第35話 彼女のその後 6
「……繰り返したのは、私のせいってこと?」
私の言葉に、男は大きく首を振って、
「いや、違う。それは俺のせいだ。最初に言ったろう。こうなったのはバカな神様が、どうしようもない神様の世界に情けをかけてしまったからだと。君は俺の世界を救ってくれたんだ」
と、また訳の分からないことを言った。
「あの繰り返しが?」
「そうだ。君は一度目の時、誰も彼もあの女の思う通りにしたのに、あの女に逆らっただろう?」
一度目……、逆らったのだろうか?
当たり前のことをしただけ、のような気がする。
二度目も同じだ。おかしいと思ったことをおかしいと言っただけ。
それは逆らったことになるのだろうか?
「十分逆らったことになる」
口には出さなかったのに、男が答えた。
「俺の世界は一方通行だ。始まったら未来にしか進まない。生まれたら、その生は死を迎えればそれで終わり。決して過去に戻ることはない。やり直しはできない。君は一度目に選んだ。あの魂にあらがうことを。彼を見捨てず、ずっと一緒にいることを」
そうだ。
だって、私は王子を好きで、その隣に立つためにずっと頑張っていたのだ。
簡単に諦められるわけがない。
「でも、彼はそうじゃなかった」
抗うか、流されるか。
胸の中でその言葉を繰り返し、思い出す。
私が苦言を呈するとき私を見る、王子の目を。
面白そうにも、諦めたようにも見える、意味ありげな視線。
そして、少しも悪びれることなく女を友人だと告げる声。
「一度目に、彼は君と離れるつもりはなかったようだが、彼は抗うことをしなかった。あの魂の行動に流された。あの魂はそれを見逃さなかった。奴の世界は繰り返しの世界だ。始まって終われば、また最初に戻って始まる。生き残るのはいつも同じ魂で、同じことを繰り返して、やり直して、少しずつ先に進んでいく世界だった。
あの魂には小さな力だが世界の終わりに集められた奴の力が充満していた。それはあの時間の俺の力より大きくて、奴の世界を俺の世界に顕現させるに十分だった。
だから、彼を手に入れるため、やり直しを始めたんだ。少しずつ、少しずつ君の場所を奪うために」




