第24話 神の世界 4
男が来るたび、胸がひどく騒ぐ。
男はいつもいつも理解できないことばかり言うからだ。
まるで、男の言うことを分かっているのが当たり前のように。
―――幸せ
そして
―――成長
それに何だったろうか。
確か、
―――愛し子
とか言っていたか。
幸せと成長は、神にもかろうじて理解できる。
神が作った世界はいつでも神を超えようとするものたちであふれていた。
彼らは世界を広げるたびに、興奮し高い声を上げた。
あの声には確かに、喜びの感情が含まれていた。
彼らのその声を聴くと、神の心も浮き立った。
隣の世界にあふれる声と、今眼下に走り回る男女の笑い声から受ける気持ちと同じように。
そして、新たな創造がやってくると楽しみになったものだ。
であれば、あれも幸せに湧く声だったろう。
彼らは彼らなりに幸せであったはずだ。
では、愛し子とはなんだろう。
男は何と言ったろうか。
生き残るから、大事だから、だったろうか。
神の作った世界の命は、敵がいなくなれば、彼らは身内で奪い合い、最後の一人になるまで争い、消えかけた命を糧に大地を焦土として終焉を呼ぶのだ。
その最後に残る命がどんなものだったか、そんなもの覚えてはいない。
最後に生き残ったものを、大切だとも、愛しいとも思ったことはない。
手を振って真白にすれば忘れてしまうほどの、些細なものだ。
今、隣の世界に似た新しい神の世界にある二つの命も、同じ。
大事でも、愛しくもない。
隣の世界に似せるため、必要だと思ったから残しただけだ。
男は言った。
【幸せそうだ】と。
そして【まだたりない】とも。
隣の世界を見ながら、足りないものを考える。
―――手をかけろ、と言っていたか。
苦しまないように。
悲しまないように。
傷つかぬように。
飢えぬように。
―――後は、祝福、か。
分からないことばかりだが、神はやってみることにした。




