技姫
「さて、と...厄介な事になってしまったね...」
マグマが垂れ落ちる洞窟の開けた空間。
そこてジオニカはあるモンスターと対峙していた。
アンデット。
光魔法や聖魔法など浄化や回復の力を持った物に対しては滅法弱いが、その他の魔法や物理には非常に強い性質を持つモンスター。
その中でもスケルトンと言う種類のモンスターと彼女は対峙していた。
短剣程度の刃物を片手に、ジオニカよりも数段大きな体を持つスケルトン。
そこらに出るような貧弱なアンデットではなく、それらよりも遥かに強力であろう立ち振る舞いをしている。
世に出ればSランク級としてAランクやBランクの冒険者が数十組以上パーティーを集めて討伐隊を組まなければいけないような化け物。
強大な強さを誇る事から、キングスケルトンと名が付けられるだろう。
しかし、そんなスケルトンと対峙する者もまた同様に化け物と言われる存在である。
「全く...こんな骨しか無い奴が相手とは...これでは私のモチベーションはどうなることやら...」
ジオニカが彼女の身長には釣り合わない程の大きさの両刃の斧を構えなおし、不気味な骨は笑うようにカタカタと音を立てた。
先に動いたのはカタカタと音を鳴らし続けるスケルトン。
短剣を片手にジオニカへと襲い掛かる。
短いリーチながらも鋭い一閃が何回も命を刈り取るべく喉元を狙う。
ジオニカはそれを軽い身のこなしで躱し続ける。
「まさか君も私と同じようなスタイルだとはな!」
神速の速さで踏み込み、相手を一撃で仕留める戦闘スタイル。
「ただそのスタイルにはどうすることも出来ない弱点があってだな――」
いきなりジオニカがスケルトンの視界から消える。
否、視認できない程のスピードで背後へと回っただけ。
スケルトンはアンデットである性質上、ます視覚がそこまで優秀ではない代わりに第六感とでも言う物の使い方を知っていた為ジオニカの素早い動きに翻弄されながらも彼女の居場所は特定出来ていた。
彼女の気配が大きく揺れる。ここで仕掛けて来るだろう。
スケルトンの背後からではなく、真横からの気配。
感覚の任せて短剣を一閃。
本来ならば突っ込んできたジオニカの首元を確実に刈り取る一撃だった筈なのだ、が。
ジオニカは、彼女のの体には不釣り合いなその斧を振りかぶると共に、斧の重心により体を捻り喉元を掻っ切る筈の短剣を見事躱して見せたのだ。
スケルトンはうっすらと残る生前の記憶から、一撃に重きを置く戦闘スタイルの弱点を理解していた。弱点と言っていいのかは微妙だが。
どうしても初撃に全ての力を籠める為、一度初撃が見切られてしまえばそれよりも強い技が無いのだ。言うなれば始めから奥の手を放つような感じだろうか。
つまり初見殺しみたいな所だ。
ただ、スケルトンとジオニカ、二人の反応速度はほぼ同じ。
スケルトンは防御面が滅法弱いのと引き換えに、恐ろしい程の体の軽さ...スピードを手に入れていたからだ。アンデット特有の感覚も合わさり、たとえ不可山脈のモンスターでも認識できるか、と言った速さにほぼ全ての攻撃を認識できる反応速度を持ち合わせていた。
まあ不可山脈のモンスターは攻撃めちゃ強い、体めちゃ硬い、そこそこ早いと、スケルトン側の攻撃は全く通らず、一回食らったら即死のデスマッチになるだろうが。
兎に角、反応速度に素早さがほぼ同じの一撃タイプは先に隙を見せる...つまり疲れた方の負けである筈だ。
その点で言えばアンデットであるスケルトンは持久戦に持ち込めば勝てると踏んでいた。
「ああ、まず君の考えには間違いがあるから教えておこうか」
両刃の斧を隙だらけのスケルトンにフルスイングする直前、ジオニカはそう言った。
「私が只の一撃狙いだと思ったら大間違いだ。君は一撃で相手を葬る事、つまり自分のスピードを上げることにしか頭が行ってない。...頭があるのかどうかは分からないが」
フフ、と不敵に笑ってから再び話を続ける。
「私は何もスピードに特化している訳ではない。私が最も特化しているのは近接戦闘の技術だ。技術を用いた上で一撃の重きを置くのが最も合理的であると判断しただけ、ただただ一撃の重きを置いただけの君と私が同じレベルだと勝手に勘違いしたのが敗因だね」
彼女の斧がスケルトンの骨の中にある魔石と言う物を打ち砕く。
それだけでスケルトンは只の骨と化し、ガラガラと崩れ落ちた。
「私と同じようなスタイルって誤解を招くような言い方だったのが悪いかな?」
そう笑いながら斧を担ぎ、ジオニカは先を進んだ。
ジオニカ。二つ名は技姫。
一撃、でも暴食、でもなく技姫。
理由は他のSランク冒険者から一番評価が高かったのが技だったからだ。
実は逆にそれ以外...魔力や単純な筋力はSランクの中でも最低ランクであった。
ノアルトは動体視力か思考速度にブーストを掛けないとジオニカの動きが見えないのでよく分かっていなかったようだが、彼女は戦闘中に技と呼べるような物を多く使っている。
僅かな腕の向きや足の運び、斧を入れる角度までも彼女やその道の者であったとしても一目では分からないような高い技術によって彼女の戦闘は成り立っている。
やっている事は荒いが、その過程が非常に繊細かつ巧妙なのだ。
刃を入れる速度、角度、力の掛け方により、少ない筋力でモンスターの首を一刀両断と言う快挙を成し遂げているのだ。
その点、同じ近距離特化型のアルヴァとどちらが強いのか、と議論になる事もあるが、はっきり言ってそれは間違いと言う物。
適当に雷を使って一撃を強化するアルヴァと繊細な技術により回転率の速い一撃必殺を得たジオニカ。
アルヴァは良くも悪くも大雑把であり、一撃の強化と言ってもそれが確定一撃に昇華される訳ではない。それに魔力が尽きたら力の強い一般成人になってしまう。が、雷は割と融通が利くので仲間と息を合わせやすい。
一方ジオニカは繊細な技の数々、どれか一つでも欠けると威力は大きく減少する。
そのミスをしないからSランクなのだろうが。
こちらも集中力が切れたらほぼ使い物にはならなくなるだろう...が、彼女は食事でその問題が解消される為、実質一生的に戦ってられる。しかしあまり味方と息を合わせるのは得意ではない。
少し長引くが相対的に安全性、対応力が高いアルヴァか、全てを一撃で破壊するジオニカか...両者が輝くのは近距離と言う共通点こそあるものの、中距離寄り近距離のアルヴァと超至近距離のジオニカ...とどちらかで良いと言う物ではないのだ。
ノアルト<ジオニカ≦アルヴァ
まあ近距離総合的に見たらこんな感じなんですがね
ちなみにエルをここにぶち込むと...
ノアルト<ジオニカ≦アルヴァ<エル
Sランクの貫禄壊れちゃう




