VS海龍
「人間風情がッ!」
海龍は更に水魔法を多く発動させる。
一つ一つが規格外の威力。全て命中すれば軽く山一つは壊せそうだ。
が、俺だってそれくらいは出来る。
「もう一回相殺してやるよ!」
本来なら俺程度の魔力量だと海龍と同じ威力の魔法は海龍の半分も発動出来ないが、僅か一瞬だけブーストで魔力回復速度を上げる事により、海龍と同じ...いや、それ以上の量を生み出せた。
海龍の魔法は全て相殺され、一方で俺の魔法は幾つかが相殺されず海龍を目掛けて飛んでいく。
「ええぃ!」
その幾つかの魔法は海龍の振るった尻尾により全て掻き消されたが...。
「あたしの事を忘れてもらったら困るわよ!」
魔法の影からエルが聖剣を一閃。
黄金の刀身をした両刃の片手剣はその丈では遠く及ばない筈の海龍の尾を見事に断ち切った。
「なっ...!?」
驚きの声を上げる海龍。
一見ただの剣だが、実は一回振っただけで地形を変える聖剣だからな。
尻尾を失った今こそが好機。
「ライトニング」
複数の魔法陣から雷が海龍に向かって放たれる。
「小癪な!」
海龍はその巨体に見合わぬ素早さで雷を躱した。だいたい五十メートルくらいもあるのによくそんな俊敏な動きが出来るな...。
...が、その回避先には待機していたエルが。
「それも分かっておったわッ!」
しかしそのエルに気づいていたのか、エルに向かって海龍の爪が襲い掛かる。
それを聖剣で受け止めるエル。
「やあっ!」
あろうことか、エルは爪を受け止めるだけには留まらず、掛け声と共にその爪を弾き返してしまった。
「なっ!?」
二回目の驚きの声を上げる海龍。
いやまさかエルの腕力が古代龍すら超えるとは...俺も驚いた。
が、海龍はその後の行動が速かった。
すぐさまエルから距離を取ると、口の部分に大量の魔力を貯め込み始めた。
あの構えはブレスだな。しかもウォーターブレスとかだろう。
古代龍の属性ブレスともなると俺の結界は数秒も耐えられない。
あれを放たれた時点で海龍が逃げるか、戦闘を続けるにしても俺達が不利になるだろう。
てかそれ以前にアレを撃たれて俺達が無事である保証すら無い。
俺が使えるレベルの魔法では色素魔法以外でアレを打ち消せるレベルの魔法が無いのだ。
「エル!」
「分かってるわよ! 聖剣解放ッ!」
エルが技名を叫んだと共に聖剣を上段に構える。
段々と魔力が聖剣へと集まっていき、黄金の輝きが増していく。
聖剣解放。これを使った後は暫く聖剣が使えなくなると言うデメリットがあるものの、その威力はかつて魔王を打ち倒した程の強力さである、正真正銘、最後の切り札。
分類的には上段からの斬撃らしいが、どう考えてもビームだろあれは。
「死ねぇいッ!」
「やあっ!」
放たれたブレスと聖剣解放がぶつかり合う。
単純な威力勝負。
それは一瞬で勝敗を決した。
瞬く間に消え去るブレス。海龍の体を飲み込む光線。
それは海龍どころか俺の結界まで切り裂いてしまった。
そこを初めとして結界にだんだんと罅が入っていく。
「...ちょっとノア? この結界凄く柔らかいわよ? ちゃんと張ったの?」
「いやお前の火力が異常なだけだから。俺の結界は世界レベルだから」
「そう...てかこれマズいんじゃないの?」
罅の所からどんどん海水が入っていく。
「いや、エルは先出てって良いぞ。俺はこの海龍で売れそうな所全部取ってくから」
「あたしは飛べないんだけど!?」
「じゃあちょっと待っててくれって」
「あーっ! もう凄い水入って来るわよ!?」
「あと少しだけ! 頼むって!」
鱗数十枚だけしか取れなかった...。
羽とか角も取れなかったし...あーあ。
俺は飛行魔法でエルを運び、結界内から脱出した。
それと同時に結界が崩れ、海に空いた穴は消えて行った。




