私にとって手紙って言ったらメモに書かれた三行程の文字の事です
「ラチェスとかいう奴、もう逃げ道無いだろうね」
「ああ、セレスが本気になっちまったみたいだしな…」
私の言葉に、コンは遠い目をしながら同意した。
現在私達は宿屋に居た。え、何でって?そりゃ夜だからですよ。既に服屋も見て回り済みである。
…………いや、うん、あの後の展開をカットしたのは申し訳無いと思うよ?でもあの後書類をある程度整理し終わってから、
「ミーヤ様、ここまで巻き込んでおきながら何をと思うかも知れませんが、ミーヤ様達はただ巻き込まれただけの無関係な人間。これ以上巻き込むわけには行きません」
「そもそもこれ、王城内での問題っすからね。まあ対応が遅れたせいで王城内に収まってませんけど」
「獣人部隊を代表として、私からも。ここから先はミーヤに依頼した内容とは異なる事だ。不要な危険に身を晒させるわけにはいかん」
って言われたんだよ!
巻きこまないようにしてくれたのはありがたいし、私も正直「私無関係な一般人なのに何でここに居るんだろう」って思ってたから助かったけどね!
そんなわけで他の獣人隊員さん達にも事情聴取するらしくて、今日の鍛錬は中止。私達は本日早退する事になったのでした。ちゃんちゃん。
「まあ事情聴取は今日中に終わらせるって言ってたし、明日にはもう通常営業に戻るっぽいし……」
門まで送ってくれたレオンさんも普通に「では、また明日」って言ってたしね。
「依頼は多分、続行って事だよね?」
「だと思うぞ」
コンの頷きに、じゃあ確定だねとちょっと安心。獣人って五感が優れてるせいで言葉が少なくなりがちなんだもん。同じ獣人であるコンがそう判断するなら合ってるだろうし、とちょっと気が楽になった。
だって!こういう!仕事があるかないかよくわからん状態程困るものって無いじゃん!?サボったとは思われたく無いしね。
っと、
「良し、ラミィの髪乾いたよ」
「…ん。…ありがと、ミーヤ……」
「どういたしまして」
すり、と私の胸に乾いた頭を擦り付けてきたラミィを微笑ましく思い、ぽんぽんと頭を撫でる。ついでに頭頂部に軽くキスも落としておく。まだこの程度しか出来ないけどね。
さて、ラミィの髪も乾いたし……後は寝るだけ、かな。もうご飯も食べたしお酒も飲んだし、お風呂もスキンシップも済ませた。うん、後は寝るだけだね。
そう思ったタイミングで、
「たっだいまぁ~」
「食事」に出かけていたイースが戻って来た。
「お帰り、イース。早かったね?」
「それがねぇ?ご飯どころじゃなくなっちゃったのよぉ。慰めてぇ~」
「おおう」
何かあったのか、イースは落ち込んでいるような怒っているような、とにかく不機嫌な様子をあらわにしていた。
座っている私の前にはさっきまで髪を乾かしていたラミィが座っているからか、イースは私の背中から抱きついてきた。おっぱいの圧が凄い。
とりあえず私の肩の辺りにあるイースの頭を撫でると、少しだけイースの気持ちは和らいだらしい。私を抱き締めている細い褐色の腕に込められている力が少し緩んだ。
「何かあったの?」
「嫌な事があったのよぉ」
珍しく、というか初めて見るレベルでレアな甘えたモードなのか、イースは私の首にぐりぐりと額を押し付けた。可愛い。あと頼りにされてるようで嬉しい。
……大分私、夫としての考え方になってきたよね。
一先ずよいしょ、と体の向きを変え、イースを正面から抱き締める。
「イースが嫌な事、なんて珍しいね。どしたの?」
聞くと、イースは一度だけ強く私の胸にぐり、と頭を擦り付けた。
そして顔を上げ、アイテム袋から一枚の手紙を取り出す。
「……これが来たのよぉ」
「手紙?」
「そう」
「受け取り拒否したのにあのコウモリ……」とイースが殺気を滲ませながら小さく呟いたのは聞かない振り。そんなに嫌なのかその手紙。
「見ても良い?」
「良いけどぉ……」
もご、と少し口篭ってから、イースは上目遣いで私を見つめた。
「……私が一緒に居たいと思ってるのはぁ、ミーヤだけよぉ」
……ふむ。
今のイースの言動、手紙を嫌がっているイースの態度、そしてイースが持っている手紙は見るからに高級そうだわ禍々しいわで……。
「もしかして、これ魔王からの手紙?」
「職場復帰しろコール&どうせ無駄になるんだから結婚なんて認めないって感じの内容だったわぁ」
「かつて上司だったってだけでぇ、そんな権限無い癖にあの小僧…」という小さな声は聞こえなかった。ええ、超至近距離なのに聞こえなかったんですよ。気のせい気のせい。
でもイースがここまでダメージを受けたようにぐったりしてるのは珍しい…というか、おかしい。イースの背中を軽く撫でつつ、「手紙読むね」と言ってから既に開けられている封筒から中の手紙を取り出して読む。
「イース様、ジュースに蜂蜜を入れた物です。お飲みください」
「…ありがとう、ハニー。もらうわねぇ」
メンタル、体力、魔力の回復に最適なキラービーの蜂蜜入りジュースを飲み、イースは大分体から力が抜けたらしい。帰って来た時に比べてリラックス状態になっていて何よりだ。
さて、手紙の内容だけど……。
「………………」
…違うんだ。
待って、待って、一旦待とう。別に私は手紙が読めてないわけじゃないんだ。ただちょっと小難しい言葉使いっていうか、堅苦しいっていうか、面倒くせえなっていうか、その、うん、回りくどいなってだけ。読めてないわけでも理解出来ないわけでも無いです。
ただほんの少しで良いから文字の読み込みと書いてある文字の理解と、そして最終的にこの文章を全部合わせるとどういう意味になるのかっていうね、そのね、時間をね、ください。
手紙なんてせいぜいお姉ちゃんや学校の子とちょっとしたメモのやり取りしかした事無いんだよ私は!現代っ子だから!女子高生だから!こんな回りくどい嫌がらせみたいな文章暗号でしかないわ畜生が!
「……ふふ」
私の肩に顎を乗せた状態のイースが微笑んだ声が聞こえた。……うん、まあ、私は完全に素だったけど笑顔になれたなら良いや。この手紙が難しかったお陰だね。
いやこの手紙のせいでイースは落ち込みモードになってるんだからお陰じゃねえわ。コイツのせいだわ。でも珍しい甘えモードが見れたのはこの手紙のお陰ってのもまた事実で……こんな事に思考を割くな私!今は!手紙の解読が最優先!おーけい!?
「……………………」
……良し、どうにか解読出来た。畜生魔王め。難しい手紙を出しやがったうえに内容もクソとは中々のクソ野郎。一発物理でも精神的でも良いからパンチを入れて泣かせたい。もしくはぎゃふんと言わせてやりたいぜ。
手紙の内容は簡潔に纏めると、
「今までは完全に所在不明状態だったが、最近は人里に頻繁に顔を出しているらしいな。ならば復帰も可能だろう。お前が居なくなってから仕事溜まってるからそろそろ復帰しろ。あと部下が言うには夫が出来たらしいが、淫魔であるお前がそんな関係を維持出来るはずもない。どうせ金や権力、物に色事にしか興味の無いつまらん人間だろうしな。さっさと魔王城に顔を出せ。そして復帰しろ。お前の夫とやらには別れる際に金や物品をくれてやるから」
というような感じだった。
簡潔に纏めてこれだよ!長い!原文長い!しかも堅苦しいし回りくどいし!あれ、あの、あれ!日本独特のオブラートに、嫌味を付け足してミルフィーユした感じだった!苦味とえぐみしか無いよ!美味しくない!
そして!何より!
「コイツマジ私の嫁への愛をナメてんのか」
これ!本当に!これ!
そりゃ確かに私は魔物使いだからお金や物品なんかは従魔頼りになっちゃうけど!だからって権力になんざ興味無いわ!しかもイースの場合元魔王軍幹部だからね!?「元」だからね!?そこに権力は存在しませんはい論破!
大体ハッキリさせてもらうと私がイースに落ちたっつーか、最初あれだけ拒否してた従魔ハーレムを受け入れたのはイースの料理に胃袋を完全に掴まれたからだからね!?ある意味「物」ではあるけれど!貴様が思っとるようなクズちゃうわいや!!ああもう怒りで語尾が迷子!
しかも!しかもね!?
「魔王城に復帰予定で来るならばきちんと夫にこの話を通しておけ。魔王国、それも魔王城近くまでの船のチケットも同封しておくから別れが確定したならこれを使用して城まで来い。別れの金品を相手に渡してやる。ちなみに拒否権は無い。来ないのであれば戦争の火種になる可能性があるという事も理解しておくように」
って!!書いてあるんだよ!!
ふっざけんなテメェ表出ろやそのツラ剣山でぶっ刺すぞオイ!って叫びたいレベルの!手紙!不愉快!
「誰が別れるかってのこの野郎……!!」
ぎゅう、と私はイースを思いっきり抱き締める。
そりゃまあ最初の頃ならね?イースが復帰したがっているようなら、別れる気なら仕方ないかなって言ってたと思うよ?
でもイースそんな事言ってないから。私の方選んだから。帰さないから。
つーかね!こちとらもう嫁大好きの愛妻家なんだよ!吹っ切れてるし!だから別れたいっつっても一筋縄で別れてやる気ねーから!きちんと話し合ってから意見の擦り合わせとかするつもりだから!別れる気ねーから!!
……でも、
「うぐおおおおおお……」
「ミーヤ、大丈夫?そんなに手紙の内容酷かった?」
「酷かったし、どういたらえいがよって感じ……」
「何語?」
「多分どっかの方言…」とアレクに返し、私はイースを抱き締めたまま頭を抱える。
別れる気は無い。だが戦争の火種は勘弁して欲しい。そして私は魔王をぎゃふんと言わせたい。
ど~~~~ぉ~~~しよ~~~~……と、考えていると、
「ミーヤ」
耳元で、男なら前かがみになるであろう色っぽいイースの声がした。
「ミーヤは魔王様に反抗するつもり……なのよねぇ?」
いつものような口調、しかし少しだけ不安が混ざっている声だった。その不安を吹き飛ばす為、私はハッキリと宣言する。
「当然。誰が愛する嫁と別れるかよ」
ニッと笑って見せたが、しかしすぐに魔王の野郎への苛立ちが込み上げて来た。
「大体ブラック会社の「元」上司でしか無い奴に言われて言う事聞くなんてただの馬鹿じゃん。イースが金品程度と同価値なわけも無かろうにああ腹立たしい!」
「落ち着けミーヤ」
「ミーヤ様、ジュースをお飲みください」
ハイドに頭を撫でられ、ハニーに差し出された蜂蜜入りジュースを飲んで一旦クールダウン。いかんいかん、熱くなっちゃった。
反省していると、私の耳元でイースは「…ふふっ」と笑った。
「実はねぇ?対抗策が無いわけじゃ無いのよぉ」
「マジで?」
「マジよぉ」
イースは私の胸から離れ、隣に座った。そして私が持っていた手紙を魔法で宙に浮かせてから、火魔法で出した炎でその手紙を炙り始めた。
「………炙り出し?」
「そうよぉ」
「わかりにくい方法で書く辺りぃ、本当に嫌らしくて嫌よねぇ」とイースは溜め息を吐いた。その表情には、もう動揺は見られなかった。いつも通りのイースに戻っている。
「……うふふ、ミーヤがあそこまで言ってくれたんだからぁ、不安になる必要なんて無いでしょう?必死に抑え付けてはいたけどぉ、内心凄まじい荒れっぷりだったしぃ」
「言及しないで」
確かに内心大荒れ状態だったけど。ニュースで台風の情報をお伝えしてるタフなレポーターさんだろうと吹っ飛ばされるだろうなってレベルの大荒れだったけど。
そう心の中で言い訳をしていると、炙り終わったのかイースが手紙を手渡してくれた。あ、裏面に文字浮き出てる。炙り出しなんてリアルで見るとはトリップ前は思わなかったな。トリップ後も思わなかったけど。
さて……ちょっと待ってね、解読するから。
「えーと………」
…良し!解読出来た!オッケー理解した!
簡潔に纏めると、
「もし別れないと言うならば、その愛を証明して見せろ。こちらとて戦争は本意では無いからな」
って書いてある!
えーと、そんで続きが、
「愛の証明の為に、今から書かれている項目を成し遂げて見せろ。その上で魔王城に来るが良い。勿論成し遂げるだけではなく、証拠となる物品も持って来るように」
って書いて……物品でどうにかなるって考えなのかな、この魔王。お前が一番俗っぽいぞ。
まあそれはさておき、証明の為の項目は……項目を簡潔に纏めると、
「まず魔王国に入国してから、ラミアの集落→デリートゥノール山→トモノギ村→人形館→カジハトゲ村の順で魔王城まで来い。これらの場所は、今少々問題がある場所だ。その問題を解決し、その証拠を持って魔王城まで来るのであれば愛を証明したとして認めよう。別れさせもしないし、戦争もしない。問題については別の紙に書いてあるからそちらを確認するように」
と書いてあった。
……色々とまだるっこしいなこの魔王。あと愛の証明愛の証明言ってるけど途中で恥ずかしくなったりしなかったのかな。あー、でも恥ずかしくなってもここまで書いたら後には引け無さそうだし仕方ないか。
んで?問題ってのは……、
「ラミアの集落は温泉地ゆえに観光地としても名が売れている。しかし最近低迷しているようなのでそれを改善する案を出せ。ラミア達が納得する案を出したなら、証拠となる何かを受け取り魔王城まで持って来るように」
「デリートゥノール山は万年雪が降る雪山なのだが、最近その周辺の寒さが一段と厳しい。原因を解明し解決せよ。以下同文」
「トモノギ村はハーフエルフ達が住む村だ。一般的な村だが、最近そこで病が流行っているらしい。どうやらその病に感染すると魔力が上手く使えなくなるらしく、魔法で治す事が出来ないらしい。治せ。以下同文」
「人形館は昔からある館だが、主である人間の死後から数百年経っている。その結果主を亡くし魔法が暴走した人形の成れの果て達が館内を彷徨っている。館に入らなければ問題は無いが、気味が悪いという苦情が多いからどうにかしろ。以下同文」
「カジハトゲ村は巨人達が住む村だ。彼らは山から石材などを切り出してくれていたのだが、その村ではトモノギ村とはまた違う病が蔓延しているらしい。彼らは石材だけでは無く、様々な仕事を請け負ってくれていた。救え。以下同文」
……解読した結果、大体こんな感じだった。ちょいちょい適当になっちゃったけど大体こんな感じである。原文面倒臭いんだよ。
これこれこうだからお願いしますね、なら簡単なのに、ここはこうでああでこうでこういう所なのだがこれこれこうでこうなってしまったからこれこれこうこうこういう風にって感じで!書いてあるんだよ!
長いわ!そして面倒臭い!公的な書なのかどうかもわからんがもうちょっと文面をダイエットさせなさいよ!過剰包装か貴様は!
簡潔に纏めた内容を皆にも話して聞かせると、全員が全員微妙な顔になった。
「何と言いますか…」
「……面倒…」
「いや、ラミィは里帰りも兼ねる事になるからそれ言っちゃ駄目じゃない?同意見だけど」
「イースを無理矢理復帰させようっつー考えからして不愉快だけどよ、愛の証明がまた無理難題…」
「というか、これは「どうにかしないといけないけれど面倒だし厄介な仕事」を体良く押し付けられたって言うんじゃないか?」
上からハニー、ラミィ、アレク、コン、ハイドの順番である。
「ハイドの意見には私も同意見よぉ」
イースは気だるげにはぁ、と溜め息を吐いた。
「仕事が忙しいから復帰しろ、そして復帰しないなら証明として面倒な仕事を片付けろってぇ……本当無駄な事にしか頭が回らないというか…」
勉強以外に本領発揮する感じのタイプなんだろうか、魔王。
「えーと、つまりこの通りの動いて諸々の問題クリアしてから魔王城に行けばイースの悩みは完全解消、って事で良いのかな?」
「まぁ、そうなるわねぇ」
イースは少しの間を置いてから、
「…これ、かなりの難題よぉ?全部本気でこなすつもりぃ?」
と言った。
「勿論。その程度は障害にもなりゃしねえって魔王に伝えてやる」
私はニッと笑ってそう答える。
私は魔王に怒ってるんだ。私からの嫁への愛を軽視されたのも、私の嫁であるイースの存在を物みたいに書きやがったのも。だから真正面から野郎の試練を突破してぎゃふんと言わせる。正攻法のルートで突破すりゃ言い訳も出来んだろうさ。
そう考える私の心を読んだのか、イースは優しく微笑んだ。
「…わかったわぁ」
「それじゃあ」と、イースはいつもの雰囲気に戻って言う。
「依頼があるから魔王国に行くのは数日後になるわねぇ。とりあえず愛の証明コースで行くからって事を向こうに伝えないとぉ」
ああ、それは確かに。伝えないと戦争になりかねないもんね。
すると、イースは左手で指を鳴らした。次の瞬間、
「ごばっはぁっ!?」
……空中から……え、何?何が出てきたのコレ。
えーっと、何か空中から喋る砂…灰、かな?灰が出現した。「うぐおおおお…」と呻きながら、灰はうぞうぞと磁石で動く砂鉄のような奇妙な動きをして、
「ぶっはー復活!あんな殺され方始めてで復活に時間が掛かったではないですかイース様!フェレイア様の使い魔であるこの私に何て酷い仕打ちをへぶっ」
…えっと、うん。
灰はうぞうぞと動いてコウモリの姿になり、パタパタと飛びながら喋っていたと思ったらイースに叩かれて灰に戻った。現在床で灰がまたもやうぞうぞタイムである。
「…イース」
「なぁにぃ?」
「これ何ぞ?」
「コウモリ型の使い魔よぉ」
……そっか、使い魔か。よくわかんないけどイースがそう言うならそうなんだろう。
でもさっきのこの使い魔の言動からするとイースの使い魔じゃなくって他の誰かの使い魔っぽいんだけど……まあ、良いか。
「イース様!何故このように酷い仕打ちをうぶぇっ」
「良~いぃ?今から言う事をきちんと記憶するのよぉ?じゃないとぉ、例え不死の存在の眷属だから同じように不死身な貴方でもぉ、本当に死んじゃうかもぉ♡」
「はーい私イース様の忠実なる僕!だから本当勘弁してくださいイース様」
イース強いなー。
復活したコウモリがまた騒ごうとした為イースはコウモリを片手で鷲掴み、にっこり笑顔で脅した。そしてコウモリは一瞬にして降伏した。早い。
「私達は愛の証明の為のコースで行くわぁ。依頼があるから数日後に魔王国入りする事になるけどぉ、その程度も待てない子供じゃないわよねぇ?あ、それとこのチケットは返すわぁ」
そう言い、イースは手紙の中に入っていた船のチケットをコウモリに持たせた。
「じゃ、今のをちゃぁんと伝えてねぇ?」
「了解しましたイース様!それでは!!」
パッとイースが手を離した瞬間に、コウモリは素早く飛んで窓を開けて闇夜に消えた。……怖かったんだね。
「えーと、今のでオッケー?」
「オッケーよぉ。あのコウモリはあれでもフェレイアの使い魔だから仕事をこなすのは得意だものぉ」
「フェレイア?」
「魔王軍幹部の吸血鬼♡」
へー、魔王軍幹部には吸血鬼なんてのも居るんだ。凄い。だからコウモリだったんだね。
「ところでさ」
「?」
骨の手で挙手しながら、アレクは言う。
「さっきのコウモリが突然死んだ状態で出現したアレ、何?」
「あ、そういえば」
すっかり忘れてたけど、そういや何か急に出現したんだった。しかも死んだ状態で。どういう事なんだろう、とイースに視線を向けると、
「ああ、アレねぇ?簡単よぉ。闇魔法で空間を圧縮してぇ、目視出来なくしてただけだからぁ♡」
と答えた。
…………普通は目視出来るレベルのプレスでもやばいと思うんだけど、目視出来ないレベルのプレスかあ……。あの使い魔が不死身じゃなかったらアウトだったね、と私は頷いた。それ以外の思考が出来ない。何かイース、色々と凄いよね。
「はぁ~い、それじゃあもう夜も遅いし睡眠が必要な子は寝なさいねぇ。明日も朝は早いのよぉ?」
「あ、そうだった」
明日も普通に獣人部隊で仕事あるんだった。
そう思い、アレクとイースを除く全員で眠りに付いた。あー、今日もまた色々あったせいで疲れたー。まあでも、獣人部隊に関しては被害報告が出来たから良かった、かな。魔王関連は凄く、すっごぉく面倒だけどね!
「…………ん?」
眠っていたはずだが、珍しい肌寒さにふと目が覚めた。少し目を開けると部屋の中に眩しい朝日が差し込んでおり、どうやら夜明けが来た直後らしい。とても眩しい。
うーん、と寝返りを打つと、ベッドの中に私以外誰も居ない事に気が付いた。ハニーとコンが先に起きてる事は多いけど、起きるまでが長いラミィも居ない。その上私の寝顔を頻繁に眺めているらしく、最近寝起き一発目に見るハイドの顔も無い。
どういう事だろう、と起き上がると、
「あ、起きたぁ?」
「……イース」
部屋の中、ベッドから程ほどに離れた位置に、皆が居た。何故か円を描くように、円の中心を見るような感じで。しかもちょっと警戒モード入ってるご様子。
「……え、何?」
「それがねぇ?」
イースが横に一歩移動し、私の位置から円の中心が見えるようになった。円の中心には、
「…………何してんのローラン」
「…えへ」
何故か、ローランが従魔達に囲まれながら正座していた。
久々のイケメンモード。
ちなみに誤解が無いよう先に言っておきますが、今の所吸血鬼フェレイアは男のつもりなので美女なのでは?という夢は抱かないように。




