第26話 神の世界 6
神の新しい世界は、神が与える力で瞬く間に発展していった。
人は増え、実り豊かな飢えることのない国を作り、誰もが笑顔で生きている。
その様子は隣の世界に遜色ない。
もし今あの男がこの世界を見れば、きっとこう言うだろう。
【幸せそうだ】と。
【愛し子を大事にしている】と。
そう、きっと、そう言うはずだ。
神も、今の世界に満足している。
満足しているが、不安でもあった。
一番の不安は初めて大切だと思った命のことだ。
他のどの命よりも、
―――苦しまないように。
―――悲しまないように。
―――傷つかぬように。
―――飢えぬように。
そう思っては力を与え続けているが、命がどう思っているのか分からなかった。
前の世界でもこの世界でも何かを手に入れた生き物は、表現方法は違えどみな喜びの声を上げていた。
なのに、大切な命は喜びではない、不満そうな表情を浮かべるばかり。
その顔を見れば、神は何かが足りないのかとさらに力を振るった。
世界すべてが、大切な命の為に回っている。
そうなるほどに力を与えていた。
―――だから、大切な命は、この世界の中で一番幸せなはずなのに。
時間が経てば経つほど、力を与えれば与えるほど、大切な命は神が理解できない行動をとるようになっていく。
持っていたものを放り出し、近くにあるものを破壊し、与えられるものには背を向けた。
神は、困惑した。
神は、大切な命を大事にしていた。
持つ力すべてを注ぎ込んで、あの男が言うように守っている。
なのに何故、あの命は隣の世界の生き物たちのように、笑わないのだ。
神は、混乱した。
何をどうすればあの命が笑顔になるのか分からなかった。
神は天を仰ぐ。
今こそあの男に、ここに来てほしい。
この問いに、答えを与えてほしい。
そう願い―――願いがかなわないことに、怒りを覚えた。
いつかのように、手を振ってこの世界を消してしまえばいい。
そうも思った。
けれども、何故か、どうしても、そうはできなかった。
そして、行き場のない神の怒りは、大地に、大切なはずの命へと向かった。




