ドラゴン討伐
ドラゴン。蝙蝠の羽+トカゲで大体あっているあのアレだ。
ドラゴン討伐の依頼内容についてだが、東の方...つまりアルカディアとオルフェウスの国境あたりの山脈に住み着いてしまったドラゴンを討伐、あるいは追い払うなりして欲しいとのことだ。それもなるべく急いで。
山脈内を昼夜を問わずフラフラとそこらを飛び回っているらしく、それだけなら緊急性は無いのだが、その山脈と言うのが海路を除いた唯一の国と国を結ぶ道だったので、海上移動手段を持たない商人が死ぬほど困っているらしい。
あとは近くにダンジョンがあるのでダンジョン通いの冒険者も困っているようだ。
所謂属性も持たない若いドラゴンらしくAランク冒険者パーティーが数組いれば普通に倒せるくらいの強さらしいが、先述した理由から緊急性が高い為Sランクの依頼として発注、それがアルヴァの目に留まり今に至る...とのことだ。
アルヴァと二人して東の方へと移動する。
「それ疲れないのか?」
地面を高速で掛けるアルヴァにそう問いかける。
「こっちからしたら何で魔法でずっと飛び続けていられるのか不思議でたまらないぜ!」
「ああそうか。アルヴァは飛行魔法使えないからな。頑張って走ってくれ」
「ノアルト王子め! そのバカにしたような目は止めろ!」
バレてた?
てかバカにしてるんじゃなくて引いてるんだよ。只の走りで俺の飛行に追いつけるってバケモノすぎるんだよ。
国境の山脈に一番近い村まで到着した。
割と山脈は目と鼻の先だ。
「結構人がいるぜ? 山脈にドラゴンが出たってのは嘘なのかよ?」
「バカ言え、ここに居る奴らの殆どがドラゴンのせいでダンジョンに行けなくて暇を持て余してる冒険者達だ」
「お! 見ろよコレ! 面白そうなアイテムがあるぜ!」
「人の話を聞けって...なんだコレ? 箱?」
「ここのボタンを押すと...」
「うわ」
手のひらサイズの箱の中からドラゴンの頭の作り物が出て来た。
ジョークグッズか。
「確かに面白いな。五個くらい買ってくか」
エル用、自分用、ラミュ用、レン用、あとついでにレイア用っと。
「いや確かに面白そうって言ったのは俺だが...買うのか?」
「当たり前だろ。経済回すんだ! お前も買うんだよ!」
「よく分からないけど買うぜ!」
「最終確認だが、お前は本当に俺に飯を奢ってくれる、と言うか店を紹介してくれるんだろうな?」
「当たり前だ、男に二言はないぜ! ただ、先に見つけるのは俺だぜ! 首を洗って待っているがいいぜ!」
「後悔するなよ?」
アルヴァはものすごい跳躍で山の向こうへと消えて行った。
国境の山脈は結構大きく、いくらドラゴンとは言えどそう簡単には見つける事が出来ない。
が...。勿論俺は索敵用の魔法を使う。
はいウィンドサーチ。さらに魔力感知! ドラゴン見つけました!
二つ山を越えたところの麓だな!
...てか俺がドラゴン見つけても結局報酬は全部アルヴァの物だよな?
俺がわざわざ魔法でドラゴン見つけて、飯を奢って貰ったとしてもアルヴァの方が圧倒的黒字...!
これ俺良いように使われてね?
いや、あのアルヴァに限ってそれはない。
絶対自分が勝てるとか思って勝負を仕掛けて来たはずだ。
現地に着いた頃、ドラゴンは地べたに寝っ転がってグータラしていた。
その横には何かいる。
あれは...小さいドラゴンか?
このドラゴン、子育てドラゴンだったのか。
子持ちとなるとなかなか討伐する気にはなれないな...。
依頼も討伐じゃなくても追い払うだけでいいらしいし...。
このドラゴンだって俺達の妨害をするためにここに移住してきた訳じゃないだろうしなんとか子供連れて別の山に移住して貰えればいいのだが。
「お、もう王子見つけてたのかよ、俺の負けか...だが、アイツとのバトルは俺の役目だぜ!」
「おいちょっと待て! そいつは...」
俺の静止の声も届かず、一人ドラゴンの方へ突っ込んでいく。
これは止めても間に合わないな...。
「雷閃!」
青や黄色の雷を纏った神速の一撃。
光の様に一瞬で敵を薙ぎ倒す、アルヴァの二つ名の元ともなった一撃。
瞬き程度の時間の間に大きなドラゴンの体には大きな穴が開いた。
それっきり、その母ドラゴンからは寝息も聞こえなくなった。
落雷のような音で目覚めた子供のドラゴン。
そして、その目の前にはこと切れている母と謎の男が。
「いや一瞬だったぜ! ん? 子供のドラゴンもいるじゃねぇか。ついでにコイツも狩っとくぜ」
そう言いながら、子供のドラゴンに槍を向けるアルヴァ。
「待ってくれ」
そこに静止の声を掛けたノアルト。
「どうしてなんだ? ドラゴンは強いから子供の内から狩っておく事が大事ってよく言われるんだぜ?」
「いや、このドラゴンは俺の所で飼う」
「あ、そうなのか。じゃあいいか」
そう言いながら槍を下すアルヴァ。
「あと悪いがコイツを城に連れて帰るから飯の話は今度な」
「分かったぜ!」
悪意があって人間に手を出してくるモンスターは少ない。
生きる為の行動が偶々人間にとって厄介な行動になってしまっただけなのだ。
それに、今の討伐依頼の殆どが「〇〇の体の一部が欲しい」と言う此方の私利私欲の理由ばかりだ。
自分の国民に思う感情ではないだろうが、これではどちらがモンスターか分からない。
が、むやみやたらなモンスター狩りは止めろ、なんて俺には言えない。それを止めさせただけで職を失い飢えてしまう人が何人いるのだろうか。
...このドラゴン達に誰かが直接被害を加えられたという情報はない。
コイツにも、母親のドラゴンにも罪は無いのだ。
白い皮膚に円らな瞳。抱きかかえられる程の大きさ。
少なくとも俺にはこの子供のドラゴンを見殺しにすることは出来なかった。
と言ってもまだ子供のドラゴンを一人で野に放したとしても待ってるのは死だ。
コイツを助けるには保護するしかない。




