》で、死んだものを生き返らせることができたんだって。 だけど、生き返った人は性格がぜんぜん変わって別人みたいになちゃったんだって。あ、これも、なにかに書かれて残ってるわけじゃないけどね」
「実際にあったのかわからん《禁術》だ。それに、『ハンゴン』をつかえたのは、えらばれた者だけだったっていうしな」
『ワニ』の男がつけたすと、ナオがなにかいいたそうに眉をうごかした。
《勇者一行》は顔をみあわせとまどった。
「 ・・・いや、リミザは、だれかがなにかしたから生き返ったんじゃねえしなあ」
ガットはひげをなでた。
「その『ハンゴン』って、こっちでいう『黒魔術』のことね」
ラーラは膝をたてて椅子にすわりなおす。
「《蘇りの秘術》では性格も記憶もそのままですからね。《蘇生の魔法術》はこちらのほうが研究しつくしているでしょう。うちの《勇者》のばあい、・・・そのー、生き返ったことによって、もうひとつの人格がつくられてきているというか・・・」
ラフィーが言葉をにごして仲間をみる。
ラーラが先にカテカにした簡単な説明は、いちおうは正しい。
だが、勝手に生き返ったリミザにラフィーがかけた『リビングデッド』の《黒魔術》が、いま現在、どこまで有効なのかがはっきりしないのは伝えなかった。
なにしろ、本来の『リビングデッド』は、かけた者とかけられた者が主従の関係になるのに、リミザはもう、ラフィーの指示などきかずに勝手に行動できる。
しかも、(ふだん隠してはいるが)頭には角がはえ、背中には黒い翼もあり、《魔族》の気配をまきちらしながら、すさまじい威力の魔術をつかい、ここの前に《王様連盟》からうけた『白銀のドラゴン退治』を片付けてきたのだ。
それでも、いまのところは、しりあったころから年齢詐称疑惑ののこる十代半ばにしかみえないみかけで、超虚弱体質で、のんきな顔としゃべりかたで、ゆるく《勇者》をつとめるリミザにかわりはなく、そこにときどき、『リビングデッド』になってからでてくるようになった《新しいリミザ》としての、ひとをばかにしたような笑顔をうかべ、あごをあげながらやたらにゆび先を顔のどこかにつけポーズをとる、腹のたつ《クソ勇者》が出てくるようになっただけだ。
いまのところは。




