現状把握
帝国は帝位争いを行うと声明を出し、尚且つ国民と貴族に次期皇帝だと認められれば皇帝になれるという仕組みで帝王を決めている。
大雑把に言うと投票って事だ。
帝王が後継者を選べるのではなく投票。帝王が「コイツがいいんじゃね?」と声を出してくれれば殆ど決まるような物だがな。
当然投票なんだから自分の良い所をアピールしなくては誰も投票はしてくれない。
更に帝位争いに参加して敗北した者は大体勝者...つまり皇帝によって打ち首にされる。ガルアナのように反乱の恐れがあるからだ。
その為帝位争いに声明を出した者は如何なる手を使ってでも帝位争いに勝利しなくてはならないのだ。
実は反乱も割と合理的な手ではある。
次の帝王を決める投票はその時の帝王が死去してからだから、反乱を起こして帝王を暗殺して力を示せば貴族達や一部の国民達から票が手に入るだろう。
半ば恐怖政治だが、これが一番手っ取り早いのかもしれない。
と言っても帝国全土を相手取れる力を持った皇子か皇子女であることが前提なのだが...そんな奴は今まで居なかったらしいからなぁ...。
現状把握をしておこう。
僅かな手勢を率いて反乱を起こして退場したガルアナについていた貴族は多くはないのだが、その殆どがレイアかサリバンの元に下った。
そうでもしないと処罰を受けるかもしれないからな。
本当ならば反乱者の元味方は全員処罰して然るべきなのだろうが、帝位争いが激しさが増すこの状況では罰するとかそんな事より一人でも貴族の味方が欲しいと言うのが事実だ。
閑話休題。
レイアとサリバンの一騎打ち。
他の中立を保っていた貴族達はほんの少しだけだがレイア側に寄り、貴族の半分は未だ中立、貴族の数ではほんの少しだけレイアが上回っているが...国民達は自分たちに寄り添ってくれるサリバンを心から敬愛する者が多く、レイアがそれらからの票を獲得するのはかなり厳しい物がある...。
と言っても全ての国民がサリバンを好んでいる訳ではない。嫌われていると言う訳でもないが。
勿論サリバンは一人しか居ないのでこのバカみたいに広い帝国領土全てを回ることは出来ない。
当然サリバンの恩恵を受けた者も居れば風の噂程度にしか聞いていない者も居る。
その風の噂程度にしか聞いていない国民達の票を集める事が出来ればレイアの勝利は決まるようなものだ。
その点レイアは俺達...アルカディア王国と手を組んでいると正式に明言したばかりだ。
国家が協力していると言うのは非常に大きく、貴族等は段々とレイアの方に流れて行くし、国民も貴族の流れからレイア寄りになっているだろう。
ここらで大きな一手がレイアにあれば全てが決まるであろう。
まあ他に新しい帝位争いの敵が現れて貴族とか国民を掻っ攫っていかなければの話なんだがな。
いつも通り王城で幻術魔法で姿を隠しながら風魔法で情報収集を行う。
魔法全般にブーストを使っているので幻術魔法も風魔法も準一流程度の腕に落ちてはいるが未だ誰にも気づかれる様子は無かった。
お? 城の廊下を歩く少年が目に留まる。
アレは確か...第四皇子のイアドだったか。
青色の前髪を目元まで垂らし目がよく見えない少年。
大して話題にも上がらないあまり目立たない存在だとは聞いていたが...。
「...誰か居るのか?」
その瞬間俺は確信した。
コイツは出来るヤツだ。話題に上がらないのではなく、上げられないようにしていた、の方が正しいのかもしれない。
ブーストを幻術魔法だけに絞り息を潜める。
「...気のせいか」
何事も無かったかの様にその場を去って行くイアド。
危なかった...もしヤツが帝位争いに手を入れて来るとしたら...いや、例えヤツが帝位争いに参戦した所で盤面を搔きまわすだけに終わるだろう。
貴族はレイアに、国民はサリバンに。入り込む余地はない。
寧ろ国民からの支持を得ようとしてサリバンと対決、国民が二つに割れレイアの一人勝ち...なんてのもあり得るから参戦して欲しいくらいだな。ははは。
――が、アイツは注意すべき人物である事には変わりない。
まだ正確に確かめてはいないが、最低でもSランク冒険者底辺くらいの実力はあるだろう。
底辺って言っても大陸トップ100には入るくらいだが。
「と言う事で、通り魔事件の捜査もそうだが、なんとしても貴族達を少しでも多く仲間に取り入れる必要があるだろう」
「ん...確かにそう」
「これからはペースを上げて行くと共に...ちょっと良いか?」
「ん。なんでも聞いて」
「第四皇子のイアドってどんな奴だ?」
「イアド?」
なんでそんな事を聞くのか、と言った様子を見せるレイア。
「親は別大陸からの流れ人で、本人には大した実力も特徴も無い感じだけど...」
やはりか。
イアドは意図的に自らの実力を隠しているな。
帝位争いに参戦する可能性は低いだろうが...注意だけはしておくか。
「いや、イアドは危険人物として捉えておく方が良いだろう。まあ念には念をってやつだ」
「貴方がそう言うなら...」
少し微妙そうな顔をしてからレイアはそう頷くのであった。




