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ロスト再び

「帝都で通り魔?」


 ある日俺の部屋に来た兵士は俺にそう告げた。


「は、はい。最近の帝都では夜な夜な通り魔事件が多発しているそうです。目撃者は誰一人として居ません。最初の方は帝都郊外での被害が多かったのですが、段々と帝都王城へと被害現場が近づいているのです」


 目撃者が居ない...か。

 見た者全員殺せるみたいな魔法は聞いたことが無いし...。

 段々と場所を変える、と言うのもなかなかに怪しい。


「それで、俺は何をすれば良いんだ?」

「はい、国王様から念の為帝国第一皇子女の安全を確保するよう命令がなされました。が...」

「が?」

「えっと、その、国王様は王子様が第一皇子女の護衛をしている事を気取られたくないそうです」

「それは一体何故だ?」

「近頃、聖国オルフェウスで怪しげな動きが見られているのです」


 怪しげな動き?

 

「なんでも、教会や軍部ではなく貴族達に不穏な動きが見られるとの事です」


 貴族達...か。

 聖国オルフェウスは教会と軍部、それに貴族達が協議して政治を行う国であるそうだ。

 それぞれの代表者が三人で話し合いをして多数決。

 これで政治を回しているらしい。

 不穏な動きって事は貴族達が軍部や教会に対して後ろめたい事とか、協議にしたら否決されるような事なのだろう。


「で、その不穏な動きって言うのは一体何なんだ?」

「話によりますと、貴族全体的にどの家も僅かではありますが金銭の一部の量の使い方が分かっていないようです」


 つまり謎に金が消えているって訳だな。

 何に使ったか分からない金が様々な貴族の家から僅かほんの少し...その貴族の謎の金が集まれば相当な金額になるだろう。

 やはり何かを企んでいる...と推察するのが普通だろう。

 そんな時に隣国の王子が居ないとなると、何かしら仕掛けて来るかも...と言う事なんだろう。

 最近はエルもモンスター討伐の任務が忙しいし、国の戦力が手薄になるのは避けたいのだろう。

 だがレイアの身の安全も大事...。


「しかし王子様だと気取られずに第一皇子女の護衛など...」

「出来るぞ?」

「出来ない筈――え?」






「どうだ?」


 真っ黒なローブに鳥のお面。

 前は無かった衝撃鎌(ウェーブ)を装備。

 ガルアナを捕らえる際に現れた謎の人物。

 俺、ノアルトこと失った物(ロスト)さんの完成だ。

 俺=ロストがバレる心配はほぼない。

 なぜならレイア以外にはロストは俺の知り合い、と言う事にしてあり、ガルアナを捕らえた時も幻術魔法で俺がアルディア砦に居る()()になってたからな。

 作戦説明の時に俺が魔法を放つとは言ったが、アルディア砦にたまたまロストが居て、そいつが俺の代わりに奴らを叩きに行って俺が全員に幻術魔法を掛けてバックアップに専念した方が良いと言う感じにまとめておいたからな。

 魔術師達は帝国側の立場だからうっかり口を滑らせてしまうかもしれないし、なんとなくで俺とロストが別人と言うことにしておいてよかった。


「うわ...ちょっと怖いです...」


 俺が鎌を床にコツンとぶつけると兵士がそう呟いた。


「どうだ怖いか? 俺は全てを失った死神(ロスト)! さあ震えるが良い。この鎌が貴様の命を刈り取る――」

「あの、振り回すと何処かにぶつかるかもしれないので怖いです」

「.........。」











「やあレイア」

「! ...貴方は...」


 不審者の姿(ロストの姿)で現れた俺にすぐさま気づくレイア。


「貴方はいつも窓から入って来る...」

「悪かったな。今回俺がレイアの護衛をするのは極秘なんだ」

「...分かった。ここに来たのは通り魔の事?」

「よく分かったな。その通りだ」

「じゃあ...護衛よろしく」


 そういうなり、レイアは黙ってしまった。

 レイアは確かに芯は強いのだろうが、どうしても頼れる皇帝、と言ったイメージは持たれづらいだろう。

 国民と貴族、そして皇帝の投票により次の皇帝は決まる。

 ガルアナを捕らえた腕は皇帝や数々の貴族の耳に入っただろうが、まだまだ第一皇子のサリバンの人気は絶大だろう。

 古代魔法にバレない暗殺魔法とか無かったか?


「ん、わざわざ殺さなくていい人を殺そうとするのは良くないよ?」


 俺の思考を読んだのか、そんな事を言うレイア。


「私は誰も傷つかない帝国を作りたい」


 世間から見たら誰も傷つかない国を作るなんて不可能だと切り捨てるだろう。

 そんな甘い理想。


「...俺もだ」

「...え?」

「俺だって誰も傷つかない国作りがしたいさ。だから...そんなレイアの考えには賛成だ」

「...!」


 レイアが少しだけその赤色の目を見開く。

 まるで信じられないものを見たかのように。


「アルカディアも、アルヴェルも、誰も傷つかない国にするために俺はお前を協力者にしたんだ。俺はお前を信じてる」

「...私も。こんな私を信じてくれて嬉しい」

「...そうと決まれば俺がお前の護衛をしている間に少しでも皇帝の地位に近づくために努力しないといけないな?」

「う...人と喋るのは苦手...」

「喋らなくても人の心を動かす方法はある筈だ」

「...それもそう」


 銀色の髪が夜風に揺れる。

 レイアの瞳には決意の色が浮かんだ。

 さて......護衛もするが、俺がいる内にレイアをもっと帝位に近づけなくてはな。

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