お散歩ドラゴン
さて...スカイオクトパスの体は殆どゴムのような材質をしているので、少しばかり放っておいても腐って使い物にならなくなる! みたいな事はない。
だが中の心臓などゴムっぽくない所はガッツリ腐るし、臭くなるので処理は済ませておいた。
しかしまあ疲れたな。
「ノア様、少しよろしいでしょうか?」
一仕事終え、自室のベッドの上でまどろんでいると、扉をノックする音に加えてラミュの声も聞こえて来た。
外はすっかり日が落ち、それでも空の王都は明るく美しい。
「ああ、良いぞ。何の用だ? 子供はもう寝る時間だと思うのだが...」
「少しシロの事で相談があって...」
シロの事でか?
「何か城の物壊したとかか?」
城内で竜系の中でも一番弱い筈の只のドラゴン、それも幼体とは言え、飼育しているのはやはり異常だ。
多分もう国王とかにも知られているとは思うがそれでも俺の日頃の行いが良いのか黙認されている。
が、城の物を壊したり何か問題を起こしたら問答無用でシロを飼う事は難しくなるだろう。
「いえ、シロがお外までお散歩に行きたがっていて...」
なんだ、散歩か。心配することなかったわ。
「散歩程度なら付き合うぞ」
「ありがとうございます! じゃあ明日にでも行きましょう! おやすみなさい!」
「お、おやすみ...」
ラミュはそれだけ告げると、そそくさと俺の部屋を後にした。
行くと決まってから凄くテンションが上がってたが...そういえばラミュが城外に出る事はあんまりないからな。気分が良くなるのも頷ける。
...お腹空いたな。今からラミュに何か作るよう頼むのは悪いし...。食事の事ならレンだな...っと。
ガラス等が貼られていない窓から日光が差し込み、自室のベッドで目覚める。
自室で起きるのは結構久しぶりだ。
「ノア様! おはようございます!」
此方をのぞき込んでいるラミュから挨拶される。
「おはようって...ずっと俺の事見てたのか?」
「はい! 数時間くらい前からノア様を見てました!」
「あー...起こしてくれれば良かったのに」
大体もうすぐ昼になる所なので俺の起床時間はなかなか遅い。
「いえ! 起こすなんて駄目ですよ!」
俺の呟きを、ブンブンと手を前で振りながら否定するラミュ。
何が駄目なのか...。
「じゃあパパっと準備してくるからラミュもシロを探してきてくれ」
「はい! お任せください!」
パタパタと足音を立てながらラミュはシロの捜索に向かった。
シロはここだ! と言った寝床を決めていない。
ラミュの部屋で寝たり俺の部屋に居たり別の使用人の部屋に居たりと...なんか俺より城の事上手く使ってそう。シロだけにってか! ...ハハハ...。
「シロ? 行くよ!」
両手で何かを包んだ物を持ったラミュにシロと一緒に王城を後にする。
外とは勿論王城の外なんだが、ラミュの話では二人とも王城だけじゃなく王都の外にも出てみたいとの事だ。
だから俺に着いて来て欲しかったんだろうな。
「それで、それは何なんだ?」
「秘密です!」
手に持った物の正体は教えてくれないようだ。
天空の王都から降りる方法は、普通ならば地上まで続いている大きなエレベーターモドキに乗って移動する事しかない。そう、普通...すなわち飛行魔法が使えない時である。
「しっかり捕まってろよ?」
「は、はい!」
ラミュはも何回も飛んでるから慣れっこだろうが、シロはどうなんだろうか。
まだ自分で飛べないらしいし...自力で飛ばなくても飛べると言う事を学んで飛ばなくなったりみたいな悪影響が出ないか心配だ。
「何度見ても上からの眺めは凄いです!」
腕の中でラミュが感極まったとばかりにそう言う。
シロも大はしゃぎだ。
「別に王都を上から見るのが目的じゃないんだからな? もう下に降りるぞ」
そう告げてから俺は高度をだんだんと落としていった。
遠くの方に小さな森が見えるだだっ広い草原に着陸。
「うわぁ...下界ってこうなってるんですね! 雲がとても上にあります!」
「ブフッ...」
「ど、どうしたんですか急に笑い始めて!?」
「いや...下界か...」
下界か。そりゃずっと高い所に居たら下の方は下界になるわな。
「ぐわー」
「あれ? もうお腹空いたの?」
「がー」
急に鳴き始めたシロを見てラミュがそう聞きながら何かを取り出す。
...ラミュ、シロの言葉が分かるのか...?
「ちょっと早いかもしれませんがここでご飯にしませんか? 私、今日はお弁当を作って来たんです!」
そう言いながら、先程の包を広げるラミュ。
「これってお弁当だったのか」
「そうです! びっくりさせてくて黙ってました!」
草原の適当な所に腰を下ろし、ラミュの作って来たお弁当を皆で食べる事にする。
「ん...これ旨いな」
「ぐあー!」
「気に入って貰えたようで何よりです...あ、二人とも口元にソースが付いてますよ?」
「あ、ホントだ」
ラミュがハンカチか何かで俺の口を拭こうとして来たが、悪いので自分で適当に拭っておく。
少しラミュは表情を変えたが、その後すぐにそのまま構えたハンカチをシロの方に向けてシロの口元を拭いた。
にしても風が気持ちいいな...。
「ちょっとシロ!? 変な物咥えてきちゃダメだよ!? 早くポイして! そしたら私が遊んであげるから」
寝っ転がっている俺の隣に腰を下ろしていたラミュが良く分からん木の実を咥えて来たシロにそう言う。
ラミュなんか凄い母親っぽい。
「...ラミュは将来良い母親になれるな」
「え!? そうですか?」
「ああ。王子の観察眼を舐めるでない」
「えへへ...」
俺に褒められて急に体をくねくねさせるラミュ。
そんなに嬉しかったか?
「がー」
遊んでー、と言わんばかりにラミュに頭を擦り付けるシロ。
「何して遊ぶ?」
「がー」
今度は俺にも頭を擦り付けて来た。
「...俺も?」
「がー!」
「らしいです」
らしいですって...。
まあいいや。
「何して遊ぶんだ? ボール遊びでもするか?」
そう言ってアイテムボックスからボールを取り出す。
実際にはボールの形をした魔道具なのだが。
売れば金貨何十枚にもなるだろうが、金には困ってないし、何よりコレが色々とゴム製のボールに非常に似ているからいつか遊ぶ時にでも使おうと持っていたのだ。
ちなみにこのボールに掛かっている魔法は弱い反射魔法と、魔力を流すと光るオプションだけである。
一体何の為に作られたのか...。
暫く三人で遊び惚けた後、疲れたのか眠ってしまったラミュとシロを連れて俺は王城に帰って行った。




