第34話 彼女のその後 5
「奴はずっと愛し子の存在を知らずに世界を創っていた。
けれど、自分の世界の最後の最後に、本当の愛し子たちが生み出した魂を自分の愛し子だと思い込んで、本当の愛し子に与えるべき力をすべてをあの魂に注ぎ込んだ。
魂がそのまま奴の世界にいればよかったんだが魂は逃げ出して、奴も愛し子を追って自分の世界から目を離した。
その瞬間、奴の世界は力を失い消滅した。
奴が消えなかったのは、魂が奴の力のすべてをもって俺の世界に入り込んだのと、奴が俺の世界を自分の世界だと思い込んだからだ。
奴にとって、俺の世界でも愛し子はあの魂だった。
だから奴の本当の愛し子たちが奴の世界とともに消えたとき、その役目もあの魂に与えられた。
愛し子は必ず対だ。
あの魂も、対となる相手を求めた」
「……その相手が」
「そう、よりにもよって彼だった」
男が頷く。
「あの魂がそこまで理解していたかは分からないが、愛し子の本能で彼を選び、君に成り代わろうとしたんだろう。君が持っているすべてを奪って」
「そんなことって」
出来るわけがない、そう言おうとして詰まる。
―――奪われたじゃないか、嫌というほど、何度も。何度も。
「君たちが愛し子でなければ……、せめてあの魂が君たち以外を選んでいれば、ここまで酷くならなかった」
「私たちが愛し子でなければ?」
「君たち以外の魂は対を持たない。誰とでも簡単につながれるし、離れることもできる。あの魂が選んだ相手が普通の魂だったなら、簡単に彼を奪うことができただろう。奪い合いが起きたとしても痴話喧嘩ぐらいで終わっていたはずだ。
けれど君たちは愛し子で、強い運命で結ばれていた。彼をめぐって、君とあの魂が反発した。
君は俺の力で、あの魂は奴の力で……そして、繰り返しが始まったんだ」




