第20話 彼女のその後 1
―――ここはどこだろう。
光を感じて瞼を持ち上げると、世界は真っ白だった。
地面はふかふかしていて、とても寝心地が良い。
いつまでも寝ていられそうな気がする。
それでも、体を起こして辺りを見回す。
何もない、白い世界。
右も、左も、上も、下も。
どこまでも、どこまでも 真っ白だ。
ここはどこだろう。
そして、私は誰だろう?
「あぁ、目を覚ましたね」
ふいに、目の前に人が現れた。
どこかで見た事があるような、だけど知らない……男の人だ。
「貴方は誰?」
「俺? 俺は……神様?」
こてんと首を傾げられた。
私も首を傾げる。
「かみ、さま」
「そう、君が生きていた世界の、神、だ」
「……」
「その顔は信じていないね」
神と名乗った男は、面白そうに笑うけど、言った本人も不思議そうな顔をしているんだから、私が信じられなくても仕方がないと思う。
それに、男の姿はどこにでもいるような青年で、特別綺麗なわけでも、格好良くもない。すぐ忘れてしまいそうなくらい、平凡な感じ。
右に傾げていた首を、左に傾げると、男は肩をすくめた。
「ほら、見てごらん」
仕方ないなぁ、と男は足元を指し示した。
胡散臭いと思いながら、促されるままに足元へ目をやると、いつの間にか緑色の世界が広がっていた。
「森?」
「そう、森。さっきまで君が生きていた世界は、森がたくさんあるんだよ。そしてあそこが君が生まれた国だ」
「生まれた……国」
森がぐんぐん後方に流れていき、時折家が見え始める。
家が増えれば村になり、町になり、やがて見覚えのある建物が現れた。
「……お城」
視界はどんどん城に近付き、窓の一つへと飛び込んで行く。
部屋には三人の男がいた。
「……お父様」
勝手に口から言葉が漏れて、自分の事を思い出した。
「思い出したかい?」
「ええ、でも……何故、彼は泣いてるの?」
「君が……死んだ事を知ったんだ」
ああ、そうだ。
私は、私を……。
私はまた首を傾げた。
あそこにいる彼は、私を知らない、私を婚約者だと知らないままの彼ではないだろうか?
だって、私は、彼に会う前に……ならば、何故
「どうして」
――――彼が泣いているのだろう?
ふわりと、頭が撫でられる。
優しく、柔らかく、慈しむように。
「ごめんね、俺に力がないせいで、君にばかりとてもつらい思いをさせてしまった」
言われて、心がきゅうっと締め付けられた。
そうだ、とても辛かった。苦しかった。
だって、私は彼が好きだった。
嫌われている……いつか、嫌われるのだと分かっていても、大好きだった。
よく分からないあの女から、なんとかして取り戻したかった。
彼の、優しいまなざしを。
「彼もね、君と同じように、あの時間を繰り返していたんだ」
神はそう言って、痛ましげに眉を寄せた。




