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グータラ王子

「「「ノアルト様に勇者様万歳!」」」


 俺達が船に乗って帰って来ると沢山の歓声に包まれた。

 それもその筈、俺が龍の鱗を港で待つ彼らに向かって見せつけたから。

 それだけで海龍を討伐したのが分かった筈だからだ。


 大勢からの歓声を受けながら俺達は下船した。




 港町ウォルテッドは国が直接管理している。

 理由は勿論ウォルテッドがとんでもない利益を上げているからだ。

 こればかりは貴族に任せる訳にはいかない。

 他の所は結構いろいろな貴族がいるが。

 何故か北の方には貴族が居ない...と言う訳ではないが些か防御が甘いように感じられる。

 と、今そんな事はどうでも良い。


「ノアー? 折角ウォルテッドに居るんだからあたしと遊ばない?」


 ウォルテッドにある屋敷のベッドで横になっている俺を起こそうと、何度も俺をぺちぺちと叩いてくるエル。

 桃色の髪でかなりの美少女であるエルが遊びに誘ってくれるのは世の男にとっては相当嬉しいのだろう...が、俺は屋敷でゴロゴロしていたいのだ。


「一人で行ってくれよ...」

「ノアと一緒じゃないと嫌!」


 幼馴染だったり俺が小さい頃は少しの間だが護衛だった事もあり、割とエルは俺にベタベタなのだが、正直困る。

 二人とももう結構良い年なのであまり距離感が近いのもなんだかなぁ...と。

 俺とばっかり一緒に居たら婚約者なんて出来ないのではないか? と思う事もしばしば。

 あと俺はグータラするのが大好きだ。

 だから事あるごとに遊びに行こうとするエルはまあ...嫌じゃないんだが。

 だってつい先日海龍と戦ったじゃん? ずっと魔法を使い続けていたし、その後町の人達に景気復興の為の鱗寄付とかで疲れたんだ...ダラダラさせてくれ。


「で? あたしとは遊んでくれないの?」

「あー今度今度。来年かな」

「ちょっと!? いくら何でもそれは無いでしょ!?」

「ハハ、冗談だって。ただ今日は疲れたんだ...」

「...なら仕方がないわね...。またあたしは明日からここら辺で任務があるから今日遊んで欲しかったのに...」


 ブツブツとそう言うエル。

 ...いくら何でも労働が多すぎでは? 古代龍倒してすぐ任務か...。


「そう言うエルは休まなくても大丈夫なのか?」

「あー...そうね...確かに休む必要はあるかも」


 そう言いながらエルは俺のベッドに乗って来た。


「...まさかとは思うがここで寝ようとか思ってないよな?」

「ふふん」


 マジかよ...。

 いや昔は一緒にお昼寝したこともあるが...俺達の年でベッドに二人はスペースが足りないのでは...あ、足りた。デカ過ぎだろこのベッド。

 

「まあ良いんじゃね?」

「え? 良いの?」

「だって俺今から帰るし」


 暫くこのベッドに居て分かったのだが、俺の部屋のベッドの方が寝心地が良い。

 あとなんかレオかラミュの料理が食べたくなった。


「そんなぁ...一緒に寝ようよ...」

「はいはい今度な」

「随分と適当な返事ね?」


 エルが言い終わる前に俺はすぐさま部屋を後にした。


「...ノアの匂い」









「お帰りなさいませノア様!」


 自室に入るとラミュがパタパタと駆け寄ってきた。かわいい。


「いきなりで悪いんだがレンと一緒になんか作ってくれないか?」

「あ...レンさんは今別の料理を作っていて...」


 レン程の腕前になれば貴族から料理の依頼が来ることもしばしば。

 それで忙しいってことだな。


「じゃあラミュなんか作ってくれないか?」

「は、はい! お任せ下さい!」

「あ、あと俺料理出来るまで寝てるから出来たら起こしてね」

「分かりました!」


 ラミュが何処かへ駆けていくのを見てから俺はベッドに俺は潜り込むのであった。







「――――てくだ―い―」


 ベッドで意識を失ってからどれだけ経ったであろうか...何かの声が聞こえる。


「――様! ――が冷めてしまいますよ!」


 何かが俺の体を揺する。

 五月蠅いなぁ...。

 俺は回らない頭でソレを抱き寄せた。


「!? ノアルト様...!」


 それだけでソレは静かになった。

 ...コレ抱き心地良いな...いい匂いもするし...。

 

 俺はソレを抱きしめながら再び眠りに落ちて行く――。










「あわわわわ...」


 ――ノア様に抱きしめられちゃってます!?


 慌てながらもノア様を起こさないように小さな声で喋るラミュ。


「...ノア様気持ちよさそうに寝てますね」


 ――ノア様が起こしてって言ったのに、起きてくれないなんて意地悪です...。

 ...じゃあ私も意地悪しても良いですよね...?


 ラミュはノアルトを起こさない様に少しだけ身を捩り、ノアルトの鼻を摘む。


「フグ...」

「ププ...」


 ノアルトが出した変な声で少し笑ってしまうラミュ。


 ――いつもはキリっとしててカッコいいのに......寝てると可愛いです。


 その後もラミュはノアルトの髪の毛を触ったりと、ノアルトが起きるまでの間、ラミュの悪戯は続いた...。








 あー...結構寝たな...。

 てかなんか抱いてるんだが...。

 ...もしかしてコレラミュ?


「...おはようございます」

「あ、す、すまんラミュ...寝ぼけてずっと抱き枕にしてた...」

「いえいえ、全然大丈夫です! むしろありがとうございます!」


 何がありがとうございますなんだ...。


「...料理、冷めちゃいましたね」

「あ...すまない。折角作ってくれたのに...」


 二人でのそのそとベッドから降り、机の上を見ると...。

 そこには空っぽの皿と横になるシロの姿が。


「...ちゃんと温かい内に食べてくれたみたいですね」


 ラミュの料理が無駄にならなくて良かった...。

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