救出
「凶暴な風!」
蔓延るモンスター達を魔法で蹴散らしながらダンジョンを急ぎ進んでいく。
ブーストを使った超スピードで次の階層への入り口を探し、邪魔なモンスターは魔法で迅速排除。
「しかしまた厄介な罠を引いてしまったな...」
一説によるとモンスターが沢山湧くようなダンジョンでは罠の類がかなり少なく、またその逆も然りといった感じらしい。さっき以外では俺が先行して部屋に入ったりしていたから大丈夫だろうと高を括っていたが...。
魔法でモンスターを葬りながらも魔力感知でレイアの位置を特定し続ける。
この時一番困るのはレイアがやたらむやみに歩き回ったりする事。
モンスターに見つかる可能性も高まるし、何より間違って階層を移動したりなんかするともう滅茶苦茶や...。
レイアを救出する為に俺はダンジョンを駆ける...。
「ううう...」
私、レイアはノアルト王子に言われた通り後ろに下がろうとした時に不思議な板を踏んでしまい、気が付いたら彼とはぐれてしまった。
気が付くと変な部屋の中に居て、今はそこの隅っこで息を潜めている。
部屋の外には沢山モンスターが居るらしく、鳴き声が聞こえて来ることも。
魔力の感じから、私じゃ到底敵わないような強さ...Sランクのモンスターが居る...。
そんな恐怖と...彼が助けに来てくれるという信頼があるから私はここで息を潜めることにする...。
彼はSランク冒険者だし、私の協力者。絶対私を助けてくれる筈...。
「グルルァ...?」
モンスターの鳴き声が直ぐ近くから聞こえて来る。
恐る恐る声のする方を見てみると...そこには多くの体毛に身を包んだ巨人のようなモンスターが。
「ぁ...」
生物としての強さの違い...。
それがもたらす恐怖で私の口からは変な声が漏れ、体も凍ったように動かなくなってしまった。
ギロリ、とモンスターの目が私を捕らえる。
怖い。目の前のモンスターが。そして死ぬのが。
――助けて――。
「次元断斬ッ!」
待ち望んでいた彼の声が聞こえた。
ダンジョンを下へと進んで行く内モンスターの強さが上がり、ついにはSランクのモンスターが蔓延るような所まで到達してしまった。
だがレイアの反応はこの階層からする。
まだ反応があるから無事なのは分かっているが...。
その時、レイアの反応のすぐ近くから大きな魔力の反応が――。
ブーストを使い移動速度を強化、モンスター達に構う事なくダンジョンの通路を駆けて行く。
通りすがりざまに何度も魔法やら牙やらで攻撃を受けたが、そんな事より、と言った所だ。
高速で走り、体もかなりボロボロになって来た所でようやくレイアの近くまで来ることが出来た。
俺がレイアの元に辿り着いた時にはすでにレイアが巨人のようなモンスターに襲われる直前であった。
間に合えッ...!
「次元断斬ッ!」
半ば叫び声で魔法名を唱え、正真正銘の不可視の刃が巨人モンスターの胴体を上下に切り飛ばす。
レイアを襲う直前だったそのモンスターは胴体を真っ二つにされてもまだ生きているらしく、まだ動く両手で再びレイアを襲おうとした。
どうせ死ぬなら道連れってことか?
「フレイムボム! ウィンドランス! ダークスフィア!」
幾つもの魔法を巨人モンスターに放ち動きを阻害。
この程度ではまだ死なないか...これだからSランクモンスターは厄介だ。
が、少しの隙が出来た。
その隙にレイアを救出、急ぎその場から離れる。
巨人モンスターは放っておけば勝手に死ぬだろう。
「あ、貴方...その傷...」
ある程度安全そうな所まで避難してきた所でレイアにボロボロの体を指摘された。
結構必死だったからあんまり痛みとか感じて無かったが...こりゃ酷い。
酷い所では開いている穴から向こうの景色が見えるくらいである。
少なくとも常人ではこのまま死んでしまうくらいの傷ではあるが...。
「ハイヒール」
聖属性。
聖女と呼ばれる者を筆頭に、聖職者が多く使う魔法である。
従来の光魔法から例外を除き、攻撃性能を削り取った代わりに人を癒す事に特化した魔法。
俺は聖職者でもなんでもないが、ほんのちょっぴりだけ聖魔法が使える。
そのほんのちょっぴりをブーストを使い超強化する事により...。
「私のせいで死んじゃ嫌...!」
「いやもう治ったから」
「死んじゃダメ...え? もう治った...?」
傷だらけの俺の体を見て泣き崩れそうになっているレイアが素っ頓狂な声を上げる。
まあ瀕死の状態から一瞬で完全体に戻ってたら誰でも驚くわな。
「助けてくれてありがとう...」
「いやいや、レイアは俺が助けに来ると信じて待っててくれたからな、そのお蔭で早く見つける事が出来た。礼を言いたいのはコッチだ」
赤い目が申し訳なさそうに下を向く。
「ん...そう言ってくれて嬉しい...私はちゃんと貴方の事を信じて待ってた...」
「ああ、ありがとうな」
少し誇らしげにそう言うレイアの頭を撫でてやる。
「えへへ...」
こうしてるとなんか妹っぽいな。前世でも俺妹居た事ないけど。
なんかレイアは妙に親近感が湧くんだよなぁ...昔どこかで会ったっけ? ってくらいにな。
「さて...今どこら辺の階層だっけ?」
「私に聞かれても分からない...」
特に階層とか考えず下に降りてきてしまったから視察は半ば失敗しているようなものだ。
どこら辺からAランクモンスターでどこからがSランクモンスターか、まず俺達が居るのが何階層かも忘れちゃったよ...。
レイアはいきなり罠を踏んで転移してしまったから分かる由もないか...。
「でもさっき渡された水晶が記録をしてくれているんじゃなかった...?」
「...天才か?」
すっかり忘れてた!
水晶を取り出してみると、青色だった水晶は黒味の掛かった赤色に変わっていた。
薄っすらと二十階層と言う文字が見えなくもない。
多分俺達が居るのが二十階層と言うことだろう。
「...上まで戻るの大変そうだな...」
「じゃあ少し休憩すればいい」
俺にそう提案してくれるレイア。
「...それもそうだな」
多分このまま戻ろうとしても精神的な疲れが結構あって、どこかでヘマをしてしまう可能性が高い。
なら今の内に休憩しておくか。まだSランクモンスターがうろつく階層で休憩するのは少し怖い物があるが。
おくれた。
すまない。
ブクマ感想もたのむ。




