第27話 幕間 4
優しいことは罪なのだろうか。
目の前に苦しむものがいれば、手を差し伸べる。
それは悪いことなのだろうか。
意識がはっきりしたその瞬間は覚えていない。
けれども、気が付いた時にはそこがどこで、自分がどんなものかということは、よく分かっていた。
自分よりずっと大きな存在が、それらの事を自分の中に与えてくれているからだ。
だからすぐに、新しい世界を作り始めることができた。
どこまでも続く真白な世界に、少しずつ自分の力をなじませていくと、小指の先ほどの透明な渦が現れる。
そこに自分が持つ力を願いとともに落とせば、様々なものが生まれてくる。
世界のはじめに生まれてくるのは、二つの光。
同じ形で、色は対。
離れがたそうに絡み合っては、それぞれに辺りをふわふわと漂う。
この二つの光は、この世界の根幹となる、大切な大切なものなのだ。
自分は、この二つの光が、苦しまないように、悲しまないように、傷つかないように、飢えないように守りながら、世界を作っていくことになる。
世界を作るのは一度きりだ。
絶対に失敗はできない。
どうすれば、二つの光が幸せに過ごせる世界になるのか、試行錯誤をしながらひたすらに力を使い続ける。
そうしていったいどのくらいの時が流れたのか。
白い世界は緑にあふれる素晴らしい生活の場になっていた。
世界のどこを見ても幸せそうな笑顔とやさしさがあふれ、放っておいても平和が続くようになっていた。
だから、だろうか。
自分の世界ではないどこかから苦しそうな声が聞こえて、初めてよそ見をしてしまった。
隣に別の誰かが作る世界があることは知っている。
けれども、本来であれば隣の世界は見えないはずだ。
それぞれの白い世界は、隣り合っているとはいえ決して交わらぬほど広く、遠いはずなのだ。
なのに、その悲鳴はひどく近い場所から聞こえた。
聞こえなかったことにするべきだったが、気になってしょうがない。
仕方なく声の方へ向かえば、少し離れた場所に男が一人背を丸めて座り込んでいた。




