第39話 彼女のその後 9
分かるだろう、って感じて男は言った。
ちょっと格好もつけている。
返事を待っているみたいなので、とりあえず何か言おうと口を開けば、
「はあ」
なんて、なんとも気の抜けた声が出てしまった。
「分かっているようで、分かっていないのか。……今の君を見ていると、本当に自分の世界づくりが間違っていたと分かるな」
男はがっくりと肩を落とした。
「神様の考えることなどわかりません。救済とはいったいどういうことですか?」
「悪いことをしていない上、世界を救った英雄に褒賞を与えたということだ」
「英雄? もっとちゃんと説明してください」
聞きなれない言葉に眉を寄せると、神様は意地悪な顔をして続ける。
「あの世界の繰り返しが終わったのは、君が彼に会う前に死んだのおかげだ。
あのまま永遠に繰り返しが続けば、あっという間にあの世界は終わっていた。
だから、君が世界を救った英雄ってことだ」
救ったつもりなんてなかった……ただ、何もしたくなかった。できなかったから、そうなってしまっただけだ。
「そうさせたのは、あの世界だ。君が死に物狂いで努力してそれでも駄目だったのは、そうなるように仕向けたものがいるからだし、あの繰り返しを止めるにはあの方法しかなかったからだ。
何度も言うが、君のせいじゃない。
だから、君の人生だけは、一度目の死と置き換えた。そうすれば君は禁忌を犯していないことになる」
それは、そうかもしれないけれど。一度目の死は、お腹を空かせて凍え死んだはず。
「ああ、一応死因は病死にした。君の両親もそう認識させてある」
「……そうですか。ありがとうございます?」
「……まあ、いい。で、これからのことだ。君はこの世界の英雄だから、これから未来の自分が行く場所を選ぶことができる。
一つは、この世界で別の人として生まれ変わること。
もう一つは、この世界とは違う世界に生まれること。
どちらでも、今までの記憶はなくなるけれど、この世界なら俺の、違う世界なら違う世界の神からの恩恵が与えられる。
潤沢でも、特別なものではないけれど、そんなに努力しなくても飢えることや苦しいことや嫌なことからは守られる、それくらいの加護だ。頑張れば、人より大きな幸せを得ることが容易だ。
そして、もう一つは神様になること。
君はとても頑丈だ。
強靭で、頑強で、頑固で、堅牢で、無鉄砲で、それから……負けず嫌いで、往生際が悪くて。本当に、驚くほど、とてつもなくしぶとい」
これは褒められているのだろうかと、首をかしげたところで、神様はやっぱり笑う。
「けれど、その執念深さが逆境に屈することなく、逆境さえも原動力にして世界を変えてしまう。
君のような意識を持つものが神様になるなら、きっと良い世界が出来るだろう」




