表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
26/276

ハーレムってどういうこっちゃ



 私が赤っぽい丸太と思い込んで座っていたのは、どうやら蛇の背中だったらしい。

 イースの言葉を聞き終わる前にその体の持ち主が私に襲い掛かろうとした。そして、私は見た。私に襲い掛かろうと急激に距離を縮めてこちらへ来る女の上半身を。

 ……そう、私が座っていたのは眠っているラミアだったらしい。

 襲い掛かってくるラミアに、私は叫んだ。



「おっぱい!!?」



 おっきいおっぱいが惜しげも無く晒されているのを目撃した私の心からの叫びは、辺り一帯の時間が止まったかのような錯覚を覚えるくらいには衝撃的な叫びだったらしい。凍結したかのように全員の動きが止まった。

 …いや!だって!確かに下半身が凄く長い蛇だとか!女の上半身が凄いスピードで迫ってくるとか!髪がめちゃくちゃ長いのにそのままにしてるせいでホラー映画の女幽霊かって感じだとか!そういうのはあるけどさ!

 でもそれはそれとして魔物だからか胸当てをね!?してないんですよこの人!イース程とは言わないけど平均に比べれば結構な巨乳と言えるおっきいおっぱいを!ぼろんって!あとアニメじゃなくて現実の世界だから髪の毛が大事な部分を隠したりもしてない!さっきからチラチラチラチラ綺麗なピンク色が見えてる!

 同性の癖に慌てるなよって?同性でも草原でいきなり上半身裸の女に会ったら慌てるだろうが!男だって草原で下半身マッパの同性に出会ったら驚くだろうがよ!風呂場ならともかくここ風呂場じゃ無いからね!?



 …よーし、一旦落ち着け私。ひっひっふーだ。いやこれだと出産だな。普通に吸って吐けば良いから落ち着こうね私。脳内で情報が混乱している。

 相手はラミア、色は赤。オッケー合ってる。丸太と勘違いして座っていたが急に動き出し襲ってきた。これに関しては私が上に座ったせいかな。顔は髪でよく見えないが鱗と同じような色の耳が髪から覗いている。エルフ耳のように長い耳だ。人間のような上半身はかなりスタイルが良くて特におっぱいがおっき……ここは考えてはいけない!

 で、えっと、下半身が蛇。長いスカートを履けば隠せるなってサイズじゃなくて、かなり長い。数メートルはありそうな蛇の胴体だ。ちなみに彼女は衣服らしき物を着用していないが下半身に性器らしきモノは確認出来なかったので一安心。エッチな漫画だったら確実に見えてただろうからね!あー良かった!

 足の付け根辺りから蛇の胴体になっていて、少しVラインっぽい感じではあるが性器部分はギリギリ蛇胴体に飲まれていて見えない。もし見えていたら発禁だろうその部分は蛇の腹があるだけだった。ありがとう神様!

 色々と混乱し、最終的に私は神へ感謝の祈りを捧げた。冷静になったら何を言ってるんだろうね私は。命の危険時におっぱいって叫ぶアホは私でござんす。

 どうにか混乱状態から脱した私は、いまだに硬直している皆に声を掛けようとした…瞬間に、くぅと可愛らしい腹の音が鳴ったのを聞いた。



「………」


「………お腹、空いた」



 無言で音の鳴った方を見ると、ラミアが右手でお腹を押さえそう呟いた。

 その言葉で硬直状態が解けたのか笑い出したイースが持っていたお椀を私に渡し、新しいお椀にシカと卵の煮込んだやつを卵多めによそう。



「私達は今から食事の時間なのよねぇ。……貴女がこちらに攻撃しないなら私はこのご飯を分けてあげるのもやぶさかじゃないわぁ。ミーヤはどう?」


「え、うん、何と言うか丸太と間違えて座ってごめんなさいという謝罪も込めて良ければどうぞお食べ下さい」


「ですってぇ。ハニーはぁ?」


「ヴヴヴヴヴ」


「「ミーヤ様が許可するのであれば」ですってぇ。どうするぅ?」



 くすくすと笑うイースのその言葉にラミアは少し考えている様子だったが、空腹が勝ったらしい。コクリと小さく頷いた。



「じゃあお姉さんも火の近くおいで。近くで食べようよ」


「……良いの?」


「え、勿論。あ、あとさっきは上に座っちゃったり大声で叫んだりしてごめんなさいでした」



 一旦お椀を地面に置いて頭を下げる。謝罪はちゃんとしておきたい。

 ラミアは私の謝罪を不思議そうな顔で見てから、



「…ん、気にして無い。…むしろ、面白かった、から」


「面白い?」


「ん…。人間は、ラミア、見たら…皆、叫ぶ。でも、皆怯えたような叫び。おっぱいって叫んだの、貴女が、初めて」



 そうはっきりと私が叫んだ言葉を口にされると恥ずかしいんですけどね!?



「あの、本当すみませんでした」


「……?なんで…?」


「え?」



 イースから受け取ったお椀を左手に持ち、右手に持ったフォークを指先で弄りながらラミアはそう言う。心から不思議そうな顔で、言葉を続ける。



「ラミア、嬉しかった」



 きょとんとした顔から緩んだ笑顔に変化していくのが長い前髪の隙間から見えた。

 微笑みながら、ラミアは言う。



「…ラミア、女しか居ない種族。だから、他の種族の男、無理矢理襲う。…蛇の体も合わさって、皆、ラミアを嫌う。でも、おっぱいって言った。…人間の体のパーツで、男が欲情する部分の一つ。叫んだって事は、一番最初に認識したのがおっぱいだった…と思う。蛇とか、ラミアとか、敵とか、魔物とか、そういうの、無くって…最初にそこだった。……だからラミア、嬉しかった。謝ったり、しなくて良い…」



 たどたどしい喋り方で言われた言葉に私の羞恥心はもうオーバーヒートであります。

 褒めてるんだと思うよ!?褒めてるんだろうけど私が一番最初におっぱいを認識したってだけの話じゃんか要するに!他の何よりおっぱいにしか目が行かなかったという事実をそんなハッキリ確定させなくて良いと思うの!あといまだに何も着けて無いから見えてる!見えてます!そのおっきいおっぱいが!



「……?どうか、した?」


「いや、あの、本当すんませんでした」


「うふふふふ、恥ずかしがってるだけだから気にしなくて良いわよぉ」


「…そう…?」



 はい、つまり恥ずかしいってだけです。くっ、鎮まれ私の中の童貞男!何で花の女子高生の心に童貞男が居るんだろうね。おかしいね。

 とりあえず心を静める為に地面に置いていたお椀を持って箸で食べる。この箸は昔勇者が居た時代に売られていた物らしく、イースが私にくれた。こっちの方が食べやすいだろうって。本当にありがたい。

 イースはいつも通り食べないらしく、ハートが浮かんでいる赤みがかった紫の瞳でこちらを見ながらにこにこと笑っている。すぐにお代わりを注げるよう手にお玉を持ってスタンバイしているのもいつも通りだ。

 ハニーはジャムをちろちろと舐めている。声が機嫌良さげだから美味しいジャムだったんだろう。町で買った安いジャムは微妙な甘さだったもんね。寧ろ酸味が勝ってたという甘党のハニーには天敵のような代物だった。これからは安物に気をつけようと心に刻んだよ…。

 そして、



「……………」



 ちらりと横目でラミアを見ると、彼女は指先でくるくる動かしていたフォークを置いてから、両手でお椀を傾け中身の肉と卵を呑んだ。

 もう一回言おう。蛇が丸呑みをするようにゴクゴクと肉と卵を呑んだ。



「いやそれ大丈夫!?」


「!………?…ん、んぐ…。…ふぅ。どうか、した?」


「いや、丸呑みって…喉に詰まったりしない?」


「?平気……」


「ラミアは一見美しい女の顔だけど、口裂け女のように耳元まで口を開く事も出来るわぁ。大の大人を…成人男性くらいの人間を頭から丸呑みするくらい余裕だからぁ、心配しなくて大丈夫よぉ」


「そうなんだ…」



 流石は異世界。一見ただの美女に見えてもそうじゃなかったりする世界だ。

 ん?そういえばイースってラミアに気付いてたんだよね?私が思いっきり丸太と思い込んで座った時には気付いていたんじゃないか?



「ええ、気付いてたわよぉ」


「やっぱり!何で教えてくれなかったの?」


「普通は自分で気付くものよぉ。蛇の背中と丸太の感触なんてまったく違うじゃなぁい」



 ぐうの音も出ない程の正論である。



「それに本気で寝てるのもわかったものぉ。待ち伏せしてミーヤを食おうとしてたなら襲い掛かってきた瞬間に首を落とすけどぉ、そういうのでも無く普通に寝てただけだったしぃ。あと頭部は少し離れた位置にあったからまあ良いかなぁってぇ」


「まあ良いかって」


「ヴヴヴヴヴヴヴ?」



 ハニーは「ですが、ミーヤ様の言葉で動きを止めたとはいえ襲おうとしていましたよ?」とイースに言った。うん、私もそれ思った。



「直前で動けるようならミーヤに任せてぇ、ミーヤが直前でも動けないようなら私が始末、って考えてたのよぉ。ギリギリでも充分対応は可能だしねぇ。でもまさかおっぱいって叫ぶとは思わなかったわぁ。…あっはははは!」


「言わんといてけろ!」


「ヴヴ?」



 「けろ?」とハニーに不思議がられたが慌てると語尾が変になるのは癖だからスルーしてほしい。

 ……というか、ラミアは何でここに居たんだろうか。近くにラミアの集落でもあるのかな?お代わりをまたもや一呑みで平らげたラミアに問い掛ける。



「お姉さんは何でここに居たの?」


「それは確かに不思議よねぇ。ラミアは確か魔王様の治める魔王国に住んでるはずよぉ。雪山の手前にある温泉地、そこがラミアの集落のはずよねぇ?」



 あ、そうなんだ。そういや蛇って寒いの苦手だから暖かい所に生息してるはずだよね。



「ん……」



 ラミアは少し考えるように下を見つめ、口を開いた。



「……わからない」


「わからない?自分の事でしょお?」


「………ん、っと…少し、遠出した。遠出して、弱いのを狩って、食べた。食べたら眠くなって、寝てたら、箱の中に居た」



 なぜ箱。無意識に狭い所に潜り込んだとか?でも一応聞いておこうかな。



「何で箱?」


「…人間の動かす、箱の中だった。こう…動く箱で、馬が動かすやつ」


「……もしや馬車の事ですかね?」


「さあ…?」



 さっきから思ってたけどこの人箱入りだったのかな?ギャグでは無く。馬車を馬が動かす箱って…間違いでは無いけど間違っている。……え、待って何で人間が動かす馬車の中に入ってんの?



「それで、箱の中、暗くて良い感じだった…から、まあいっか、って……横になった」


「まあいっかって…」


「寝てたら、動かなくなって、箱が開いた。人間が、「売り物だから死んでないか確認しろ」って、言ってた」


「……あの、それまさかとは思いますが」



 奴隷商人だったりしないよね?



「…そしたら、入って来た人間が、「もう少し見た目を整えた方が高値で売れるな」って…言って、触ろうとした。ラミアは…ラミアだけど、別にまだ子孫欲しいって思ってない。だから困った。男に触られたら、相手をして子供作るのが、ラミアだから…」


「どういう事なの」


「あ、説明するとねぇ?ラミアは女しか居ない種族なのよぉ。だから他の種族の男を捕まえては襲って子供を作るのぉ。うっかり男がラミアの里に立ち寄ったが最後、干からびるまで解放してもらえないわぁ」



 何それ怖い。



「でも温泉地としては良い所よぉ♡」


「温泉と痴女の組み合わせって凄いねー…」



 少し脱線してしまったが、ラミアは話を続ける。



「…それで、人間に、触られる前…に、箱から逃げた…。箱から逃げたら、見覚え…無い、場所だった…。どこだろう、って、思ったら、外の人間が…「奴隷契約もまだなのに逃がすな!やられる前にやるしかねえ!」って、叫んで…。氷魔法、撃とうとした…」



 やっぱり奴隷商人だったのか。ファンタジーの怖いやつだ。



「奴隷契約で抵抗出来なくすれば魔物は使い勝手が良いから高値で売れるのよねぇ…。魔族は顔が良いのも多いしぃ、人間よりも使い道が多いものぉ」


「うへー…」


「ヴヴヴ…」



 嫌な内容に思わず舌を出してしまった。でもハニーも嫌そうにしてるからこれは仕方ない。普通の反応だと思うからセーフって事で。



「それとその人間達が氷魔法を使おうとしたのはぁ、ラミアは寒いのに弱いから、かしらねぇ。寒いとどんどん体の動きが遅くなって冬眠状態になるのよぉ」


「……ん、寒いの、ラミア、嫌い…。だから、撃とうとした人間、睨んで怯えさせて、隙が出来た瞬間…首、咬み付いた。咬んで、折った。慌てて箱から出てきた…触ろうとした男も、絞め付けて、全身折った。馬も、うるさかったから、折った」



 中々にアグレッシブというか、強いな。



「美味しかった」



 食ったんかい!



「それで、お腹いっぱい…なったから、寝ようとした。したけど、人間が来たから、隠れた。その後、少し調べた。周りの事。…そしたら、魔王国じゃなかった。人間の国、来てた。ラミア、基本的に集落の外、出ない。……だから、帰り方、わからない。困ったけど、困ると…お腹、空くから。考えるの、やめた。やめて、安全な場所、探した…。ラミア、連れ去られたの…ここより、もっと遠い場所だった。…とても、汚い場所だったから、逃げて、遠いここ、来た…」


「遠い場所ってどこの事かしらぁ?」


「……知らない。でも、言ってた。人間。「バーバヤガ」って。「バーバヤガなら奴隷を推奨しててやりやすい」って。……あそこ、気持ち悪かった。だから、遠いけど、こっち来た」


「………そうねぇ。その判断は正解だったわぁ。バーバヤガって言ったら悪い噂しか聞かないものぉ」



 まったくと言って良い程にわからんが、まあ二人が言うならそうなんだろう。わからない者同士としてハニーをもふもふする。ハニーも森生まれ森育ちだから結構知らない事は多い。一緒に学べるだけ嬉しいけどね。同級生みたいで。



「ああ、ミーヤに説明しておくわねぇ?バーバヤガっていうのはここから少し遠い所にある国の事よぉ。奴隷制度を推奨していてぇ、他種族を虐げるのは当然って国。良い噂は聞かないから行く予定も無いしぃ、記憶の片隅に置いといてねぇ」


「うわ怖い」



 バーバヤガ、か。その国はファンタジーでよくある超ヤバイ国って感じなのかな?

 テンプレファンタジー小説ならその国が戦争の為に勇者召喚をして失敗して私がまったく違う所に召喚されたって展開がありそうだけど……まあ現実ではありえないかー。



「………その可能性も一応覚えといた方が良いわねぇ」


「え、マジで?」


「無くは無いものぉ。……あ、それと今居るこの国はツィツィートガルよぉ。気候は安定してるし柄の悪い人間もバーバヤガに比べればかなり少ないわぁ。多少迫害とかはあるけどぉ、他種族も受け入れて共存してる国でもあるわねぇ。他に比べれば結構良い国よぉ」


「へー、そうなんだ…」



 この国に来たのは完全なる偶然というか私が関与出来る事じゃ無かったから実感は薄い。でもまあそのバーバヤガとやらに居たら数分で持ち物全部奪われて死んでたか、すっぽんぽんにされて売られてた可能性もありそうだしな。

 うん、本当にこの国で良かった!ありがとうツィツィートガル!

 …ツィツィートガルって日本人には発音し辛いね。実際に口に出したら噛みそう。



「……あれ、でもそのバーバヤガってここから遠いんだよね?お姉さん結構な距離を移動したの?」


「ん……。時々、魔法で、人間操って…馬車に乗ったり、した…。でも、大体自分で…。疲れたし、もう、ここで良いかなって、思って…この木、寝床にしてた…」


「だから寝てたのかー」


「…そして、時々人間、来るから、襲い掛かって、折って、食べた…。この辺、強い人間、居ないから……狩り放題…。一休みで、気を抜いた…瞬間、狙えば、一発……」



 あっれ何か聞き覚えあるシチュエーションだぞ?

 そう、思いっきりさっきまでの私ですね、ソレ。



「今日、うっかり……寝てた。起きたら、近くに人間居たから、襲った…。お腹、空いてたし…」


「あ、やっぱり私捕食対象として見られてたんだ」


「…ん…。でも、ご飯、くれた…。ラミアだからって、嫌わなかった、から…貴女は、好き」


「……ありがとうございます…?」



 いや、襲い掛かられた時は驚いたけど普通に話せて一緒にご飯食べたりしてるし。

 何よりラミアだからって嫌いはしない。下半身が蛇だからって嫌う理由無いしね。むしろ下半身が蛇ってのは好かれる理由になるんじゃないの?人外娘系の漫画ではラミアも結構な人気だったと思うんだけど。

 よくわからないから首を傾げていると、イースにくすくすと笑われた。何故だ。



「上半身は人間なのに下半身は蛇。その違いこそが人間に嫌悪される理由なのにぃ、ミーヤったら「蛇要素はむしろ好かれるんじゃ?」なぁんて考えてるんだものぉ。そりゃ笑うわよぉ」


「……名前、ミーヤ?」


「え、あ、私の名前か。うん、私はミーヤ。笑ってるのが淫魔のイースで、こっちのキラービーはハニー。二人共私の従魔で頼りになる仲間だよ」


「そう…。…良いな…」



 え、何が?あ、もしや名前が羨ましいとか?

 そういえばイースも魔物は普通名前を持ってないって言ってたし、ラミアもずっと自分の事を「ラミア」って呼んでたもんね。それかな?



「ラミアも…仲間、なりたい……」



 違った!でもめちゃくちゃ凄い事を言われたぞ!?何で!?あ、ご飯美味しかったのかな!?そういや蛇って卵をよく食べるイメージあるもんね!でも食べた卵は草食ヘビの卵なんだけど良かったのかな!?うっわぁ髪に隠れて見え難いけど目が!ラミアの瞳が懇願の色を灯している!あとこの会話の最中ラミアはずっと上半身裸なんだよね!見えてるんだよねピンク色がさ!もし私が男だったら理性切れて抱き締めてたよこんな可愛い子相手にしたら!(パニック)

 私が大混乱に陥っていると、イースは色気たっぷりの笑顔でラミアに囁いた。



「あらぁ、良いんじゃなぁい?ミーヤは魔物使いだものぉ。従魔契約をすれば仲間になれるわよぉ?こっちとしても仲間は多い方が助かるものねぇ?」



 最後の言葉はこっちを向いて言ったから、まあ確かにそうだねと思って頷く。

 仲間が増えるのは嬉しいしそれが美女なら尚更嬉しい。

 イースの言葉を聞いたラミアは、私の手を両手で優しく握り締めた。



「……ラミア、ミーヤと一緒、…が、良い…。従魔、なりたい…」


「えーっと、私としては凄い嬉しいけど、本当に良いの?」


「…?何か、問題…ある…?」


「問題、は……私の言う事は最低限聞いて欲しいかな」



 町中で暴言吐かれたからって町の人殺しちゃったらやばいし。



「うふふ、普通の魔物使いだったら最低限なんて優しい事言わずにぃ、絶対服従って言うでしょうねぇ。しかも契約で縛って拒絶したい命令でも絶対に言う事を聞かせられるわぁ」


「…ミーヤ、優しい…」



 いやここでそれ言うのおかしくない!?変な詐欺に引っ掛けるわけじゃないんだから!何故他の会社ではこんな事があるとも聞きますが、この会社ではそんな事しませんよーみたいな事を言うんだ。



「他にも、えーと……あ、服!絶対に服は着てもらうよ!?せめて胸当ては付けてくれないとちょっと目のやり場に困るし!」


「?…うん、わかった…。ラミア、服着てないの、男を誘惑する為…。でも、ラミア、別に誘惑する気、無い…。ミーヤの好きな服、着る…」


「えーと、あと、あとは……正直無いんだよね」



 基本的に自由というか、いまいち付けた方が良い条件がわからない。



「あのさ、本当に後悔しない?私としてはラミアが仲間になってくれると嬉しいし、ラミアがどうしても私と一緒なのが嫌になったりしたら従魔契約を解除する気もあ」


「しない…」


「ぴっ!?」



 私が言い終わる前に、ラミアは静かに断言して真正面から抱きついてきた。細くて白い腕が私の背中に回されたのを感じる。そして私のささやかな胸にラミアのおっきいおっぱいが押し付けられているのも感じる!凄い!服越しでもわかるマシュマロおっぱいだ!低反発おっぱいだ!私の脳内もう終わってんじゃないのかさっきから!思考が迷子か私は!

 おっぱいが押し付けられる感触とか耳元の吐息とか草の香りがする髪とかおっぱいとか細いのにしっかりした腕とか近くで見るとめっちゃきめ細かい肌とか私の胸に押し付けられて変形しているラミアのおっぱいとか膝にすりすりしてる蛇の下半身とか服越しに感じるちょっと小さくて硬い感触とか色々合わさってパニックだよ!おっぱいの情報が多い?仕方ないだろおっきいおっぱいが好きなんだから!膨らみかけのおっぱいも全然いけるけど!いや何の話をしてんだよ私は!

 大混乱の私の耳元で、ラミアは言う。



「ラミア、ミーヤ…好き。今も、ラミアの事、沢山考えてくれた…。優しくて、好き。一緒、居たい…」



 囁くような、けれど思いの篭った言葉だった。

 ……えーい!女にここまで言わせて拒絶するなんざ男が廃る!いや女が廃る!

 イースとハニーに加え、ラミアも背負っていく覚悟を決めて腹に力を入れ息を吐く。一度深く深呼吸をしてから、ラミアを抱き締め返す。



「…!」


「正直まだ新米冒険者だけど、それでも良ければ私と共に来てください」



 その言葉に、ラミアはとても嬉しそうに微笑んでより強く私を抱き締めた。

 黙って様子を見ていたイースはくすくすと笑い、言う。



「それじゃあラミアは第二夫人ねぇ」


「ほわっつ?」


「ヴヴヴヴヴ!」



 え、ハニーさんや「私が第一夫人ですからね!」って何?いつから私の嫁になってたの?あ、あれか?嫁入りみたーいってハニーの時に言ったから?それともハニーって名前にしたから?どれ?

 混乱する私をよそに、イースはにっこりと両手を広げた。



「ちなみに私は奥さん達に色々と教えたりぃ、お世話したりするリーダー役のお局様よぉ♡」


「は?……は?!」


「…わかった…。ラミア、第二夫人…!ミーヤ、旦那様…!」


「待ってどういう事!?」


「どういうって……従魔に対してプロポーズみたいな事を言ったのはミーヤでしょお?実際、ミーヤの従魔として過ごしているとミーヤの事がどんどん好きになっていくわぁ。そうなるとぉ、痴話喧嘩みたいに揉め事が起きちゃうでしょお?」



 いや、起きないと思う。



「いいえぇ、絶対に揉めるわぁ。……それにぃ、ミーヤの考えを見ていてもそんな感じじゃなぁい?ミーヤにとって自分の従魔は養って大事にして愛すべき対象……奥さんと何ら変わり無いわぁ」



 あれ?そう言われるとそんな気もしてくるな?さっき私がラミアに言った言葉もプロポーズみたいって言われたら言い訳出来ないくらいにはプロポーズっぽいし。



「だからみぃんな奥さんにしてぇ、ハーレムを作っちゃえば話は早いでしょお?私は皆を纏めるお局様でぇ、ハニーは第一夫人。そしてこれから従魔が増えるたびに奥さんは増えていくのよぉ!」


「いや、えっと……」



 あ、駄目だイースめっちゃノリノリ!これ話聞いてくれる気がしないな!?



「ハ、ハニーとラミアはそれで良いの!?」



 私?私としては大歓迎だ。美女の嫁!

 ………いやいやいや!ネットの中ならともかく現実でこれは色々と問題じゃないのか!?でも私がここで拒否するのはこの子達を嫁にしたくないという意味になってしまう。しかし!正直お嫁さんになってくれるならひゃっほーいって感じの可愛い子と美女!私から断る理由が無い!だからこそ私は二人に問う。

 少なくともハニーとラミアのどちらかが嫌がれば、逃げ道が開く!



「ヴヴヴッヴヴヴ」


「「基本クイーンビー様は複数の男を相手にしておりましたし、優れた主ならそれだけのお相手が居るのは当然かと」ですってぇ」



 くっ、生まれながらにして働き蜂の性質を持つハニーは根っこが使用人みたいなトコがあるから…!上司イコール凄い、凄いイコール何でもあり。みたいな考え方なんだろう。

 いやでも、さっき思いっきりあっさり頷いたとはいえラミアは第二夫人だよ!?嫌だよね!?そう思っていまだに私を抱き締めているラミアを見たが、



「……ラミア、基本的に、他種族の男、シェア…する。男…居ないから、男、捕まえて、全員に子種貰う…。第二とか、無い……。だからラミア、充分嬉しい…」



 うっとりと太陽色の濡れた瞳でそう言った。

 あー駄目だ!ラミアという種族的なあれこれのせいで駄目だ!貞操観念というか何というか、過激な言葉を使わせてもらうと乱交が常識という種族相手に第二も第三も関係無かった!

 ……うん、二人が納得してるなら良いと思おう。いきなり可愛い嫁が二人も出来たんだから喜べ私。イースに関して?イースは凄いにやにやしながら目の奥のハートを光らせてるから言いだしっぺはイースなんだろうなって感じだ。

 まあとにかく、



 いつの間にか私、嫁を貰っていたようです、っと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ