リーダー視点
まだちょっぴり王都でした。
「………なあ、お前達」
俺はガリガリと書類にペンを走らせながら、執務室内でリラックスしきっている仲間達に声を掛けた。
「どうした、ニコラス」
「その書類の山を最低でも一つは片付けないとお茶はあげないわよ?」
「………………」
「え、えーと、書類どっかに運ぶとかだったら俺やりましょうか?」
不思議そうにこっちを見たデリック、嫌味かという程綺麗に微笑みながら茶の入ったティーカップを掲げたロロ、完全にこちらを無視して古代の魔術書を解読しているアンナ、そしておろおろしながらも気遣ってくれたルーク。
何故だ。何故俺をリーダーとするパーティのメンバーしか居ない空間なのにルークしか味方が居ないんだ。いや、辛うじてデリックはまだ味方だが、ロロが敵なのが良く無い。ロロは我がパーティ内で最強の上、デリックの妻だからな。デリックは逆らえない。
しかもロロの奴、ルークに「駄目よルーク。ニコラスを甘やかしちゃ」と言いやがった。クソ、回復役でありながら攻撃力もかなり高いロロが相手じゃルークは立ち向かえない。あああ…ルークが座り直してしまった。
「……ロロ、俺は書類を運ぶ手伝いを頼む事すら許されないのか」
「部下を見る目が養えてない馬鹿が人を使って良いと思うの?」
「ロロ…」
ロロの毒舌にデリックがおろおろと名を呼んだが、ロロの微笑みに見惚れて黙った。お前は本当にロロに惚れてるな。
デリックとロロ、そして俺は幼馴染だったからお前達の仲が良いのはとても嬉しいが……それはそれとしてデリックが見ていないところでロロに八つ当たりされたりしていた苦い経験がある俺としては、その笑顔は毒でしか無いと思うんだが。恋は盲目とは言うが、この二人を見る度にその言葉を実感する。
それはさておき、ロロの言葉に俺はペンを持っていない左手で頭を抱える。
「……確かに、俺の目は節穴だったらしいが」
…そう、ロロの言葉。そして俺が執務室で書類にペンを走らせている理由がそれだ。
俺は王の剣というSランクの冒険者パーティのリーダーだ。そして国王様直々の命に応える役目も持っている。ゆえに、国中を巡って困っている人達を助けたりしていたのだが………。
「節穴にも程があるだろう。リーダー」
完全にこっちを無視していると思っていたが、どうやら聞いていたらしい。アンナは顔を上げてロロの淹れた茶を飲みながら苦言を呈す。
「冒険者としての副業が忙しかったのはわからんでも無いが、騎士団長という本業を疎かにする……その時点で言い逃れが出来ん程の馬鹿だ」
「ぐっ…」
アンナの鋭い刃のような言葉に、俺は胸にナイフが刺さったような痛みを覚えた。た、確かに祭り事の時くらいしか騎士団長としての仕事をしていなかったのは事実だ…。
「その上、信頼して副団長に任命した相手がクズだったのだからな。実力の高さを見抜く目はあっても、その使い道や人間性を見抜く事が出来ぬのではただの博打でしかない」
「…………」
アンナの言葉に返す言葉が浮かばず、俺はただ自分の短い赤髪を掻き乱す事しか出来なかった。
……ああ、その通りだ。
俺はラチェスには凄まじい実力があると思っていた。事実成績も良かったしな。座学も実戦も良い成績を残す男だった。常にきちんとした姿勢を保ち、礼儀を重んじる性格…………だと、思っていたのだが。
完全に、騙されていた。
第四王女であるセレスティーヌ姫様曰く、ラチェスは自分より上の人間にだけそういった態度を貫いていたそうだ。そして、自分より下の者には狡猾な本性をさらけ出していたとも仰っていた。
…………ラチェスは信頼出来る人間だと思っていた。だからこそ、いやまあこれは言い訳にしか聞こえないだろうが、だからこそ俺は王都の事を任せきって国中を駆け巡れていたのだから。
だが、俺が見ていたラチェスの姿は偽りだった。姫様が国王様に、そして俺に見せたあの証拠こそが、真実だった。
孤児院への寄付を全て横領。他にも庶民への寄付金を一部横領。一定期間で一定の額を提出するようにと嘘の契約をさせられ金を搾り取られた者も居たらしい。
…獣人部隊隊長であるレオンからの証言も、酷いものだった。同じく王を守る為に働いてくれている獣人達に向かって汚らわしいだのと罵詈雑言の嵐。しかも嫌がらせとして怪我まで……。
それだけでは無い。我が騎士団に努力の末入団した者達まで迫害していたとは。自分の見る目の無さに嫌気が差す。
「言っておくがなリーダー。証拠として出された録音魔道具に細工がされていないか、そして嘘偽りで無いかなどを調べる為に駆り出された私への謝罪がまだなのは覚えているか?ある意味無関係である私は、確認の為だけにあんな胸糞の悪い陰口悪口を聞く羽目になったのだが」
「すまなかった」
「ああ、まったくだ」
謝罪をしても不愉快そうなままのアンナに、だがそれも仕方ないかと思う。
確かにアンナはこの件には無関係だったのだ。ただ、魔法に優れているからと呼び出されただけで。罵詈雑言を真実かどうかを判断する為だけに聞き続けなければいけない、というのは苦行以外の何物でも無いだろう。
「……ところで」
「何かしら」
気付いていないかのようなロロの言葉に、俺は自分の口角が引き攣ったのを感じた。
「…………何故、俺の執務室だというのに俺の机がこんなに端に寄せられているんだ」
そう、本来ここは俺の執務室だ。そして記憶が確かなら俺の机はこんな壁と壁に囲まれた端には無かった。扉を開けたらすぐに見える真ん中の位置に置いてあったはずだ。
「そしてその無駄に高そうなソファと机とティーセットは何だ」
この部屋には俺の机と書類などを入れる本棚しか無い部屋だったはずだ。だというのに、俺の机を端に退ける事で生まれた空きスペースに何故か見覚えの無いソファと机が置いてあった。しかもティーセットまで完備。執務室を何だと思ってるんだこいつらは。
菓子を摘まみつつ、ロロは答える。
「これらは全部ラチェスの私物よ。やらかし過ぎたせいで貴族である事も剥奪されて、家の物も全部差し押さえになってたから折角だしって貰って来ちゃった」
「貰って…」
…それは、良いんだろうか。不当な取り引きで誰かから奪った物なら返した方が良いだろうし、そうで無かったにしろどこか必要としているところに寄付するとか、解体してしまうとか……そういうのが正解なんじゃないだろうか。あとここに持って来る必要は無かったと思う。
だが何も言えない。ロロに逆らうと怖い。幼少期にデリックがロロ以外の女子にモテる度に八つ当たりで殴られていたせいで俺はロロに逆らえない。恐怖が染み付いてしまっている。
…………確か俺はこの恐怖を克服する為に騎士になったはずなんだがな。何故克服出来ないままなのに騎士団長に、そしてSランク冒険者パーティのリーダーになれたのだろう。恐怖は人を強くするとか、そういうアレなのだろうか。
「しかし、この量の書類を一人で片付けるのは厳しいんだが。誰か手伝っては」
「今まで部下に押し付けてた分の書類に比べれば少ないでしょう?何より始末書なんかも含まれてるんだから私達が協力するわけにはいかないわ」
「ね?」とロロが他の全員に微笑み、
「ああ、そうだな。すまないニコラス、俺はロロを全肯定するから協力は出来ない」
「私も無理だ。ロロの笑顔に逆らうと後が怖い」
「無力な俺を許してください…」
全員がロロの味方になった。つまり俺の敵になった。何故だ。王の剣のリーダーは俺のはずなのに何故ロロの方がリーダーっぽいんだ。味方が居ない。そしてデリック、良い笑顔で酷い事を言うな。男の幼馴染との友情は愛と恋に負けるのか。負けるな。相手がロロである事も含めると完全に俺の負けだな。畜生俺は何故こうも立場が弱いんだ。
「大体貴方、王都に戻って来てからも騎士団長としての仕事なんてまったくしてなかったじゃない。武道大会で目ぼしい人材を見つけては王の剣のリーダーとして、つまり騎士団長では無く冒険者として声を掛けてスカウトって……騎士団長としての自覚が薄いにも程があるんじゃない?」
「うぐぅっ…」
ロロの言葉が痛い。事実だから言い返せないというのも痛い。
……確かに、休憩時間の隙を突いては有望な冒険者をスカウトしていた。騎士団長としてはその時間を使って溜まっている書類を片付けるのが当然だろうに……。
「い、いや、だが今年は本当に有望な人材が豊富だったんだ」
そう、流石にアボットやオルコットのような危険人物はお断りだが、それ以外の人材は有望だった。
里見連龍は交渉役として来た人間だったからスカウトは出来なかったが、アーウェルとギルベルトという将来有望な弓使い二人に声を掛ける事は出来た。これは大きい。
俺達のパーティは、剣使いである俺、大剣使いであるバーサーカーのデリック、回復役のロロ、魔法使いであるアンナ、そしてサポートメインである暗殺者のローランと俺の補佐として剣使いのルークという構成だからな。遠距離はアンナとローランしか居ない現状、遠距離を担当する事が可能な弓使いは是非仲間に引き入れたい。
……まあ、アーウェルには、
「まだ幼い妹も居ますし、流石にいきなりそんな話は……ちょっと。一旦家に持ち帰って、妹と保護者のような人達と話し合ってから返事します」
と言われてしまったが。
ギルベルトにも、
「ふ、ふん!人間にしては良い審美眼を持っているな!確かに俺はSランクの冒険者パーティに所属しても見劣らんだけの実力を持っている!……だが、俺は親に黙って無理矢理王都に来たからな。流石に親に黙って勝手に所属するわけにはいかん。今は保留にさせてもらおう」
と、言われてしまった。
後で知ったが、ギルベルトはエルフからするとまだ未成年だったらしい。…そうか、確かにそれは保護者の許可が要るよな…と納得した。
しかし、二人共返答を保留にされてしまったのは残念だ。アーウェルもギルベルトもまだ未成年、だというのにあの実力。つまり、ここからどんどん伸びるという事だ。
戦場に出るには若い方が適しているし、学ぶ事も多いだろう。伸び代に期待出来るのは大きいし、若いからこその新鮮な発想にも期待出来る。だからこそ是非スカウトしたかったのだが……残念だ。
ああ、それと。
「そういえば、ミーヤにはまったく声を掛けれなかったな」
「ああ、そういえばそんな事を言っていたな」
デリックの言葉に俺は頷く。
何度もミーヤに声を掛け、ドラゴン退治での意見に対しての礼、そしてスカウトをしようと思っていたのだが……全て、話しかける前に終わった。
一回戦の後、声を掛けようとしたらミーヤは道に迷っているようだった。これは声を掛けるチャンスだと思っていたら、ミーヤは獣人部隊の隊長と副隊長にぶつかっていた。
もしミーヤが獣人に怯えてトラブルになるようなら落ち着けさせる為にも声を掛ける口実になるな、と思って見ていた。ら、ミーヤはまったく怯える事なく二人に話し掛け、道案内まで頼んでいた。
そういえばミーヤは狐獣人を従魔兼嫁にしていたのだった。一回戦でそれを知ったのに忘れていたせいで話しかけるタイミングを失った。
で、二回戦の後にも話し掛けようと思った。だが途中でスタッフに協力を要請され、ミーヤの控え室には行けなかった。代わりにトイレで酔い過ぎで床に吐いている男の所に行く羽目になった。釣られて吐くかと思った。
準決勝の後、ここを逃したらもうチャンスが無いだろうと思った。
どうやら里見連龍に付き添ってもらうようだったから、二人に声を掛ける絶好のチャンスだと思っていた。控え室で別れる前、そう廊下を歩いている時にでも声を掛けて…と思っていた。駄目だった。
廊下を走り回るスタッフ達、そして大声にかき消されてまったく気付いては貰えなかった。声を掛けようとはしたが、言い切る前にスタッフにぶつかってしまったり、人の波に流されてしまったりした。粘り強く声を掛けようとしたが、最終的にスタッフに、
「チッ、邪魔な木偶の坊だな」
と言われて心が折れた。すごすごと戻るしか無かった。
俺、騎士団長なのに。Sランク冒険者なのに、スタッフに木偶の坊扱いされた。泣くかと思った。
「ミーヤといえば、少し不思議な点があったぞ」
思い出したようにそう言うアンナに、俺は「不思議な点?」と復唱した。頷き、アンナは言う。
「知っての通り私は鑑定持ちだ。だから丁度気になっていたしと思いミーヤを鑑定してステータスを見ようとしたのだが……何故か、見れなかった」
「見れない?」
「それはおかしいわね」とロロは眉を寄せた。
確かにそれはおかしい。鑑定でステータスを見れないという事は、鑑定を使った人間よりもレベルが高いという事だ。だがアンナはSランクの冒険者。Eランク冒険者であるミーヤよりレベルは高いはず。
「何と言うべきか…レベルのせいで見れないというのとは少し違ったな。阻害系の魔法を何重にも使用されている、という感じだった」
「彼女がそれを使ってた、って事?」
「いや」
ロロの言葉にアンナは首を横に振り、
「恐らくミーヤの従魔兼嫁の仕業だろう。見れないならと従魔の方を見ようとしたら、褐色の女が私を見たからな。目が合った。次の瞬間鑑定が弾かれたから恐らくアイツが阻害している…と、思う」
と言った。
アンナの言葉にロロは「そう…」と頷いて、
「恐らく、独占欲でしょうね」
と……。は?
「独占欲?」
「だってその従魔はミーヤの嫁なんでしょう?会話もした事が無い赤の他人に自分の旦那のステータスを、そして自分達嫁のステータスを勝手に覗き見られるなんて……相手が女なら子宮を、男なら男根を引っこ抜きたい程の嫌悪でしょうね」
「えっ」
当然とばかりにそう言ったロロに、鑑定を掛けて弾かれたアンナが青褪めた。
ダークエルフゆえの褐色だからわかりにくいが、あれは青褪めている。アンナが青褪めるとは珍しい。いや、子宮を引っこ抜かれる可能性があるとわかれば誰だって青褪めるだろうが。
「まあその従魔は目を合わせた上で弾く事で「次は無い」って警告だけにしてくれたみたいだし、心が広いのね。私だったら相手を見つけた瞬間に頭をドンしてバンしてからずぶりぐちゃぶちぶちってしてから治して笑顔で牽制するのに」
「…ろ、ロロ。その擬音だらけの言葉が怖いのだが」
引き攣った顔でそう言うアンナにロロは少し考えてから、
「頭を壁に叩きつけて、壁に体を貼り付けにしてから、腹に手を突っ込んで子宮を掴んで引っこ抜いてから、綺麗さっぱりそんな事は無かったとばかりに治して笑顔で牽制するわ」
と訂正した。
いや、その訂正は要らなかった。アンナが青褪めるを通り越して血の気が引いて真っ白になってるぞ。ダークエルフなのに。そしてルークなんて吐きそうになっている。
デリック?あいつはロロにベタ惚れだからこの程度は余裕だ。「俺は愛されてるな」と笑顔で言えるくらいにはロロに対して脳が溶けている。幼馴染としては心配だが、まあ幸せそうだから良いんだろう。多分。
「……そういえば、ローランは何処に行ったんだ?」
ふと、ローランが居ないのが気になった。諜報係としても重宝されているから、そっちの仕事でも頼まれたんだろうか。そう思っていると、
「ああ、ローランさんはミーヤに惚れたらしくて追っ掛けの真っ最中ですよ」
と、ルークが言った。…………は!?
「ミーヤに会ったのか!?」
「あ、そこなんですね。会いました。ローランさんが宿屋に突撃して一緒に酒飲んだらしくて、オフだから完全にスイッチオフ状態で酔っ払っちゃったみたいで俺が呼ばれました。で、そん時にミーヤと話しました」
「そこは俺も呼べ!」
「いや、宿屋行って初めてローランさんが一緒に飲んでる相手がミーヤ達だって気付いたんですよ!」
ルークの言葉に、なら仕方ないかと俺は椅子に座り直す。思わず立ち上がってしまった。ルークに詰め寄ろうとしたらロロがティースプーンを俺に向かって構えたから移動は出来なかったが。
ロロが長い物を持っている時に動くととても怖い事になるという記憶は俺の深層心理に深々と刻まれているらしい。悲しい。
「ローランが惚れるとは……」
いや、ローランが元々惚れっぽい性格なのは事実だが。
しかし、あいつには悪癖がある。相手の好みに合わせようとしてしまう……という言葉を十倍にして煮詰めて抽出したかのような悪癖が。まあ、相手の人間が損するような事はしないが…ローランは、奉仕し過ぎる性格のようだからな…。
うーん、と頭を悩ませていると、ルークは苦笑いしながら言う。
「それがですね、何かいつもと違うっぽいんですよ」
「違う?……どういう風にだ」
「何て言うか……どうも「そういうのは要らない。でもまあ付き纏うのはお好きにどうぞ」って許可して貰った…らしく、て?」
意味がわからない。ルーク自身もいまいち意味がわかっていないらしく、俺は尚の事よくわからない。
「つまり、奉仕は要らないがこちらに害が無いのであればストーカー行為は好きにしろ、と?」
「あ、そんな感じです」
アンナの言葉にルークはそれだとでも言うような表情で頷いた。
……ストーカー行為は、害があると思うんだが。……ん?
「いや、待て。ローランは今、現在進行形でミーヤを追いかけているのか?」
「そうですね」
「「王都に居る間だけならね」って許可貰ったらしいです」というルークの言葉に、俺は心が音を立てて死ぬのを感じた。
「……先日。ラチェスが逮捕される二日前の事なんだが」
「?ああ」
デリックが頷いたのを確認して、俺は続ける。
「ミーヤという冒険者が獣人部隊の依頼を受けて出入りしているらしいと聞いて、隊長であるレオンに話を聞いたら「ああ、一日だけの依頼だったので今日は居ませんよ。というかもう今朝には王都を出たらしいです」と、言われた………」
思い出してブルーになり、机に肘をついて両手を組んで額に当てる。
「……それ、は」
「嘘を吐かれた、という事だろうな」
「まあ、獣人部隊の立場からすればあんな悪質な男を副団長の位置に置くという愚行を犯した男を信用は出来んだろう」
引き攣った表情でルークは視線を泳がせ、デリックは眉を顰めながらそう言い、アンナは冷静に客観的な意見を口にした。……た、確かに俺の信用性は低くて当然、だな。
自分の犯した罪の重さを再認識して落ち込んでいると、「それに」とロロが口を開いた。
「ニコラス、ロリコン疑惑があるから……合法ロリとも言える彼女に会わせるわけにはいかないって思ったんでしょうね」
「は?」
……ロリコン!?
「何故そんな疑惑が浮上した!?」
「ショタコン疑惑もあるわよ」
「だから何故だ!!」
聞き捨てならない悪評に叫ぶ。一番嫌なのは、ロロの言葉に対して他の奴等が「あー…」という顔をしている事だ。
おいルーク、「言っちゃった…」ってどういう意味だ。「本人に聞かせるのは酷だと思って隠していたのに…」ってどういう事だデリック。知ってたのか?そしてアンナ、「まあ、いつかは知る事になるだろうからな。今知る事が出来たのはまだ幸運だろう」って本当にどういう意味だ。どこが幸運なんだ。
「だって」
俺の疑問にロロは答える。
「ニコラス、未成年をスカウトする事が多いじゃない」
「伸び代に期待が出来るからな!?」
凄腕とはいえ老人をスカウトしても無駄になる事が多いだろうが!里見連龍といい、大体凄腕で老人だと他の所に所属済みだからな!なら未所属で腕に期待出来るのはとなると未成年が多くなるのは仕方ないだろう!
成人済みで未所属で凄腕なんて、単純に実力を見抜かれていなかったからならともかくアボットやオルコットのような危険人物である可能性の方が高いし!
「未成年の方がスカウトしやすいとか、悪質な勧誘みたいな事を言うし」
「成人済みで凄腕だと他にも引く手数多だろうから、早い内に俺のパーティに所属してもらって才能を伸ばす方が確実だからだ!」
それ以外に無い!確かに聞きようによっては怪しいかもしれないが!だが既に職を持ってるとスカウトを断られる率が高くなるんだから仕方ないだろうが!
「ニコラス本人は独身だし」
「うるさい」
放っておけ。若い時は恋人が居た時もあったが、仕事を優先し過ぎて気付くと破局しているんだ。
「で、独身の上に未成年スカウトが多いからロリショタコン疑惑が浮上してるってわけ」
「俺だって良い相手が居てくれたら普通に結婚したいわ!誰が未成年を恋愛対象に見るか!」
「だから合法ロリを狙ってるんじゃないかって思われたんじゃない?」
その結果ミーヤ不在という偽情報を掴まされた、と?
違う…俺は、俺はただ礼とスカウトをしたかっただけなんだ…。
「……あ、リーダー大変だ」
「何だ、アンナ…。俺がロリコン疑惑を持たれている以上に大変な事があるのか…?」
はは、と乾いた笑みをアンナに向けると、アンナは真顔で答えた。
「称号にアンラッキーボーイとロリショタコンが増えたのは、疑惑よりも大変な事だと思うぞ」
神よ、本業を疎かにするのはここまでの罪なのですか。
ちなみにですが、数日掛けて書類を終わらせたニコラスは改めてミーヤに会いに獣人部隊へ行きますが今度はガチでミーヤが王都を出発済みで会えないという不運に見舞われます。残念!




