宝石掴み取りと弓
「とりあえず聞こう。何でまた私の控え室に来てんのタバサ。ここはお前の自室か?」
「ひでー言われよう」
私の言葉にタバサはケラケラと笑ってから、机の上に置いてあった見覚えの無い箱を指差す。
「俺のヨージはこれっすよ」
「箱?」
人間の頭部くらいなら余裕で入りそうなサイズの箱だ。箱の中身は何だろうって感じのアレに似ている気もするが、横面に手を突っ込む穴が開いているわけでも無い。普通の箱だ。上部分だけ蓋が開いてるっぽい箱。
「まー中身見りゃわかりますよ」
言われるがまま上から箱の中を覗いて見ると、
「……うわーお」
宝石がこれでもかってくらいに詰め込まれていた。しかも綺麗にカット……研磨?されている宝石だ。青に緑に赤に黄色に……と、とてもカラフル。目がチカチカする。太陽の下だったらレーザービーム出せるんじゃねってレベルでピカピカしてる。
「宝石掴み取り用の宝石?」
「その通り」
私の答えに、タバサはニッと笑った。タバサって顔がちょっとラテン系っぽいから笑顔が似合うよね。
「どういう宝石?」
「全部硬度7の宝石で揃えてありますよ。そこが一番種類多かったんで」
あ、今ちょっと意思疎通をミスったな。
「ごめん、硬度とかじゃなくて単純に種類とか、宝石の名称とかを聞いたつもりだった」
「ああ、成る程。姫様の相手してるとそういうの説明する前に知ってたりするんでついうっかり」
「姫様、どっちかっつーと硬度とか靭性の方を聞いてくるから」とタバサは笑った。流石はセレス……私なんて硬度も靭性もどういう意味かわからんよ。知ってるのはダイヤは硬いけど衝撃で壊れやすいって事くらいでやんす。お姉ちゃんがそう言ってた。
タバサは箱の中の宝石を指差し、
「これがローズクォーツ。これがエメラルド。こっちがアクアマリンで、こっちがガーネット」
と教えてくれた。私はそれを聞きつつほうほう、と頷く。結構有名どころの宝石ばっかりだね。エメラルドとかガーネットとかは流石の私でも聞いた事あるレベルには有名な宝石だ。ゲームで結構よく見るもん。
「じゃ、賞品である宝石掴み取りの説明をはじめまーす」
「お願いします」
「おう。つってもルールは簡単、箱の中に両手を突っ込んで持てるだけの宝石持って箱の外に出せば、箱の外に出た分だけの宝石をプレゼントフォーユー」
「マジで簡単なルールだった」
というか両手だし外に出せればオッケーって……それ、掴み取りって言うんだろうか。流石国王主催のイベント、賞品の渡し方が太っ腹過ぎる。
「あ、参加賞の方は既に宿屋の方に連絡が行ってるし、従魔達に関しても説明してあるんで宿に行ってギルドカード見せれば普通に通してもらえるんで安心してどーぞ」
「それが一番聞きたかったありがとう!」
あー安心した!そこだよね一番大事なの!お高い宿屋に宿泊&食べ放題目当てで出場したんだし!宝石掴み取りをしたら参加賞であるそっちの報酬受け取れない可能性があるのでは?って戦々恐々してたからめちゃくちゃ安心した!あー良かった!
「んじゃそういうわけでレッツ掴み取り。箱の外に出せばオッケーだから手から零れるくらいに宝石を抱えて、上手い事箱の外に出すのがコツですよ」
「それスタッフ側が言って良いの?」
「今ここに居るの俺だけなんで俺がルールです」
ニヤリ、とタバサは悪い顔で笑った。それで良いのか姫の付き人…。
ま、良いか。宝石は綺麗だしね。
……正直言うとアイテムポーチの中にジュエリーハンマーが肥やし状態になってるからこれ以上宝石ゲットってどうよって思わんでも無いけど。
コブジトゥの鉱山で、勇者の魔力とハイドの魔力によって生まれた黒い宝石も幾つか持って来ちゃってたのもあるから本当にこれ以上の宝石ゲットってどうよって感じだけど。何で持って来ちゃったのかって?イースが、
「大き過ぎる宝石は変な呪いを集めかねないからぁ、事件になる前に貰って行っちゃいましょうかぁ」
って言ったからかな!ああそうさ大きい宝石ばっかりをゲットしたさ!あんまり嬉しくなかった!
でも……でもイースが、
「勇者の土の魔力によって生まれた宝石がハイドの闇の魔力を吸って黒い宝石になってるわけだからぁ、最悪の場合も考えられるのよねぇ」
って言ってたから!
うう……あの鉱山、ハイドを閉じ込める為に勇者がとてつもない魔力を込めて山を作ったから、余分な土の魔力が寄り集まって宝石になった結果鉱山になったらしいんだよね。
魔石も魔力の結晶体とか何とかって言ってた気がするし、イースの言う事だから事実なんだろう。だがしかしここで追い宝石は要らなかった…。これも全てアボットとオルコットのせいだ。畜生。宝石は綺麗だけど!
あ、でも掴み取りだから一個とか二個とかだけ手の平に載せて「はいゲットした!はい掴み取りした!はい終了!」って言って終わらせれるんじゃね?よっしゃ、その方法で行こう。
「あ、ここで本気出さないと多分結果を聞いた姫様が「宝石掴み取りだというのに、たったそれだけ…!?何と欲の無いお方!」とか言ってよりミーヤに惚れるんじゃないっすかね」
おーまいが!
「それと姫様から、「もしミーヤ様が手の大きさなどのハンデで半分以上取る事が出来なかったら、残りの宝石をプレゼントするのも良いと思わない?」って命令されちゃってるんで、頑張って半分いじょー取らないと強制的に全ての宝石をプレゼントされますよ」
「どういう気遣い……」
「多分これからも姫様に対して普通に接するって言った事に対するお礼のつもりなんじゃないっすかね」
やれやれとでもいうような表情で、「姫様賢いけど、姫様だからちょっと一般人の感覚と違うんすよね」とタバサは零した。そういうのを何とかしてくれよ庶民の出である教育係。
いや、でもこれ半分以上確保ってキツくない?人の頭部がすっぽり入るだろうサイズの箱の中に宝石がたっぷり入ってるんだよ?わかりやすく説明すると五分の四くらい宝石で埋まってる。そしてタバサの言葉からして多分上げ底は無いと思われる。んでもって私の手のサイズは身長に合った平均よりちょい小さめサイズ。やべえ詰んだ。
「まあ腹括って受け取れば良いんじゃないっすかね」
「おま……一般人がいきなり宝石山盛り渡されても反応に困るっての」
「そりゃそうだ」
くっ、他人事だからってケラケラ笑いやがってタバサめ。
どうする?どうすれば最低限の確保が出来る?とりあえず半分くらい宝石を掴む事が出来れば辛うじて私の心の平穏は保たれる………どういう悩みをしてるんだよ私は。こんなよくわからない事で悩みたくなかった。
「……よし、もう諦めた」
乾いた笑みを浮かべ、私は両手を箱の中に突っ込んだ。もうどうにでもなれや。
宝石を押しのけて底まで手を突っ込み、両手を底の近くで皿のように広げて宝石を掴む。で、
「持ち上げ、る」
ぐ、と宝石を掴んだ手をそのまま箱の外へと出す。出す瞬間に手の平の上に詰まれた宝石の山は、上の方が少し崩れたが想定内だ。箱の横部分を利用して落ちないようにして、そのまま箱の外に宝石を、出す。
「いよっし!」
崩れてた分は無事箱の外に、手の平にある分もそのまま私の手の平の中だ。つまりこれで!
「ミーヤが確保した分はざっと見て箱の中に入ってた宝石……五分の二くらいっすね」
来世は手がデカくなりたい。
「惜しい!というわけでこの箱の中の宝石も進呈」
「要らん!あげる!」
「いやそう言わず」
「なら孤児院とかギルドに寄付!これ以上は要らん!」
「えー」
「まあそこまで言うなら姫様にもそう伝えるか…」と、タバサは私に宝石を渡すのを諦めてくれたらしい。仕方がない、というような溜め息を吐いていた。
おお、咄嗟にパニックになりながらも言うだけ言ってみただけだったんだけど……言ってみるもんだね。良し、これで私がゲットした宝石は最低限という事に………いや、
「何ならこっちの私が確保した分の宝石も寄付」
「は流石に出来ないっすねー。受け取らないと姫様が国宝持って来ちゃいますよ」
「セレスは国宝をもうちょっと大事に扱ってあげて!」
顔を覆いたかったが残念な事に両手は宝石で埋まっていた。畜生。
そして何故セレスが国宝持って来るかもっていうのが冗談に聞こえないんだ。言ってるのタバサだし、笑ってるし、冗談だって笑い飛ばしたい……けど、ここで「まっさかー」って笑って宝石を押し付けるとそれが現実になってしまう予感がする。
……うん、まあ、あれだ。資産は多くて困らないし、良いとしよう。宝石なら物々交換とか交渉とかで使えるかも知れないし。使う機会が無い方が嬉しいけど。
仕方ないし、タバサも下がってくれなさそうだしと諦めて私は両手いっぱいの宝石を……手が塞がっているので一旦宝石を机の上に置いてから、アイテムポーチの中に宝石を放り込む。途中でタバサが箱の中の宝石を混入させようとしたのはちゃんと防いだ。箱の中に手を入れて宝石掴んでそのまま机の上の宝石に混入させようとしたって流石にそんな動き見逃さんわ。
「まったく…普通ならもうちょっと欲を出しても良いと思うんすけどね」
「私は嫁達をちゃんと養っていきたいの。苦労させるのも嫌だけど、下手な大金手に入れて油断して堕落するのも嫌なの」
私は溜め息を吐いて、
「嫁には、格好良い夫で居たいからね」
と言う。出来てる気はしないが、好きな人には格好つけたい。
……出来てる気はしないけどね。ぐうう、ポンコツが憎い。もうちょっとスペックが高けりゃなあ……!
「何でこっち睨むんすか」
「うっせぇハイスペック」
逆恨みだとわかっててもスパダリの条件満たしてる奴が羨ましいんだよこのやろー。
すると、ふと気付いたようにタバサは「あ」と声を上げた。
「そういえばですね、この大会では1位と2位しか表彰式ってーのしないんで、特に用事無いならもう宿に移動してオッケーっすよ」
「マジか助かる」
時間を無駄にしない気遣いはありがたい。そういうのを考えてくれてない仕様だと本当イラっとするからね。あ、でもイース達とどうやって合流しよう。普通に従魔用テレパシーで待ち合わせるか?
「何なら俺がミーヤの従魔達呼んでこようか?入り口まで」
「マジで?」
「マジマジ」
タバサはチラリと大会の様子が映っている魔道具を確認して、
「丁度ミーヤの知り合いっつー弓使いも試合終わったみたいですしね。負けたみたいだし声掛けてやれば?呼ぶまでに時間掛かるだろうし」
「えっ!?」
タバサの聞き捨てならない言葉に慌てて映像を映している魔道具へと視線を移すと、確かにアーウェルが敗北してしまったようだった。どうやら相手はエルフの弓使い。
うわっちゃー、相性が悪かったか…。同じ弓使い、そして人生経験が圧倒的に豊富だろうエルフが相手……。
考えようによっては、アーウェルの目的は宝石の掴み取りだったから2位になるよりは良いのでは?とも思えるけど……本気で戦って負けたなら、悔しいよね。
ホログラムの向こうでアーウェルは、悔しそうに歯を食い縛っていた。
「タバサ、イース達呼ぶのお願いね。私はちょっとアーウェルの様子見てくる」
「はいよ、いってらっさーい」
ヒラヒラと手を振って見送るタバサを背に、私は控え室から出る。あれ、そういや私タバサにアーウェルと知り合いだって言ったっけ?……まあ、良いか。タバサだし。諜報得意な部下居るっぽいし。
ええと、それでアーウェルは…今試合が終わったばっかりだし、フィールドの方に行けば居るかな?
「大体貴様!その腕でレンタル武器だと!?俺を馬鹿にしているのか!?」
「馬鹿にしてるつもりはない」
居た!けど……何か修羅場?
どうも試合の相手だったエルフの弓使いのお兄さんにアーウェルが絡まれてる、って状況のようだ。
エルフのお兄さんは何かに怒っているのかアーウェルに対して一方的に怒鳴っていて、アーウェルは面倒なのに絡まれたなという表情をまったく隠さずに淡々と返答していた。
「馬鹿にしているだろう!レンタル武器にしては貴様の歳に合ったサイズの弓だが、調整がまるでなっていない!魔法があるとはいえ貴様は中々に命中度が高い……が!その弓の重さが貴様の筋力と合っていない!だから射る時に一瞬ふらつくんだ!その程度の調整もせずによくこの俺の前に出られたものだな!」
「……レンタル武器なんだから俺用にカスタマイズされてるわけないだろ……」
「何か言ったか!?」
「いえ、別に」
……ん?んんん?今何か、お兄さんの方の言動に違和感が…。
「矢の手入れもなっていない!だから俺との試合で矢を使いきってしまうんだ!矢はレンタルではないだろうが!だというのに何だあの矢は!金が無いと言っていたから使用した矢を使い回しているんだろうが、それならせめて手入れくらいしろ!矢尻を研げ!きちんと磨かなくてはそれのせいで要らん抵抗を受けるしすぐに使い物にならなく」
あ、ああ~~………成る程、メリーじいさんが言ってたアレか…。人間相手にはついツンデレてしまうというエルフの性格…。
多分同じ弓使いとしてアーウェルの心配をしてるんだろうけど、口調が…。言い方を変えれば「もうちょっと今の年齢に合った弓を使った方が体のブレが無くなる」とか「矢尻を研いだ方が使いやすいよ」って意味っぽいんだけど……。
駄目だ、我慢出来ん。
「あのー」
「何だ!?」
「あ、ミーヤ!」
立ち位置がお兄さんの背後側だったから驚かせてしまったみたいで申し訳ない。でも面倒臭いって顔に書いてあったアーウェルの表情が笑顔になったので許してくれ。
「……!?な、こむす、いや、おま、ではなく、そこの少女!エルフの友人なのか!?」
「そうです」
良かった、首飾りは服の下だけど気付いてもらえたっぽい。
輝く金髪のお兄さんは緑の瞳を大きく見開いて驚いてる様子。そんなに驚く事なんだろうか。小娘とかお前とか言おうとしてたのに最終的に少女呼びになってたし……エルフの友人って、実は結構凄い称号なのでは……。
良し、考えるのは止めておこう。知らない方が幸せな事ってあるよね。くねくねとか。
「えーっと、色々と意思疎通が上手く行ってない様子だったのでちょいと口出しさせてもらってよろしいでしょうかね?」
そう言うと、お兄さんは慌てたようにぶつぶつと呟き始めた。
「む、いや、だが、エルフとしての……しかし、確かに正確に伝えてもらえるのは助か……いやいや、だからといってエルフである俺が人間に借りを作るなど!……だが誤解を生んだままというのは……」
「エルフの友人なんで借りとか考えなくて良いですよ」
「ならば頼もう!」
ちょろいなこのお兄さん。詐欺に騙されないか心配だ。
さてアーウェルに説明しなくては、とアーウェルの方を見ると、アーウェルは信じられないものを見る目でお兄さんを見て、そして困惑した目で私を見ていた。お兄さんと私を交互に見てるのに目に宿る感情を変えてるのちょっと面白いな。
「ええと、アーウェル」
「あ、ああ」
「さっきのこのお兄さんが話してた内容なんだけどね、あれエルフ弁なんだよ」
「エルフ弁」
「おい」
お兄さんから不満げな空気が漂ってきているが嘘でも無いでしょうよ。方言と対して変わらないって。
「通訳すると「レンタルなのにしっかりと合ったサイズを使用していますね。良い事です。ですが重さが少々合っていないようです。貴方の筋力から考えると、もう少し軽量化した方が良いと思います。そうすれば射る時のふらつきが無くなりますよ」って意味」
「えっ」
私の通訳にアーウェルは驚愕の表情を浮かべてお兄さんへと視線を向けた。お兄さんは視線を斜め上へと逸らしつつ赤面していた。訂正は無い。そしてその反応に事実だと悟ったらしいアーウェルがぽかんと口を開けた。
……うん、ツンデレ慣れしてないとこのギャップにビビるよね。私は元々ツンデレに対しての理解があったし、最近はコンですっかり慣れたから解読出来るけど、他の人からしたらツンデレ台詞は誤解まっしぐらコースだろう。
「それと矢尻の話に関しては、「矢尻は研いだ方が抵抗を受け難いので、研いだ方が良いと思います。きちんと手入れをすれば駄目になるまでの時間を延ばす事も出来ると思うので、使い回すのであればその辺りにも気を使った方が良いかと」って意味かな」
「嫌味じゃなかったのか…」
私の通訳を聞いて、アーウェルは呆然としたまま呟いた。ああ、うん、慣れてないと嫌味に聞こえるよね、ツンデレって。
「~~~っ!!」
「「あ」」
流石に自分の言った事を目の前で通訳されるのは恥ずかしかったのか、お兄さんは赤面して走り出してしまった。いや、うん、確かによく考えると恥ずかしいな。お兄さんからすると通じてるつもりで話してるトコもあっただろうし………。
と思ったら、お兄さんは曲がり角の所で急ブレーキを掛けて勢い良くこっちを振り返り、指を差して言った。
「エルフの友人!名は何だ!」
「ミーヤと言います」
「そうか!俺はギルベルトだ!」
恥ずかしさで即行立ち去りたい時でも自己紹介をちゃんとするとか律儀か。
「良いか二人共!夜に宿屋の食堂に集合!アーウェルにはまだ言いたい事があるからな!そして俺の言う事をしっかりと伝えてもらう為にもミーヤには絶対来てもらう!良いな!?」
そう言い残し、お兄さん……ギルベルトは逃げるように去って行った。ギルベルトが逃げて行った方から、
「ちょ、廊下は走るな!ぶつかったらどうするんだ!」
「謝罪はせん!」
「はぁ!?おい、待ておまっ……!……あれ?俺いつの間に饅頭なんて持って…?」
という会話が聞こえた。謝罪をしない代わりにお詫びのお菓子ってか。回りくどいなエルフ。こうして実際に拗らせてるエルフ見ると、シルヴィアさんとか氷の受付嬢なんて呼ばれてたけど人間に対してかなり優しかったんだね。
……あれ?でも今日の夜は里見さんとも飲む約束してるんだけど……まあ、武道大会一般部門の上位四名の反省会みたいになって面白いか。
「何だったんだあの人…」
「あっはは」
まだついて来れてないらしいアーウェルは呆然としたままだ。まあそうなるよね。
っと、
「そういや私アーウェルに用があったから来たんだった」
「え?」
負けちゃってたからお疲れ様って言いに来たのも事実だけど、ちょいとね、渡したい物が、ね。
私はアイテムポーチから例のアーチャー三種の神器みたいなアレを取り出し、アーウェルに渡す。
「……これは?」
「プレゼントフォーユー」
「いやそうじゃなくて」
「弓使いじゃない私には無用の長物なアイテム」
「そうでもなくて」
チッ、誤魔化されてはくれないか。流石しっかり者のアーウェル。いやでも説明はちゃんとしないとだし…。
「こちらの矢、名称は「ホームシックの矢」。こちらの矢入れ、名称は「ホーム矢入れ」。こちらの弓、名称は「お望みのままに弓」となっております」
「は!?あの伝説の!?」
アーウェルは慌てて受け取ったそれらを確認し、「うわ……本で見たのと特徴が完全に一致してる…」と零した。
やっべ、知ってたか。そういえば図書館に通うようになってリーンちゃんが色々読み進めてたっぽいし、そりゃお兄ちゃんであるアーウェルも一緒に色々と調べた可能性は高かったね。
しかも自動追尾の魔法開発しちゃうくらいだし、当然のように弓系のは知ってたか……見誤ったな。
と、思ったが、
「ほ、本当に?本当に貰って良いのか?貰ったらもう返せないぞ?」
アーウェルは頬をピンク色に染めてアーチャー三種の神器を抱き締めながらそう言った。
……あ、欲しいんだ。
「私としては使い道無いから是非貰ってやって欲しい」
本心である。
それにその子達も自分を使ってくれる人の方が嬉しいだろうしね。所持してても困る以外の行動が出来ない私のトコに居るよりかは、必要としてくれる人の方が良いでしょうよ。
「丁度持て余してたから手放したかったし、その弓ならサイズも重さも可変だし、矢は消耗品じゃ無くなるし……どうかな?」
「最高の贈り物過ぎてミーヤに心臓捧げたいレベルで惚れ直した…」
「命は大事にしなさいね」
私にはさっぱりだが、アーウェルにとっては相当に嬉しかったらしい。タバサが私を呼びに来るまでの数分間、アーウェルはそれらを抱き締めたまま動かなかった。




