あらためて
うまいことテーブルに着地したトカゲは、いちもくさんにラフィーの法衣の中へ逃げ込んだ。
「 ちょっとさあ、ひとんちのペットにたいしてずいぶんな扱いするなあ」
リミザがおこったように身をのりだすと、ああ悪かった、とまたしても反省してなさそうに謝ったカテカは、ガットに顔をむけた。
「 で? ―― どうして《勇者》が死んでる? ここにくるまでに何かあったか?それとも、おまえらで、こんな《勇者》いらないと判断して葬ったのを隠すため、あえて、動かしてるのか?」
「まあ・・・『あえて』っていうのは、合ってるが・・・」
こんなに術式の違う魔法をつかうところへきても、やはり『死人』はわかるものかと、ちょっとがっかりしたガットが言葉をとぎらせると、リミザが「ひいっ、」とひきつった声をあげて、ひとりだけ、テーブルにつく仲間から距離をとる。
「お、おれ、そういう理由で?も、もしかして、おれが死んだ理由って、」
「んなことあるわけねえだろ、落ち着け、リミザ」
「そうですよ。そんな理由だったら、もっと別のときに別の場所で実行してます」
《賢者》がいつものすました顔でもっともなことをいうので、「―― そりゃそうか」と《勇者》も納得してすぐにもどる。
「ちょっとまって。あんたはこっちのほうの魔法術はお見通しってわけ? あたしたちはそっちの《術式》も《魔力》もはかれないっていうのに?」
ラーラが納得いかないというようににぎりこんだ拳でじぶんのももをたたく。
眉をあげたカテカは、「ナオ」と、もうこの部屋にいない女をよんだ。
だが、ドアの方からはなんの反応もない。
「 ―― わかった、 わかった。 ・・・そう怒鳴るなよ。 やるって。わかった」
カテカが誰かと会話するようなひとりごとをいって、片耳をふさぐと、ガットにこまった顔をむけ、悪かったな、とまた反省していない謝罪をくちにした。
「 ―― なにしろ、《外の人間》たちとはなすことなんて、めったにないし、『案内』はふだんナオに任せてるもんでな。 えーっと、・・・そっちの紹介が終わったから、こっちの紹介をちゃんとしろって言われたな。 あー、あらためて、『いりぐちの島』の『見張り番』をしてる。カテカだ。えーっと、あん?島の説明?ああ、そうか。 『いりぐちの島』ってのは、このアチルゴとほかの国をつなぐための船つき場がある『イチの島』のことで、あそこで、入れていいものとだめなものを分けるんだ。 あんたたちをここまで案内したナオは、そっちでいうところの《魔法使い》だな。ナオの家は代々それを継いでるとこで、《ヂガミ》とよばれる、このあたりの島々をおさめる神から《特別な力を授けてもらっている一族》だ。 おれたちアチルゴの民は、はるかむかしにこの海の裏側から来たっていう言い伝えがあって、みんなそれをいまでも信じてるから、ちょっと独特な暮らしになってる。 言い伝えで、そのうちまた、海の裏側にかえることになってるんだ。だから、領地はひろげず、民よ散るな、ってことになってる。 ま、だからってそれを破っても、なにか罰則があるわけでもないけどな」
「ああ、だからこの国は教会をうけいれないのですね」
ラフィーが納得いったようにうなずいた。
「《ヂガミ》ってのはむかし、教会のじいさんの昔話できいたような気がすんな。あのときはぜんぶじいさんの作り話かとおもって、わらってききながしたけど、ちゃんときいておきゃよかったぜ」
ガットが首のうしろをたたきながら反省する。
「こまかいはなしはこんどきくから、先にここの魔法の《術式》がしりたい! ナオは?どこに行ったの?彼女からここの《魔法術》を教わりたい!お礼にこっちの《魔法術》を教えるから、おしえて!!」
ラーラがどこにいるかわからないナオをさがすように、天井にむけてさけんだ。




