分離
「はいよっ...と...」
三階層。
本来ならばDランク程度のモンスターが湧き出て来る階層の筈なのだが、ここに現れるのは最早Sランクのモンスターばかり。
と言っても、不可山脈のモンスターには到底及ばないがな。
アイツらはもうSSランクモンスターとか言われても何ら不思議はないくらいだぞ...。
「何ボサッとしてるんだい?」
斧で俺に迫りくる魔法を弾き飛ばしたジオニカ。
「いや、避けたり防御するよりもジオニカに守って貰った方が速いからな」
「君ねぇ...仕事しないのなら置いてくよ?」
軽口を叩きながらも俺達はモンスター達を高速で葬っていく。
一息ついたらジオニカが食事を始めるので攻略のテンポは非常に悪いが。
...そういえば俺もお腹空いたな。
冒険者のごく一部の人材が扱えるアイテムボックス。
アイテムボックスの中から保存食的なモノを取り出し頂く。
アイテムボックスなぁ...。
一応古代魔法の次元魔法の括りにはなってはいるが...現在使えてるなら古代魔法ではない気がする。
因みに中では時間の流れが止まったりはしてない。
次元魔法と時間魔法を合わせた物、それこそ無に帰す結界より幾ばくか難しい魔法を常時展開しろ、と言うのと同義だからな。
とにかく次元魔法に時間魔法重ね掛けは死ぬほど難しい。
...保存食だから仕方がないとは言え、あんまり美味しくない物を食べるのはあまり好かないな。
「そういえばこのダンジョン一体何階層あるんだい?」
襲い掛かるモンスターを処理しながらジオニカがそう聞いてくる。
「確か五階層までがE~Dくらいの階層だった筈だから..まあ十階層以上はあるんじゃないか?」
「結構曖昧だね王子君...」
「俺は全然ダンジョンとか分からないから付け刃程度の知識量しかないんだよ」
「ああ、そういえば王子君はなんだっけ、デ、デルタノアルト...みたいな名前の山から下りて来たモンスターしか狩らない、みたいな感じだったもんね」
「不可山脈だ。俺の名前を入れるな」
「へー、王子君ってノアルトって名前だったのか」
「王子の名前も知らないとか嘘だろ?」
「私は帝国が主な活動地だからね、アルカディアの方まで王族の名前を覚えろとか無理な話だ」
瞬きの間に数十匹のモンスターの首が跳ね飛ぶ。
もう見飽きた光景だ。
四階層を制圧。ジオニカの食事タイム。
五階層も制圧。食事。
六。食。
だいたい七階層くらいでの出来事だろうか。
二人して歩いていると、いきなり地面が割れた。
恐らくトラップ的な何かだろう。が、地面が割れてそこから壁が出て来るトラップなんて聞いたことがない。まるで俺達を分離させようとしているようにその壁は現れたのだ。
「どうやら私達はダンジョンにとって脅威と認識されたようだ。光栄じゃないか」
「何が光栄なのか...」
互いを鼓舞することもせず、ただただ軽口を叩く。
それは、互いがSランク冒険者であるという信頼があってこそできる芸当。
「さてと...俺達を離れ離れにしたくらいだから、何かしら仕掛けて来るなら今だろうな」
俺は気合を入れなおして、誘われるように一本道へと入って行った。
「通路に大したトラップは無かったが...」
「グルルアアアアア!」
どうやらダンジョン側は強いモンスターを使えば俺を排除出来ると思っていたようだが...。
正直俺的にはトラップなどの小細工が一番怖かった。
いきなりトラップが発動したらブーストの発動が遅れて致命傷になるかもしれないがな。
あと単純に身構えてないときに何か食らうと凄く痛いからトラップ系は嫌いだ。
俺に当てられたのは赤くて大きなワニ、と言えば良いのだろうか。
ドラゴンに似てるが、多分アレはレッドドレイクとかそこら辺だと思われる。
だって色々とワニだし。羽付いただけのワニだし。
「グルギュアアアアア!」
俺の心の中での馬頭が通じてしまったのか、大きな声を上げてそこら中を叩きつけるレッドドレイク。
癇癪でも起こしたのか?
が、その考えは次の瞬間間違いであったことに気づかされる。
このダンジョンは火山。
周りには溶岩やマグマが流れているし、まずここは洞窟だ。
そんなダンジョン内で大暴れしたら...マグマは飛び散り、落石が起こる。
「ゲ、考えやがったなあのワニ...」
体の硬化をすると俺はまともな攻撃が出来なくなるし、魔法で岩やマグマを迎撃しても隙が生まれる。
が、この程度で音を上げるようではSランク冒険者とは言えない。
じゃあどうすれば? 自身の防御は最低条件。そこに隙が生まれるのなら、そこを突かせないようにすれば良いだけだ。
つまり、どういう事かと言うと...。
「土の槍、凶暴な土」
無数の槍を生成。
ブーストにより強化された使った土の槍や、適当に散らした石や土により、落石やマグマを弾き飛ばす。
それだけには留まらず、生成した槍達はレッドドレイクを襲う。
大きな体、避けるのは難しい為、腕を振り必死に槍を迎撃している。
「槍ばっかりに構ってていいのか?」
ある程度落石が収まった所でレッドドレイクに近づき、背後から魔法を放つ。
魔力全てを載せて放った重い一撃。
「土の砲撃!」
圧倒的な物量と重みで全てを押しつぶす魔法。
僅かな手ごたえと共にレッドドレイクの頭が潰れたのが分かった。
レッドドレイクの皮膚はそこそこ硬くて売れるから持っていこう。




