表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第4話 転生令嬢、お茶会へと招かれる


 私の評価は、少しずつ持ち直していった。


 屋敷の使用人の人たちも、だんだんと挨拶を交わすようになり、会話の回数も増えていく日々。


 そんなある日、旦那様にお茶会へと招かれる。


「…………」

「…………」

 うん。会話が全然無いわ!


 もっと言葉のキャッチボールしようぜ?


「アリシア」

 突然、鋭い視線がこちらを射抜く。


「……はい。何でしょうか、アシェル様」


 ――めっちゃびっくりしたけど、何とか表に出さなかったぜ、セーフ!


「マリーから聞いた。最近、随分と頑張っているそうじゃないか」

 旦那様はそう言って、カップを静かに傾けた。


「……はい。せっかく嫁いで来たのですから、少しでもお役に立てればと思いまして」

 私はにっこりと笑顔を浮かべてみせる。


「何故、そこまでできる?」


「君は、無理やりこの家に連れてこられたはずだろう」

 旦那様の視線が鋭くなる。


――ああ。これは誤魔化せない。


 私は一度目を閉じ、小さく息を吐いた。


「私は、山奥の小さな村で育ちました」

 覚悟を決めて、ゆっくりと目を開く。


「む?」


「その村で私は……ずっと、よそ者だったんです」


「っ!」

 旦那様が、驚いた表情を浮かべた。


 本気で驚いている姿を見て、「ああ、この人は本当にいい人なんだな」と小さく笑う。


「だから私は、村に受け入れられるために、いつも笑顔を絶やさず、皆が嫌がることを率先して引き受け、誰よりも努力してきました」


――この家に嫁いできてからも、貴族令嬢の仮面を被り続けていられたのは、村にいた頃から、ずっと仮面をつけて生きてきたから。


「それでも、完全に村の仲間として認められることは、ありませんでした」

 言葉は、もう止まらなかった。


「だから……努力すれば、その分ちゃんと認めてもらえる今の状況は――」

 旦那様をまっすぐ見て、微笑む。


「私にとって、とてもやりがいのあるものなのです」


 沈黙が落ちた。


 そんな中、ふと思う。


 実家の従者たちから、「絶対に人前で外すな」と言われていたレースの手袋。


――もし、この人に見せたらどんな反応をしてくれるのだろう。


 私は、ゆっくりと指先を引っかけ、それを外した。


「……っ!」

 旦那様が、息を呑む。


 そこにあったのは、何度も弓を引いた結果、豆が潰れ、皮が厚くなった、決して綺麗とは言えない手。


――あ、引かれたかも……


 胸の奥が、きゅっと痛んだ。


――やっぱり、こんな手。貴族令嬢には相応しくないよね。


 そう思った瞬間。


 突然、手が温かくなる。


「……?」

 顔を上げると、旦那様が、私の手を包み込んでいた。


「わかるよ。何度も……練習したのだろう……?」

 優しい声。


「その……俺は、良いと思うぞ……」


 一瞬、何を言われたのかわからなくて。


 気づいた時には、顔が熱くなっていた。


 ああもう、

 こんなの、反則でしょう。



――その日から、私はレースの手袋を付けなくなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ