まとめ
7.
「 ―― ってわけで、この国の昔話を簡単にまとめてみましたー。 わかった?」
森の中につくられた、壁というより、腰板の高さの囲いと屋根を支える柱しかない風通しのいい小屋で、《勇者一行》は向かいあったナオから、アチルゴ国に伝わる国のなりたちについての昔話を聞き終えたところだった。
『よぶ』といったナオはこの小屋で待っていたが、手をうちならしたカテカは『見張り番』なので、あの部屋から離れるわけにはいかないらしい。
ここに『よばれた』ときもまた、空間がゆがむような感覚をあじわったが、さすがにリミザも慣れてきたようで、この小屋がある場所が、高く組んだ櫓の上だとわかると、すぐに立ち上がって、眺めのいい景色に感動する声をあげていた。
「これって、見張り台かなあ」
無邪気なリミザの発言は、きっと当たりだとガットは思った。ここなら平坦なこの島の全方位がみわたせる。『小屋』とよぶのもどうかと思うような簡単なつくりで、屋根も床も隙間ができるような木の板の寄せ集めのようなものでできている。だがそこに、あの編んでつくられた大きな椅子がおかれると、なんだか『特別な小屋』のようにみえるからふしぎだ。
その椅子に好きなように座ったみんなが、この島についてから初めて、海からのここちよい風と、どこをむいても、緑の濃い島と青い海と白い砂浜があるすばらしい景色を楽しんでいるところで、ナオの『昔話』がはじまったのだ。
「うーん・・・謎につつまれた国だなあ」
リミザは腕をくんで首をひねった。
「教会のじいさんにきいた話もこんなだったような気がすんな」
ガットが目をとじておもいだそうとする。
「わたしもむかし文献ですこし読んだ通りでした」
ラフィーも法衣の胸当ての部分をおさえるようにして眉をよせる。
「え?なに?いまのでみんなわかったの?うっそ。だって、『昔話』っていうか、遺跡とかについた『説明書き』みたいだったよ?『大昔、この海に突然小さな島々といっしょにあらわれたアチルゴ国の人々は、魔力を《ヂガミ》からもらった一族でした』って、これだけだよ?うそでしょ?なにがわかったんじゃい、おまえら」
ラーラだけが仲間をひとにらみすると、ナオにむけてさしだした手の指先を何度か曲げうごかし、もっとよこせ、と合図した。
「あー、ラーラがわかんなくて当然だから。だって、あたしたちもよくわかんないんだもん。 ほら、さっきラフィーが言ったみたいな『文献』?この国じたいに、そういう古い書物とかが残ってないんだよねえ。ふっるーい、器とか布とか、きれいな絵とかはいくつか残ってるんだけどね。あとは、口での言い伝えだけだから。年寄りたちはみんな、ここは《海の裏がわ》にある『遠くの世』から来たとかいうんだけど、それがどのあたりかはわからないし、さっきガットがテモモを『長生き』だっていったけど、この国の人間はみんな120歳ぐらいまで生きるのが普通なんだ。テモモにさっき『声』かけて見たんだけど、なんの反応もないから・・・ちょっといまはダメみたい。ごめんね。 で、うちの家系は代々ここの《魔法術》を受け継いでる《ヂガミ》ってよばれる家系だけど、今じゃ島のみんなが《魔法術》ができるくらいの魔力があるから、その、特別強いのがうちの家系みたいなかんじかなあ。 ほんらいの《ヂガミ》は島の神様のことだから、みんなで『まつって』じゃ通じないか・・・えーっと、そっちでいうところの、『おいのり』をしてるから、みんなにこんな魔力があるのかも」
ナオの説明にラフィーが指先でちいさくじぶんの神様に祈りをささげ、「すばらしい」と感心する。
「でもカテカがこの国には『ふたつの種族』がいるっていったよなあ?それってナオたち《ヂガミ》と、そのほかってことか?」
ガットがきくと、ナオがいっしゅん耳に手をやった。
「・・・あ~、いや、べつにこたえなくてもいいんだが」さきほどのカテカのように、だれかの声がナオにはきこえているのかもしれない。
「あ、ちがうの。 ―― っていうか、みんな、うちの国の『兵士』に会ってくれる?」ナオが片耳をおさえるようにしてきく。
「そりゃ、とうぜん」
ガットがうなずくよりはやくナオが両手をあげてパンと打った。




