第23話 神の世界 3
この世界のまま続ければいいのか、すべてを無くして新しい世界を作ればいいのか。
神は、自らの世界と隣の世界を見比べながら長く考えた末、自らの世界に残った二人を救いあげた。
まだ“生きていた”男はそのままに、死んでしまった女に新たな力を与え、その体を元通りに整える。
そして焼け野原を森に変え、そこにその二人をそっと降ろした。
二人はすぐにお互いを見つけ、その世界で暮らし始めた。
朝、日が昇るとともに目覚め食事をし、次の日の糧を得た後は、森の間を駆け回って笑いあい、日が沈むとお互いを抱きしめあって眠りについた。
その様子は、隣の世界と同じように見えた。
「なかなかいい世界になってきたじゃないか」
どれだけ時が過ぎたころだろう、前と同じように二人を見守っていた神の前に、ふらりと男が現れた。
「……とても幸せそうだ」
と、男は神の世界を見下ろして、頬を緩める。
幸せそうだ、と言われても、神には理解出来なかった。
前より隣の世界に近くはあるが、どこか物足りなかった。
―――――そうだろうか?
胸の奥がもやもやしたがそう答える。
「あぁ、前よりもずっといい。だけどな、まだ駄目だ。まだたりない。彼らはお前の愛し子たちだろう?」
―――――愛し子?
「彼らのことが大事だろう?」
問われて、神は眉を寄せた。
大事、とはどういうことだろう。彼らはたまたま生き残っていただけだ。
生き残っていたから、利用した。
それだけだ。
言葉にはしなかったが、男には伝わったのだろう。
男が呆れたように肩をすくめた。
「いいか、彼らが生き残るのは彼らがお前の愛し子だからだ。彼らを大事にしろ。もっと手をかけなければ駄目だ。彼らが苦しまないように、悲しまないように、傷つかないように、飢えぬように祝福……力を与え守るんだ。
そうすれば彼らはもっと幸せになる。彼らを幸せにすること、それが俺たちの仕事だ」
―――幸せ。
「そうだ。彼らを幸せにすることで、世界はより大きくなり、生き続けることができる。そして、俺たちも、成長する」
―――成長?
聞きなれない言葉ばかりだ。
自分はちゃんと言われた通りにやっていた。
作って、見守って。
それ以外に何も聞いていない。
男は大きくため息をついて、また肩をすくめて、少し笑った。
「そんな顔をするな。お前の世界も成熟はしていたんだろう。ある一点においては。それがお前の望む世界だったのだろうが、それでは世界はただ疲弊するばかりだ。疲弊する世界はいつか終わりがくる。だから世界に力がみちるように彼らを大切にするんだ」




