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商談

「ノア? 頼まれてたアレ、探して来たわよ」


 部屋でゴロゴロしていたが、ノックもせずに部屋に入って来たエルの声を聞いて起き上がる。


「本当か? 随分と早いな」

「ノアの名前を出した瞬間速攻で会いたいって返事を貰ったわ。なかなかに大物の商人よ」


 話を伺いたい、じゃなくて会いたいか...。


「いつ会える事になってる?」

「いつでも良いらしいわ」

「正直俺もいつでも良いからなぁ...」

「じゃあそう伝えておくわね」

「パシリみたいな事させて悪いな」

「...確かに、よくよく考えたらこれってパシリよね?」


 言わなきゃ良かったかも。

 そしてその大物商人との商談の日は二日後となった。





 迎えた大商人エレクとの商談の日。


「よし...じゃあ行ってくる」

「いってらっしゃいませ! ノア様、頑張って下さいね!」


 ラミュにお見送りをしてもらう。

 頑張る要素は無いと思うんだが...。



 王都で最も商売が盛んな地域、商格に建てられている巨大な屋敷に俺とエルは通された。

 なんでエルが付いて来てるんだ?


「あたしを経由したんだから立ち会う権利くらいはあるでしょ?」


 と。

 まあその通りだな。




「おお! いらっしゃいましたかノアルト様! いやあ、こうして再びお会いすることが出来て光栄です。なんてったって、前に一度助けられましたからね! 覚えてますか?」


 現れたのは緑色の髪をした青目の恰幅の良い紳士。

 口ぶりから、俺が冒険者時代に助けた事があるのだろう。

 まあ星の数ほど人を助けたのでこの人一人だけを覚えてなんかないが。


「いや...実は覚えて無くて。すまない」

「いえいえ! 数多の商人なり冒険者なりを救っているノアルト様に私如きの顔を覚えていろとは酷な事...しかしながら今から商売仲間となるのならば私の顔に名前を憶えて貰う事も可能ではと...」


 なかなか俺に対する思い入れが激しいな。

 ちなみにエレクはこの王都でも一、二を争うのトップ商会、エレクトロ商会の会長である。

 そんな顔を知らないのはかなり異常である。

 俺異常だった...。


「まあ今お前の名前も顔も覚えたから。早速本題に入りたいのだが...」

「はい! ノアルト様と契約が出来るならどんな条件でも飲むつもりでございます!」

「条件か...まあそれよりコイツを見て欲しいんだが」


 そう言いながら、この前作ったミニ飛行船を取り出す。

 形も飛行船そのままだ。


「こ、これは?」

「見ていてくれ」

 

 上に放り投げ、ミニ飛行船はかなりの時間落ちて来ることはなかった。


「こ、これは一体...!?」

「単なる空を飛ぶ機械、飛行船だ。それで...これを大量生産して欲しいんだが。ほら、王都って高低差激しいし、橋でしか移動出来ないのは不便かなぁ...と思って」

「か、画期的なアイデアですよノアルト様!? 空を飛ぶ機械なんて! 今まで誰も考え付きませんでしたが、コレが上手く起動すれば物資や人の移動に大革命が起こります!」


 身を乗り出して俺にそういうエレク。


「ノアが考案したんだから画期的なアイデア以外ないじゃない!」


 なんで俺じゃなくてお前がドヤ顔してるんだよエル。


「それにコレを作る為の素材はもう結構入手してるから、すぐにでも生産や実験が出来る筈だ」

「材料まで揃えているのですか!?」


 本日二回目の乗り出し。


「あ、ああ」

「それで、契約はどのようになさいましょうか? 利益の十分の九までなら譲歩できます!」


 十分の九ってお前の所潰れるだろ。


「あー、契約なんだが、別に俺は金に困ってる訳じゃないからな...とにかく飛行船を大量に作ってくれて王都の移動が楽になれば何でもいい」

「なんという聖人っぷり! 王都の発展の為に自らの技術を使い、ましてや自分は利益など要らないと...!」


 三回目の乗り出し。


「...しかしノアルト様のご意向は私的には大変好ましく、尊重したいのですが...如何せん商人はあまりにも美味しい話があると疑い深くなってしまう職業でして...何が言いたいかと言うと、最低でも利益の一割くらいは受け取って貰わないと他の商人がノアルト様の事を疑ってしまうかもしれなくてですね...とんでも無い物を作らせようとしてるのか、とかそんな礼儀の無い事を言い出しそうなのです...」

「なるほど。じゃあ利益の一割だけ頂こうかな」

「本当はこんなアイデアを売っていただけるのに対して利益の一割と言うのも全く割に合っていないのですが...交渉は成立、と言う事でよろしいでしょうか?」

「構わないぞ」


 かなりあっさりと俺考案の飛行船が大量生産されることに決まった。

 最終的な大きさとか形を決める権利も俺にあるらしく、俺は数日くらい製作の過程をその目で見る事にした。

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