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セレス凄い



 あの後身嗜みを整え、食事を済ませて獣人部隊へと出勤した。遅刻にはならなかったから一安心である。

 それはまあ置いといて、お昼の現在私は休憩所で洗濯物を畳んでるわけなんだけど……朝の会話がよくわからなかった。



「そういえばミーヤ、写真のお陰で今朝は精神的に助かった。ありがとう」


「ほわっつ?」



 おはようの挨拶の直後にレオンさんから言われたいきなりの言葉に目が点になったよね。



「えーと、写真?」


「ああ。今朝姫様がくださったんだ」



 ……うん、まあ、確かにローランが獣人部隊とかにーとか言ってたよね。だからって昨日の今日どころか今日の今日で出回ってるとは思わなかったけどね!

 許可したの私だし、あまり言及はしないでおこう……と思って、



「今朝って何かあったんですか?精神的に削られるような事でも?」



 って聞いたら、



「ああ……まあ、これに関しては後で姫様が来て説明するだろうから言わないでおくが……」



 レオンさんはもごもごと言葉を濁しつつ鬣を撫でて、



「……正直、内臓が縮み上がりすぎて死ぬのではないかと…」



 と、酷く遠い目でそう言った。

 結局レオンさんはそのまま鍛錬に行っちゃったけど、どういう事だったんだろう。

 心を読んだっぽいイースも、



「…………まぁ、いきなりそんな事になったらそうなるわよねぇ」



 としか教えてくれなかったし!

 後でわかるわよぉ、って言って教えてくれないんだもん。……あ、でもセレスが後で私に報告するって事は、ラチェス関係だったりするのかな?レオンさんと王様とセレスで色々話し合いがあったとか?だからレオンさんが精神的に削られたとか?

 ……うん、何かこれな気がするね。ラチェスの悪行報告&これからどうしてやろうかの作戦会議の可能性が大だ。



「いよーし、ラスト終わり」



 靴下を丸め、最後の洗濯物が片付いた。よしよし、これでゆっくり出来る。

 正確にはちょいちょい来る怪我人の治癒もしないと駄目だから完全にゆっくりとはいかないけど、でもまったりしたお茶タイムに移行出来るし、一仕事終わった感でスッキリするんだよね。

 にしても、ネヴィルさんを筆頭に皆が自分らしい戦い方を見つけようとしているのか怪我が多くてちょっと申し訳ない気分だ。

 ネヴィルさんの場合は小柄さと素早さを生かして大きな敵を翻弄する、っていうのを今は目標にしてるらしいし、それは実際上手くいっている。でもネヴィルさんの方の疲労でふらついた瞬間に攻撃を入れられれば怪我するし、スピードの調整が咄嗟に利かなくて勢い良くコケちゃったりしてるらしい。

 他の人達もそんな感じで、結構頻繁に休憩所に顔を出してる。まあ、大怪我になる前にちゃんと来てくれるのは凄く助かるから良いんだけどね。

 ちなみに怪我以外にも助言を求めて来る人も結構居る。私別に動物博士じゃないからちょいちょい困るけどね!でもそんな時はスマホ検索と、色々詳しいイース先生&アレク先生の知恵を借りてどうにか助言してる。数学とか書類とかに比べれば得意分野で本当に良かった。

 ハニーの蜂蜜を入れた事で花の香りがする甘いお茶を楽しみつつそんな事を考えていると、突然休憩所の扉が勢い良く開いた。また誰か怪我人かな。扉を壊しかねないあの開き方はビルさんみたいな大型の肉食系獣人の可能性が高いけど……と、扉の方に視線を向けると、



「やっとお勉強の時間が終わったので急いで来てしまいました!昨日ぶりですね、ミーヤ様!」


「ごっふ」



 思いがけないセレスの登場にうっかりお茶が気管に入った。えっほえっほとえずきながらどうにか呼吸を整え、ふうと息を吐く。あービックリした。大型肉食系獣人かと思ったら10歳の美少女な姫様が居るんだもん。姫があんな勢いで扉開けるとは思ってなくて想定外のあまり噎せちゃったよ。



「ほら、姫様があんなゴリラみたいな勢いで扉開けるからミーヤが驚いて噎せちゃってるじゃねーっすか。もうちっとお淑やかなレディ目指して静かに動くように」


「お淑やかなレディじゃ発言力が無いじゃない」


「発言力があるお淑やかなレディを目指す気は?」


「嫌よ。立場の差すら理解していない馬鹿貴族にナメられるもの」


「あーあ、まーた王様が嘆くよーな事を…」



 はーあ、とタバサは溜め息を吐いた。

 ……うん、でもセレスのその言動、タバサの責任な気がするよ。多少行動や言動に難があっても、仕事さえ完璧にこなせば問題無しって前例として見られてるんでは……と思ったけど、私は何も言わないでおこう。そんな可能性には気付いていない。

 さて、意識を切り替えてとりあえず、



「昨日ぶり、セレス」



 挨拶しよう。

 挨拶を返すと、セレスはタバサから私の方へと視線を移動させて嬉しそうに微笑み、近くの椅子へと座った。続いてタバサがセレスの横の椅子に座る。

 ……態度は適当だけど、人柄悪く無いし、仕事完璧だしでマジ凄いよねタバサ。こうして見てると完璧従者にしか見えないし。喋り始めるとアレ?ってなるけど。

 そんな事を考えていると、セレスは小さくコホンと咳払いをした。



「まず、写真の事に関して。許可を出していただき、本当にありがとうございます」


「ミーヤからしたらかなりキッツいんじゃないかって思いますけどね」



 セレスの言葉、そしてセレスの言葉に対してのタバサの言葉に私は苦笑いで答える以外の選択肢が無かった。まあ、うん、盗撮宣言されたしね。でもその後のローランの言動が一番キッツかったからもう何か、写真程度大した問題に感じれないのがアレだよね。麻痺しちゃってる。



「あーっと、うん。正直どういうこっちゃねんとは思ったけど、まあ…」



 感覚的には好きなアイドルのポスターや写真、もしくは推しキャラのグッズみたいな物かなーって思って。



「良っか、別にって思って」


「軽くないっすか?」


「早朝だったから色々鈍ってて」



 今も特にそれ以外の感情湧いてこないから単純に素で「良っか、別に」って考えになったんだろうけどね。

 そもそも、危険そうなら許可しないって。セレスが関わってるなら悪用なんかはされないだろうなってわかった上での許可だし。姫様がバックに居るなら安心だもん。



「にしても、もう出回ってるとは思わなかったけどね。今日の今日じゃん」


「ふふふ、今の所ローランと私以外では獣人部隊隊長であるレオンだけですけどね」


「ちなみにレオンに渡されたのは飯食って満面の笑みのミーヤの写真でしたよ」



 その注釈は要らなかった。つかローラン、あの後即行で戻って来て写真撮ったのか。全然気付かなかったけど……まあ、忍者ならそのくらい余裕か。

 あっ違う、暗殺者なら、だ。口布や着物っぽい服のせいでついうっかり忍者だと思い込んでた。暗殺者だ暗殺者。広義的には変わらないけど。



「あ、それともう一つミーヤ様にお話しなくてはならない事があるんでした」



 ラチェスに関して、かな?

 レオンさんから朝聞いた話からすると、ラチェスを逃がさないように確実に捕らえるぞ作戦とかだろうか。最悪の場合私が囮になる作戦が考えられてる可能性もあるかなーと思うとちょっぴりブルー。

 いや、ほら、小説だとよくそういうのあるじゃん?悪事バレした原因は私ですよって噂を流して確実な証拠ゲッツして捕まえるぞ的な展開。

 この作戦の場合は最悪なパターンだから違いますように、と神に祈りつつ、私は精神を安らげる為にお茶を飲む。美味しい。



「実はですね」



 セレスは小さな両手を合わせ、首を小さく傾げて可愛らしい笑顔で言った。



「ラチェス、投獄されました!」


「ほわっつ!?」



 私の想定外の言葉を。

 …え、投獄?投獄っつった?

 えーと、ちょっと待ってね。投獄の意味の脳内の辞書で調べるから。確か投獄ってのは罪人を牢獄ん中に放り投げる感じの意味だった気がする。大体そんな感じだったはず。多分。

 ……………投獄!?



「東の国では無く?」


「それ東国っすね」


「牢屋に放り込むタイプの?」


「その投獄っす」



 タバサの頷きに、どういう反応をすれば良いのかわからず私は頭を抱える。



「……昨日の今日、時間的に考えるとほぼ半日で……?」


「はい」



 セレスがにっこり笑顔で頷いたのを見て、とりあえず考えるのを止める事にした。

 そうだよ、目の前に居るのは一国の姫だもんね。しかも子供なのにめちゃくちゃ頭が良い子。先に証拠をしっかり集めようとするくらいには準備を怠らないし………いや、



「それでも、あの、早くない?証拠足りた?即行で牢屋ぶち込めるモンなの?」



 困惑しながらそう聞くと、セレスは口元に人差し指を当ててまるで大人のように微笑んだ。




「ミーク様が被害に遭っていた件だけでも、クロだと確定させる証拠には充分ですもの。その後他にも庶民の方達から被害に遭った方の被害報告を集め、確実に牢屋入り確定になるであろう証拠は集めれていたのです」



 「ですが」とセレスは言う。



「あと一手、ラチェスから貴族の肩書きを剥奪するにはあと一手が足りなかったんです」


「だが、そこで王城内、つまり王の管轄内での横領事件だ。王城外での庶民相手の場合は不正とはいえ書類による契約があった。そのせいで一手足りない状態だったわけだが……」


「そう」



 セレスはうっすらと微笑んだ。



「獣人部隊からの横領、嫌がらせ。他にも庶民の出である騎士や兵士に対する迫害。これらは獣人部隊が証拠を出してくれました」


「これに関しちゃ、契約なんてねー個人的ないじめだ。しかも王や国を守る獣人部隊や騎士、兵士に対するその対応は……言い方を変えると、王に対しての反逆とも捉えられる」



 ニヤリと笑ってそう言うタバサに、成る程と私は頷く。

 確かに考え方を変えると王を守るべき存在への誹謗中傷は、王への誹謗中傷を彼らが受けているとも捉えられるわけだ。だって王へ攻撃させない為に、身を呈して王を守る人達だもんね。そういった考え方もあるとは思わなかったけど。

 そしてセレスはうっすらとした笑みから花畑が一斉に開花したような幻覚が見える程の華やかな笑顔を浮かべ、言う。



「これだけでは身内のじゃれ合いだと言い逃れる可能性がありましたが、ミーヤ様のお陰でその言い訳を使用不可能にさせる事が出来ました」



 「それにより、これが確実な決め手になったとも言えます。本当に助かりましたわ」とセレスは頭を下げた、が、



「私の……?」



 私のお陰と言われても、心当たりが無い。ハテナマークを浮かべながら首を傾げていると、タバサが簡潔に説明してくれた。



「ホラ、ミーヤが報告したじゃないっすか。副隊長の怪我を治したって」


「ああ、言ったね」



 それが?と視線で訴えると、セレスが「ふふふ」と微笑んだ。



「王城の関係者では無い一般人。そして治癒魔法の使い手でもあるその人が「獣人であろうとも夕方まで掛かる怪我」を負わされていたと証言した。部外者である一般人、それもその時が初対面だった人間の証言がソレ、ですよ?」


「で、それが獣人じゃなくて人間だったら最悪二本足で立つ事すら出来なくなる可能性がある級の怪我を負わせた、っつー証拠にもなるわけだ。しかも大事な武道大会というイベントの前に、な」


「この証言のお陰で、ラチェスの逃げ道を完全に潰す事が出来ました。完全なる部外者であり、会ってから数日しか経っていない人間。依頼を受けてこそいるものの、依頼内容の仕事量に比べればかなり安価で依頼を受けてくれている方。しかも報酬を増やそうとしても定価以上は断る精神性」



 セレスの後に「何より獣人部隊、横領されてたせーで渡せる賄賂も無いわけだし」とタバサが続け、



「完全なるシロと断定して良い方がそう証言してくださったお陰で、全てがスムーズに進んだのです」



 と、セレスが締め括った。

 …………いやいやいやいや!?



「私の証言はあくまでフレーバーじゃない!?証拠集めたセレス達と獣人部隊の方々の下ごしらえがしっかりしてたからだと思うわけでござーますのよ!」


「下ごしらえって料理かよ」



 ツッコむなタバサ!似たようなモンでしょ!

 しかし、セレスは引いてくれなかった。椅子から立ち上がり演説のように語る。



「いいえミーヤ様!確かに言い逃れ出来ないように被害報告をしっかりと集め、それをお父様に見せたりもしましたわ!けれどそういったものは主観が入る可能性も高く、信じるには少し足りないのです!何よりラチェスは自分より上の身分に取り入るのが得意でしたし……」


「おーさまも優しいトコあり過ぎるしな」


「そう、例え愛する娘である私、今までも裏で良く無い事をしていた貴族の悪行を丸裸にしてきた実績を持つ私であっても、決め手には足りませんでしたわ」



 「けれど!」とセレスは叫ぶ。



「被害者でも無く加害者でも無く!通りすがりに会い、道案内のお礼に治癒を施しただけの人間がそう証言したというのが大きいのです!何も知らない人間ですらそう判断する程の怪我!治癒を施した本人がそう証言した怪我!無関係の人間がそう判断したという事実は、何よりも証拠としての力を持ちますわ!」


「被害者だと無意識に実際受けた被害よりも大きく言いがちになる事もありますからね」



 「しかし、ホントーに無関係の、治癒を施しただけの人間の証言はそうじゃない」とタバサは続けた。



「わかりますか?ミーヤ様。ミーヤ様の完全なる客観的な視点のお陰で、あの極悪非道なクソ貴族であるラチェスを隔離する事が出来たのです!ミーヤ様はもっと自信を持って胸を張って自慢するべきです!」


「それ自慢したらもう私じゃなくない?」



 私、そんなキャラじゃないし。

 そう返すと、納得したのかセレスは「…それもそうですね」と言って座り直し、静かにお茶を飲み始めた。え、あれ、あのお茶いつの間に?ああ、ハニーが淹れてくれてたの?セレスの語りが凄くて気付けなかった。ありがとね。

 お礼としてハニーをよしよしと撫でていると、お茶効果か落ち着いたらしいセレスが口を開いた。



「少々熱くなってしまいましたが、これが本日の早朝にあった出来事ですわ」



 「本当に、ありがとうございます」とセレスは頭を下げた。「あんがとな」とタバサまで頭を下げた。すぐに二人は頭を上げてくれたけど、本当に頭を下げるの止めてくれないかな。偉い人が私に頭を下げるの見てて内臓がギュッて小さくなるんだけど。

 ……レオンさんもこんな気持ちだったのかな。嫌なシンクロだ。



「まあ、ラチェスとやらによる被害がこれ以上拡大しない内にどうにかなったのはめでたいよね。良かった」



 投獄までに時間が掛かると、その間に被害増えちゃうもんね。



「にしても随分と朝早くに解決したね?」



 話を聞いてると今日の早朝、恐らく私達がローランと話してる時くらい早い時間にそんな大きなイベントが起きてたっぽいけど。

 私の言葉にセレスは頷く。



「夜寝ている内に、諜報が得意な者達に必要な情報を集めてもらっていましたから。そして起床し、朝食までの時間にそれらを把握。朝食の時間にお父様に大事な話があるので時間を空けておいてくださいと言い、食後に話し合いを始め、全てを理解したお父様の判断によりラチェスを投獄……という流れでしたから」


「起きてから髪整えてる間にホーコク読んで、「こういうのは早い方が良いわよね?…逃げる時間も無いくらい早い方が」でしたもんね」



 「お陰で予定が早朝からいきなり狂って俺ら従者達めーっちゃくちゃ大変だったんすよ」とタバサが疲れた様子で愚痴った。ああ、うん、確かに当日いきなり予定変更はキツいよね。

 しかし素知らぬ様子でセレスは「ふふふ」と微笑む。



「害虫退治は即断即決が重要じゃない」


「まあそうなんすけどねー」



 「でも副隊長が不在になって隊長であるニコラスが嘆いてましたよ」とタバサが溜め息混じりに言った。



「そーんな人間を部下として、副隊長としてシンライしていた事に対する自分への怒りとか、見抜けなかった自分への苛立ちとか、そして始末書とかその他諸々の書類せーりで執務室から出られない事に」


「まあ今まで仕事の殆どを副隊長任せにして、王の剣としてあちこち行ってたツケだよなって感じだけどな、俺らとしては。仲間から見てもリーダーってとにかく困っている人を助けなければ!の精神だし。仕事にかまけて家の事を顧みない亭主みたいな?」


「ん?」



 え、誰だ今の声。

 タバサの後に喋った聞き覚えがある声に、違和感。え、誰?男の声だから女は除外するとして、タバサの声じゃない。つか直前に喋ってたし。コンでもアレクでもハイドでも無い。そしてイースでも無い。

 …というか、下の方から声が聞こえたような気が……。

 恐る恐る机の下を見てみるが、誰も居ない。え、何だったの今の声。怖いんだけど。そう思っていると、



「あ、ミーヤ違う違う。こっち。ミーヤが座ってる椅子の下の影」


「は?」



 声が言う椅子の下から、声が聞こえた。言われるがまま椅子の下の影を見てみると、



「………は?」


「よっ」



 ……ローランが、生えていた。

 いや、ちゃうねん。生えてるっつーか、何つーか。何か、こう、生えてるんだって。

 具体的に言うと、椅子の下の影からローランの頭部が生えていた。より具体的に言うなら鼻から上が生えていた。



「……どーゆーこと…?」


「俺の得意な闇魔法」



 影から手を出してピースしたローランは、椅子の下の影から上半身をずるりと出した。下半身は未だ影の中だけど。ローランは上半身だけで床に寝転がるような体勢になり、説明を始める。



「影をちょいと魔法で操作して、容量とかを捻じ曲げて内部に空間を作るんだ。相手に気付かれず自動で追跡出来る、暗殺者御用達の魔法なんだぜ」



 「まあ、結構高度かつ繊細な技術要るからあんま使える奴いねーけど」という小声が聞こえたのはスルーしよう。スルー大事。じゃないとかなり凄い暗殺技術でストーカーされてるという事実に気付く羽目になってしまうからね!ええ気付いてませんよ!

 というか、これか。今朝窓から飛び降りて消えたのこの魔法かな?その辺の影にダイブでもしたんだろうか。アレクが魔法の気配がどうとか言ってたからそれっぽいね。



「つかミーヤ、俺が潜んでるの気付いて無かったのか?」


「気付くか!いつから影に潜んでたのかすら知らないよ!?」



 つかわかるわけないでしょうがそんなん!



「いや、だって、ミーヤの従魔は気付いてたっぽかったから」


「……そうなの?」



 確認すると、



「まあ、気付いてたわよぉ」


「ミーヤ様の足元から慣れない気配を感じましたし」


「魔法……影、だから…。床から……の、振動……で、気付いてた…」


「俺はまあ、匂いで」


「僕は影に何か見覚えのある魂があるなーって」


「ミーヤじゃなかったからすぐわかったぞ?」



 全員気付いとったんかい!!

 えー、やだ、私だけ鈍いみたいじゃん…。ちょっとブルーな気持ちになっていると、ローランはケラケラ笑った。



「まあこの魔法、気付かれたらアウトだしな。ミーヤにバレてなかったならセーフだろ。ちなみに影に入ったのは門をくぐった瞬間な。門の影で入り待ちしてたから」



 アイドルの追っかけかよ。入り待ちて。

 ローランは口布で口元が隠されていてもわかる程晴れやかな笑顔で言う。



「ミーヤの写真撮影、こんな感じで撮る事にしたからよろしくな!」


「ローアングルが多くなりそうな撮り方だね…」



 まあ良いけど。短パンだしタイツだからローアングルだろうと問題無いし。

 そう思っていると、ふと思い出したようにセレスは言う。



「ところでミーヤ様、色々と協力してくれたそうだから、とお父様がミーヤ様と会ってお話をしたいそうなのですが、どうします?」


「勘弁してください」



 そう言って頭を下げる以外、私に選択肢は無かった。



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