対話
朝活
「ライトランス!」
光属性で作った数十本の槍をガルアナに向かって放つ。
その中に一つだけ聖属性で作ったホーリーランスを混ぜ込んでおく。
聖魔法はアンデットに対して非常に高い特攻を持っており、弱小アンデットならちょっと聖魔法に当たっただけでもたちどころに消えてしまうだろう。
ガルアナも、光魔法の槍は剣で叩き落したり、小さなステップで躱していたが、聖属性の槍が飛んでくると、それまでとは比にならないほど大きくステップを踏んでソレを躱していた。
やはり過剰な程に聖魔法を怖がっているな。
「私が足止めする...アイスフィールド!」
レイアの足元から氷が円形に出現していき、ガルアナの足元を一瞬凍らせる。
好機。
「シャイニン―――」
「ま、待ってくれ!」
アンデットである筈のガルアナが口を開いた。
「死神みたいな男にレイア! 俺だってアンデットになりたかった訳じゃないんだ! ただこの帝国の未来が心配だっただけで...そう! 一緒に協力してサリバンを殺すんだ! 奴にこの国を渡す訳には...」
「レイア、耳を貸すな。コイツはガルアナじゃない」
「なっ...!? 何を言うか! 俺は正真正銘ガルアナで...」
「俺の名前は?」
「がっ...!?」
剣技もガルアナに似せてはいたが、衝撃鎌を持っていたとは言え俺のロスト姿を見て名前が言えなかった時点でガルアナではない、又はガルアナではあるがアンデットになったことで記憶が消えた、のどちらかだろう。
「ん...早く止めを刺してあげて...」
「ああ、シャイニングッ!」
「あああああああああああ!」
聖属性を周りに放出する魔法でガルアナは完全に消滅した。
「ほほう、ではレイアは確かにアンデット化したガルアナを討ったのだな?」
金色に輝く豪華な謁見の間。
病に苦しめられているとは到底思えない程に堂々とした皇帝がレイアの話を聞いていた。
「はい、それでもう通り魔事件は大丈夫かと」
「むう...しかしガルアナがアンデット化したとはにわかには信じられぬな...」
「も、申し上げます! 数週間程前にガルアナ様の墓に何かしらの魔法が使われていたことが判明しました!」
「む...ならば信じる他ないか...ゲホッ...レイアよ、大儀であった。これで通り魔が収まったならば褒美を渡そうぞ」
「ありがとうございます」
こうして、通り魔事件は解決にへと至ったのであった。
「沢山貰った...」
幾つかの魔道具っぽい奴とか賞状やらを抱えてレイアが俺の待つ自室へと帰って来た。
「うお...この魔道具、売ったら相当金になるぞ?」
「要る...?」
「いや、金には困ってないから要らないよ...」
「そう...残念」
少ししょぼくれるレイア。
「しかしまあ良かったな。この一件が大々的に発表されてから、少なくとも帝都の平民達はレイアに対する評価が高くなったし、レイア側に付いた貴族も前より増えた。順調じゃないか」
「ん、これも全て貴方のお蔭...」
俺にまっすぐな赤い瞳を向けて此方を見つめて来る。
「このままいけば私は皇帝...皇子女らしいことは全くせずに魔法しかしなかった私が...なんてお礼を言ったら良いのか...私は貴方にお礼がしたい。...私に出来る事なら何でもする」
少し頬を赤らめてそう言うレイア。
レイアにして欲しいこと?
「そりゃあ最初から変わらないかな。てか最初にお前俺の話聞かずに協力の事にOK出したろ、アレ良くないぞ?」
「う...気を付ける...」
またまたしょんぼりとしてしまうレイア。
「えっと、確かアルカディアとの不可侵攻条約を結んで欲しい...くらいじゃなかったかな」
「そうじゃなくて...その......貴方が私にして欲しい事とか...」
声が小さすぎて良く聞こえない。
「まあその他に望むことはないんじゃないか?」
実際これ以上の条件は俺の所の国王も求めない筈だ。
これでも結構欲張ったと言ってたからな。
「むぅ......」
「まあレイアが皇帝になるまでしっかりサポートするから安心してくれ」
「...ん...これからもよろしく」
レイアの差し出した右手に俺も右手を差し出して握手をする。
それだけでは足りなかったのか、レイアは両手で俺の手を包むようにして来た。
...これ、エルと良くやったことあるぞ。
だいたい俺が何かやらかした時か、俺が何やり遂げた時にやってくれる奴だ。
半ば無意識に、レイアと同じように開いていた左手を使い、右と左でレイアの右手を包む。
「~~~!?」
途端に顔を真っ赤にするレイア。
まずいなコレ、怒った?
「す、すまん...」
「え...嫌じゃないから...続けて...」
なんだ、嫌じゃないなら良かった。
暫くお互いの手を握り合う謎の時間が続いた。
...そろそろ帰りたいから手、放してくれませんかねレイアさん...。




